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宇宙開発分野で実を結ぶ理工系の人材育成システム

 【平壌発=呉陽希記者】人工衛星「光明星2号」の打ち上げを機に、宇宙開発プロジェクトに従事する科学者、技術者を輩出した朝鮮の人材育成システムに注目が集まっている。金策工業総合大学や平壌第1中学校など国内トップクラスの教育機関では、宇宙工学をはじめとする各種専門分野の教育をさらに強化するための取り組みを進めている。朝鮮における理工系の人材育成事業の現状を探った。

金策工大 宇宙工学の専門学科運営

金策工業総合大学の外観

 金策工業総合大学には宇宙開発分野の未来を担う頭脳集団がいる。同大学に併設された単科大学、機械科学技術大学の宇宙航空工学科だ。

 宇宙航空工学科は1990年代半ばに開設された。国の宇宙開発展望計画に沿った措置だという。

 同大学では以前から運搬ロケット技術や発射体に利用される材料工学、人工衛星関連の通信、情報技術などを教えていた。その後、「先端科学の世界的な発展のすう勢に追いつき追い越せ」という国家政策にしたがって、新たに宇宙航空工学科が設けられた。人材育成の明確な目標と方向が定まった意義は大きかったと関係者らは話す。

 宇宙航空工学科のある大学は国内では金策工大一校のみ。同学科のキム・サンユン教授によると、宇宙航空工学科は金策工大の材料工学部や機械科学大学の噴射式学科など、ほかの学部や学科と緊密な連携を取りながら運営されている。

 宇宙工学は先端科学技術の集合体だ。学科では最近、耐熱性合金材料(チタン合金、モリブデンなど)に関する研究も深められているという。

 卒業生たちは、国家科学院の宇宙技術研究所をはじめとする研究機関や航空分野の技術部門、または工業部門の生産現場で活躍している。

選ばれた秀才

 宇宙航空工学科で学んでいるのは「選び抜かれた秀才」たちだ。

 朝鮮では国の教育政策に沿った秀才教育システムが運営されている。平壌市の各区域と各道にある「第1中学校」がそれで、成績優秀な学生を選抜し教えている。このような秀才教育は大学まで続いている。

 金策工大にも各学年に秀才クラスが設けられている。その中でもとくに優れた学生は「工学秀才クラス」と呼ばれる別コースに進む。同クラスでは「最先端科学技術の習得に向けた教育が行われる」とキム教授は説明する。

 秀才クラスの学生たちは各自が学部と学科を選択するが、「工学秀才クラス」の学生たちには大学側から専攻科目が提示される。4年間の大学課程を終えれば、博士院(大学院)で引き続き学ぶ。

 キム教授は「朝鮮の科学技術の発展水準を示した人工衛星の発射成功は、優れた教育システムの産物」だと指摘する。

 「光明星2号」の打ち上げ当日、衛星管制総合指揮所を訪れた金正日総書記はプロジェクトに関わった科学者、技術者らを激励し一緒に記念写真を撮った。キム教授はこのニュースを聞いた時、「自分の事のようにうれしかった」という。

高い目標掲げて

 金策工大は今後も国家科学院との共同研究など関係機関との連携をより強化して、宇宙開発分野の人材育成と技術開発に力を注いでいくという。

 「今後は人工衛星の発射だけでなく、国際宇宙ステーション計画に参与することもありうるし惑星観測や調査活動も課題の一つだ」(キム教授)

「第1中学校」の秀才教育 衛星開発者の原点

 「『光明星2号』の研究・開発集団の中には、わが校の卒業生がいる」

 平壌第1中学校のキム・ジョンヒョン副校長は、金正日総書記との記念写真に収まっている旧知の顔ぶれを確認しながら話した。

 「98年に『光明星1号』を打ち上げた時、わが校の生徒たちは『2号は自分たちが成功させる』と心に誓った」と当時を振り返る。

 「11年前の衝撃」は、同校の教職員と生徒たちに大きな刺激を与えた。朝鮮初の人工衛星打ち上げ成功は、同校がより高い目標を掲げて教育事業を推し進めるきっかけとなった。

 現在、平壌と全国の各道には秀才教育の拠点である「第1中学校」が設置されている。

 今から25年前の1984年4月28日、金正日総書記の平壌第1高等中学校(現在の平壌第1中学校)に対する現地指導が中等教育課程における秀才教育の始まりとなった。

 現地指導後、同校は特出した素質を持つ学生を全国から選抜する一方で、金日成総合大学や金策工業総合大学などの教員を呼び寄せ、一流の教授陣を作り上げた。国からは最新の教育設備が提供された。

 同年9月、国内では初となる秀才教育システムがスタート。以来、同校は先端科学技術など国の重要分野で活躍する優秀な人材を数多く輩出してきた。

全国から選抜

 平壌第1中学校はほかの中学校と同様の6年制。1〜3年までは平壌市内に住む学生が対象で、4年からは全国から選抜された学生も編入してくる。地方からの編入生に関しては、毎年、同校の教員が各道の第1中学校に出向いて審査する。教員が学生の実力を直接確認したうえで入学試験の受験資格を付与する。試験は毎年1月に行われる。受験科目の中でとくに重視される数学の試験は二次にわたって行われる。

 4年生進級当初は平壌の学生がリードするが、5年生から次第に地方出身の学生が頭角を現すという。

 学校側は学生たちに常に高いレベルを求める。個人の成績がランク付けで公開されるので、競争心も自然と芽生えるという。

クローン技術も

 平壌第1中学校が掲げている目標は、「強盛大国建設の礎となる人材」の育成だ。キム副校長は「『光明星2号』打ち上げのニュースに接した学生たちは、すでに次段階の宇宙開発計画に加わる意気込みを示している」と話す。

 同校で重視している分野は数学、物理、化学、生物。外国語教育にも力を入れている。

 金星学院(平壌)がコンピュータ分野の秀才教育を行っているとすれば、平壌第1中学校はより幅広い理工系の秀才を育てる場所だといえる。01年には「数学秀才班」と「生物秀才班」を新設した。

 キム副校長は「生物秀才班」について、「わが国でも生物分野の研究を発展させていく。授業内容にはクローン技術に関するものも含まれている」と語る。

 来年度からは、物理科目でナノ技術に関する専門的な教育が実施されるという。

[朝鮮新報 2009.4.17]