そこが知りたいQ&A−国連安保理議長声明後、朝鮮の反応は? |
6者会談不参加 核抑止力強化、2重基準を非難 「平和的宇宙利用続ける」 国連安全保障理事会が朝鮮の人工衛星打ち上げを非難する議長声明を採択したことを受け、朝鮮外務省は14日、声明を発表。国連安保理の措置を強く非難するとともに、6者会談からの離脱を表明し、核施設の再稼働、使用済み核燃料棒の再処理など自衛的核抑止力を強化していく立場を明らかにした。外務省声明の内容を中心に、議長声明の不当性、朝鮮の対応、今後の展望などについてQ&Aで見た。 ■ Q 議長声明の内容は? A 議長声明は、朝鮮の宇宙発射体が「人工衛星」か「ミサイル」かの判断には触れず、「09年4月5日の打ち上げ」と表現。朝鮮の「打ち上げ」が「(弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止することを求めた)安保理決議1718(06年)に違反するもの」だと「非難」し、1718に基づく義務に全面的に従うことを求めた。また、「今後、さらなる打ち上げを行わないことを要求」し、決議1718で定められた制裁委員会が朝鮮への禁輸品と資産凍結対象者を指定する任務に着手するとした。
Q 議長声明の何が問題なのか。
A 最大の問題点は、宇宙の平和利用に関する国際法上の権利に関して明白な2重基準を犯していることだ。歴史上、国連安保理が衛星打ち上げを問題視したことはない。平和目的の宇宙利用権および開発権の平等性は宇宙条約によって確認されているが、今回の議長声明はこれを完全に黙殺している。宇宙条約は国連が関わって作成されたということを考えるとき、安保理の措置は主権平等、公正といった理念を自ら否定する行為になる。 外務省声明も議長声明を「国際法じゅうりん行為」と非難。衛星を数多く打ち上げている国々が常任理事国を占める安保理が、国際法の手続きを経た朝鮮の衛星打ち上げに対して2重基準を適用していることをやり玉にあげた。 「衛星打ち上げであれ、長距離ミサイル発射であれ、だれが行うかによって安保理の行動基準が変わるというところに問題の重大性がある」という朝鮮側の指摘は正鵠を射ている。「自分たちの手先である日本の衛星打ち上げは問題なく、自分たちの言うことを従順に聞かない朝鮮の衛星打ち上げはいけない」という米国の論理を安保理が受け入れたと不信感をあらわにした。 議長声明は朝鮮側が追加の人工衛星打ち上げを行う権利も否定しているが、「宇宙条約で確認されている、すべての国に認められた宇宙の平和利用という権利を安保理決議が奪いあげる権限はない」(浅井基文・広島市立大学広島平和研究所所長)はずだ。 Q 朝鮮側はどのような対応措置を明らかにしたのか。 A 朝鮮側が宣言した措置は大きく分けて2つ。6者会談からの離脱と自衛的核抑止力の強化だ。 声明は、6者会談が「われわれの自主権を侵害し、武装解除と体制転覆だけを狙う場と化した」と厳しく非難したうえで、「会談には二度と絶対に参加しない。会談のいかなる合意にもこれ以上拘束されない」と宣言した。 離脱宣言の前提には「6者会談の存在意義が回復不能なまでに失われた」という認識がある。外務省声明は9.19共同声明の自主権尊重と主権平等の精神が6者会談の「基礎」だとしたうえで、▼会談参加国自身が国連安保理の名においてこの精神を真っ向から否定した、▼当初から会談を妨害してきた日本が今回、朝鮮に単独制裁を加えたという2点を会談の存在意義の喪失を示す例として挙げた。 一方、自衛的核抑止力の強化については、6者会談合意に基づいて無力化した核施設の原状復旧および正常稼働、その一環として実験用原子力発電所から抽出された使用済み燃料棒の再処理を進めると明言した。さらには、「自前の軽水炉型発電所の建設を積極的に検討する」とも述べた。 朝鮮が6者会談からの離脱と核抑止力の強化を表明したことは、衛星打ち上げに先立ち外務省スポークスマン談話などを通じて事前に予告した通りの対応だ。また、議長声明の内容からすれば朝鮮の強硬措置も当然だと言える。 Q 人工衛星打ち上げから議長声明採択、外務省声明発表に至る経緯を説明してほしい。 A 衛星打ち上げ前から米国、南朝鮮、日本などは「ミサイル発射は国連決議に明確に違反する挑発行為」になると決めつけ、新たな制裁を盛り込んだ決議の採択を目指す構えを示した。とくに強硬姿勢が際立っていた日本は、打ち上げ後の安保理協議でも問題解決の処方箋を持たない感情的な非難に終始した。国内でも衛星打ち上げを非難する国会決議を採択し、独自制裁の1年延長を決めた。 これに対して朝鮮側は、議長声明であれ、プレス声明であれ、安保理がこの問題を取り扱うこと自体が敵対行為になると批判。「非核化プロセスが振り出しに戻ることになり、必要な強い措置をとる」と警告していた。 安保理では米国、日本などが求める新決議に対して中国、ロシアが難色を示し、協議は紛糾。結局、各国の妥協の産物として議長声明が採択された。 Q 今後の展開はどうなるのか。 A 今回の人工衛星打ち上げをめぐる騒動によって6者会談の枠組みは崩壊した。朝鮮半島問題の関係国による会合は今後もありえるだろうが、昨年12月以降、中断しているプロセスの延長線上での6者会談再開は事実上不可能だ。 朝鮮側は外務省声明を通じて「今後も国際法に基づいて自主的な宇宙利用の権利を行使していく」意向を表明した。「強盛大国の扉を開く」という「2012年構想」と密接に関わっている宇宙開発、科学技術振興事業は敵対国の圧力によって頓挫するものではなく、本来の計画に沿って着実に進められるだろう。 核無力化作業に携わっていた国際原子力機関および米国の要員を現地から追放するなど、核施設の原状復旧にも踏み出した。 対立のエスカレーションに歯止めをかけ、9.19共同声明が残した全朝鮮半島の非核化という課題を実現するためには、破たんした6者会談ではない新たな外交的アプローチが必要だろう。(李相英記者) [朝鮮新報 2009.4.22] |