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そこが知りたいQ&A−人工衛星「光明星2号」発射の意義は?

先端科学技術の大きな成果、自主路線のシンボル/経済など各分野に波及効果

 朝鮮は5日、運搬ロケット「銀河2号」で人工地球衛星「光明星2号」を打ち上げた。今回の発射の意義や朝鮮国内での評価、宇宙開発がもたらす経済的波及効果などについてQ&Aでみた。

 Q 朝鮮は今回の衛星打ち上げをどのように評価しているのか。

 A 朝鮮の人工衛星打ち上げは1998年8月の「光明星1号」以来。朝鮮中央通信社報道(5日)は、「われわれの技術で開発した運搬ロケットと人工地球衛星は、国の宇宙科学技術をより高い水準に引き上げるたたかいの中でなし遂げられた誇らしい成果」だと意義を強調した。これに先立つ祖国平和統一委員会スポークスマン談話(3月30日)は、今回の衛星発射計画は先端科学技術の発展を通じて「強盛大国建設の柱を確固たるものにする」ことに目的があると説明した。

 Q 現在まで人工衛星を打ち上げた国はどれくらいあるのか。

 A 自国で開発したロケットで衛星を打ち上げた国は世界的に見ても決して多くはない。旧ソ連が1957年10月、世界で最初に打ち上げた。その後、米国、フランス、日本、中国、英国、インド、イスラエル、朝鮮と続いた。今年2月にはイランが打ち上げを成功させた。

 98年の「光明星1号」について、日本は「弾道ミサイルの可能性が高い」(防衛庁最終報告)として認めようとしなかったが、米国、南朝鮮は人工衛星だと認めている。米航空宇宙局(NASA)のウェブサイトにも、朝鮮が98年8月29日に「光明星1号」を打ち上げたと明確に記されている。

 Q 人工衛星の打ち上げは一般的にどのような意味を持つのか?

 A 宇宙開発は先端科学技術の結晶だといわれている。とくにロケット開発国は高い技術力を持つ国として認められる。国家経済の観点から見ると、宇宙発射体に関する計画は新たな産業を創出する技術革新を推し進める効果もある。また、外交や安全保障の分野に及ぼす影響も無視できない。

 人工衛星の打ち上げ技術は二面性を帯びる。「ロケット開発国」は「ミサイル開発国」としての能力も持つことになる。米国はもちろん、日本もその例外ではない。

 朝鮮は、「銀河2号」による「光明星2号」打ち上げは「平和的な宇宙開発計画の一環」だと重ねて強調している。朝鮮を敵視する国の目に宇宙空間まで物体を運搬する能力が「脅威」に映るからといって、それが朝鮮のロケットだけを非難する根拠にはならない。

 Q 朝鮮における人工衛星分野の研究・開発の経緯について教えてほしい。

 A 国内科学者らの証言によると、人工衛星分野の研究・開発は相当早い段階から着手されてきたことが明らかになっている。80年代には衛星を運搬可能な多段式ロケットが開発されたが、その技術が内外に公開されたのは90年代に入ってからだ。98年、朝鮮は多段式ロケット「白頭山1号」で人工衛星「光明星1号」を打ち上げた。94年、金日成主席が逝去し、その後は経済的な試練にも見舞われたが、それでも計画は中断されることはなかった。

 世界的に冷戦構造が崩壊した90年代以降、米国やロシア、中国などの「ロケット開発国」は軍事分野で蓄積した技術を活用して「宇宙の産業化、商業化」を積極的に推進した。陸、海、空に続く開発領域として、宇宙空間の戦略的な重要性に対する認識が高まった。朝鮮の98年の衛星発射も、宇宙開発の国際的なすう勢と「ロケット開発国」の動向を十分に考慮したうえでの計画だった。その目的は、近い将来に実用衛星を打ち上げるための土台作りにあった。

 今回、朝鮮は衛星とロケットを独自に開発し打ち上げる能力を保有していることを示した。自主路線は宇宙開発分野でも貫徹されている。

 Q 朝鮮は今回の衛星打ち上げを強盛大国建設構想と関連づけて強調している。

 A 国産の多段式ロケット技術の開発に基づく人工衛星の打ち上げ計画は、「社会主義強盛大国」の建設という国家戦略と密接にリンクしながら進められてきた。

 昨年12月、千里馬製鋼連合企業所を訪れた金正日総書記は、2012年に強盛大国の大門を必ず開こうと呼びかけた。11年前の「光明星1号」は強盛大国のスローガン登場と時を合わせて発射された。今回の2号は最高指導者の「呼びかけ」を受けて始まった「強盛大国建設の最終突撃戦」(労働新聞)のさなかに発射されたものだ。

 現在、朝鮮にとっての最大の課題は経済の復興だ。大型ロケットの開発もこれと無関係ではない。今後、打ち上げを目指す各種実用衛星の利用、ロケット開発の過程で生まれた先端技術の民需移転、衛星打ち上げの商業化など一連の経済的効果が見込まれる。今回の衛星打ち上げ成功は、2012年に向けた経済復興路線である「科学技術に基づく自力更生」の実効性を証明するものだといえよう。

 Q 宇宙開発には具体的にどのような経済的波及効果があるのか?

 A 人工衛星には通信や放送、気象予報、宇宙探査などを目的とする実用衛星がある。現代社会において人工衛星が人びとの生活にもたらす恩恵の大きさは証明済みだ。また、衛星を宇宙空間に打ち上げる多段式ロケットなど先端科学技術の結晶とも言える宇宙開発計画が国の経済発展に与える波及効果も大きい。

 世界各国では宇宙開発の過程で確立した先端技術を、人びとの生活に関連する民生部門に活用する「スピンオフ(spin off=技術移転)」を積極的に推進している。

 現在、医療器具や照明装置に使用されているレーザー技術も、NASAが地球と月との間の距離を正確に測るために用いた技術を転用した「スピンオフ」の代表的事例だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、日本でもダイヤモンドや缶など強度と軽量化を追求する製品の生産、空気抵抗を減らし高速化を実現する鉄道車両の設計などに宇宙技術を導入している。

 「光明星2号」の打ち上げ成功が朝鮮の宇宙開発計画に拍車をかけることは間違いないだろう。今後、国の経済発展に必要不可欠な通信、資源探査、気象予報などのための実用衛星を打ち上げる計画がすでに準備されているという。(相)

[朝鮮新報 2009.4.8]