そこが知りたいQ&A−朝鮮の人工衛星発射 国際法上、問題あるの? |
宇宙開発 全ての国に認められた権利、国際ルールに従い手続き終える 既報のように、朝鮮は国際宇宙条約に加盟し、人工衛星発射と関連して国際民間航空機関(ICAO)と国際海事機関(IMO)などの国際機関に、航空機と船舶の航行安全に必要な資料を提供し事前通報した。しかし、日本など朝鮮を敵視する国は露骨に人工衛星の打ち上げに難くせをつけ妨害しようとしている。人工衛星発射をめぐる一連の問題をQ&Aでまとめた。 ■ Q 人工衛星の発射は、国際法上何か問題があるの? A 宇宙法の基本となる「月その他の天体を含む宇宙空間の探査および利用における国家活動を律する原則に関する条約」(宇宙条約)には、「宇宙空間の探査および利用は、すべての国の利益のために、その経済的または科学的発展の程度にかかわりなく行われるものであり、全人類に認められる活動分野である」「宇宙空間は、すべての国がいかなる種類の差別もなく…自由に探査及び利用することができる」(第1条)と明記されている。 つまり、同条約への加盟いかんに関わらず、宇宙の探査・利用はどの国にも認められた固有の権利なのだ。まして朝鮮は今回、同条約に加盟し、国際機関に必要な資料を提供するなど国際ルールに沿って人工衛星を打ち上げようとしている。 したがって、国際法上まったく問題はない。 Q 朝鮮が今回、加盟した宇宙条約など、国際条約について詳しく説明してほしい。 A 宇宙条約は、1966年12月19日に国連で採択され、翌67年10月10日に発効した。17の条項からなる宇宙基本法で、これを補う3つの条約協定がある。宇宙飛行士の救助送還と宇宙物体の回収返還の詳細について定めた宇宙救助返還協定(68年12月3日発効)、宇宙物体による損害の賠償について定めた宇宙損害賠償条約(72年9月1日)、宇宙物体の登録について定めた宇宙物体登録条約(76年9月15日)だ。 また、宇宙開発が進むにつれ、月の法的地位と月の天然資源開発について定めた月協定や直接放送衛星原則などの宇宙利用秩序を定めた協定も作られた。 今回朝鮮が加盟したのは、宇宙条約と宇宙物体登録条約だ。 宇宙条約にはいつでも加盟できる。希望する国はロシア、米国、英国に加盟書を寄託すればその時点で効力が発生する。 今回、朝鮮は3月5日にロシアに加盟書を寄託した。宇宙物体登録条約も、加盟書を寄託した時点で効力が発生する。朝鮮は10日、国連事務局に寄託した。 また、朝鮮はICAOとIMOにすでに77年と85年にそれぞれ加盟している。加盟国になると、人工衛星の発射の時期と場所などをこれら国際機関に通報することになっている。12日確認されたところによると、朝鮮は人工衛星の発射時期(4月4〜8日)と発射に利用される運搬ロケットの飛行座標を通報した。 Q 日本などは、人工衛星も弾道ミサイルも同じだとの一方的な主張を展開し、発射された場合、朝鮮に「制裁」を科すべきだと騒いでいるが。 A 弾道ミサイルと人工衛星の運搬ロケットが技術面において類似している、というのを根拠に挙げている。 57年に旧ソ連が初めて人工衛星を打ち上げて以来、今年2月のイランまで10カ国が打ち上げに成功している。もちろんこれによって制裁を受けた国はない。 しかし、日本などの論理でいくと、弾道ミサイルにもなりうるロケットを100以上打ち上げている日本も非難を免れず「制裁」の対象になってしまう。自家どう着、論理破たんをきたしている。 Q 関係各国の対応は? A 今回、1月末から「北朝鮮のミサイル発射準備」騒動が起き始めた。朝鮮が2月24日に人工衛星の発射を準備していると公式発表した後、日米などの対応は分かれた。 米国は、国家情報局長が「人工衛星だと認められる」(3月10日)と語るなど、発射準備の物体が人工衛星だという認識を示している。また、クリントン国務長官はこの発言に先立つ2月末の中国訪問時、対話による問題の解決を表明した。 これに対し、日本や南朝鮮は、「人工衛星であれ何であれ(2006年の)国連決議違反」だと騒ぎたて、日本は防衛大臣や首相らが人工衛星の「迎撃」まで口にし、その準備に着手している。 中国とロシアは「制裁」には消極的な立場だと伝えられている。また、米学会からも「国際機関に事前通報しているだけに、制裁を加えることは容易ではない」(米国の朝鮮半島専門家のスコット・スナイダーアジア財団研究員)という声が出ている。 Q 問題の解決法はないのか。 A 朝鮮宇宙空間技術委員会スポークスマンは、2月24日の談話で人工衛星発射準備状況について説明した際、今回発射予定の人工衛星は「試験通信衛星」であり、「数年内の実用衛星の打ち上げ」を見越していることに言及した。これは、今後も人工衛星を打ち上げ続けることを示唆するものだ。 日本が対朝鮮敵視政策を取り続けるかぎり、今後も朝鮮が人工衛星を打ち上げるたびに今回のような騒ぎが起こることは容易に想像がつく。日本は、98年の人工衛星発射の時も、米国、南朝鮮がその事実を認めたにも関わらず、唯一、最後まで弾道ミサイルだと言い張った経緯がある。 運搬ロケットの技術が軍事転用が可能なのは事実だが、先端に衛星を搭載するのか弾頭を搭載するのか、その違いは大きい。 要は、米国やロシアなど弾頭ミサイル保有国のように軍事転用の意思を持つのかどうかにかかっている。 その方向に追いやるのか、逆に対話を通じて信頼を築き上げていくのか。そのためには、日本は対朝鮮敵視政策をやめ、平壌宣言による関係正常化へと踏み出すべきだ。また米国は、ブッシュ政権になって棚上げされたままのミサイル交渉を再開させるべきだろう。(姜イルク記者) [朝鮮新報 2009.3.25] |