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〈月間平壌レポート -09年6月-〉 W杯出場の悲願達成 男子サッカー復活に沸く

 【平壌発=呉陽希記者】44年ぶりに手にしたFIFA(国際サッカー連盟)W杯2010年南アフリカ大会本大会出場に国中が沸いている。その一方で、朝鮮を取り巻く軍事的緊張は極度に達している。しかし、人びとの表情に憂いはない。核実験の成功、「150日戦闘」、男子サッカーの快挙など、今、朝鮮で起こっているあらゆる出来事が人びとの自信につながっている。

「美男子チーム」

W杯本大会出場を決めて帰国し、空港で歓迎を受ける朝鮮代表チーム(20日、文光善記者撮影)

 「朝鮮の予選突破を楽観した人がいただろうか」

 W杯本大会出場が決定した直後に国内紙に掲載された記事は、アジア地区予選開幕当時の国内の雰囲気を振り返りながら、こう指摘した。近年、女子サッカーに脚光が集まったが、今回の予選突破の快挙は男子サッカーの復活を告げる出来事となった。

 6日、平壌で行われた対イラン戦は異例の生中継で放送された。胸に「悪失企厩(強盛大国)」とプリントされたTシャツを着た「赤い応援団」も今までにない目新しい光景だった。朝鮮時間18日未明に行われたサウジアラビア戦は同日夕方に録画放映された後も数日間、繰り返し放映された。

 20日、本大会出場の切符を獲得した代表チームの帰国を取材するために空港へ赴いた。

 サッカー関係の取材現場でたびたび顔を合わせる国内のあるスポーツ担当記者は、デスクを離れる直前まで市民からかかってくる電話の対応に追われていたという。男子サッカーを追い続けてきただけに感慨もひとしおの様子だった。「市民があまりのうれしさに感極まって電話越しに泣くものだから、こっちも涙が出てきて」などと興奮気味に話していた。

 本大会出場を決めた要因は「精神力の強さ」にあるというのが彼の分析だ。「決してあきらめない意志の強さは国民的な気質だ。精神論に懐疑的な意見もあるが、彼らと同じ土壌で暮らすわれわれにとっては何よりも説得力がある」と説明する。

 「美男子チーム」。帰国した朝鮮代表につけられた「称号」だ。爽やかな笑顔でタラップから降りてきた選手たちの精悍な姿に、出迎えた市民たちの目は釘付けだった。

「150日戦闘」

 「『150日戦闘』期間中は無休で営業します」

 平壌市内のとある食堂にはこう張り出されていた。「150日戦闘」とは、経済発展と人民生活向上を掲げた「2012年構想」の突破口を開くために打ち出されたキャンペーン。4月20日から全国のあらゆる単位で繰り広げられている。ほとんどの取材先には、「150日戦闘」の残り期間を示すポスターや看板が目立つ場所に設置されており、それぞれの単位が掲げた目標の達成に精を出している。

 90年代の経済的試練の時期に生産がストップし、業績の伸び悩んだ企業所にかつての活気が戻ってきた。近年、資材不足から生産よりも修理作業が主だった金鍾泰電気機関車連合企業所は今年、昨年の10倍の機関車生産を見込んでいる。機関車生産の再開にともなって、定年退職した元従業員らの復帰も相次いでいる。同企業所のキム・キョンス支配人によると、今年1月から6月の生産台数はすでに昨年の8倍に達した。資材は千里馬製鋼連合企業所、金策製鉄連合企業所などから確保している。

 金融危機により世界経済が混乱に陥る中でも、「われわれに金融危機の影響はない」と千里馬製鋼連合企業所の関係者は話す。経済分野の関係者はそれを「自立的民族経済の潜在力」だと表現する。経済封鎖によるエネルギー、資材不足に対処するため、朝鮮の実情に見合う技術刷新を行った成果が全国の経済単位で実を結んでいる。実際、取材先で出会う工業部門関係者の強気の発言はそのような事実に基づく自信だといえる。

高まる軍事的緊張

 北南関係が「戦争間際」の状態で迎えた6.15共同宣言発表9周年。かつて北と南の当局者が参加する共同行事が催されたことも、今となっては遠い昔のことのように感じる。今年は北、南、海外の3者がそれぞれの地域で記念行事を開催した。

 15日、平壌で行われた中央報告会で最高人民会議常任委員会の楊亨燮副委員長は、現在、統一問題をめぐって繰り広げられている対決について、「6.15勢力と反6.15勢力との対決であり、平和路線と戦争路線との対決」だと指摘した。

 同日、金日成広場では国連安全保障理事会の対朝鮮制裁決議を糾弾する平壌市群集大会が行われた。全国各地でも同様の集会が相次いで開かれた。労働新聞23日付は「朝鮮半島の現在の危機的事態は全面的に米国の対朝鮮敵視政策の産物」だと指摘した。

 朝鮮半島情勢の緊張は極度に達しているが、人びとにひるむ様子はまったく見受けられない。「外部の誰かに期待もしないし、望みもしない」と市民らは言う。軍事的脅威や制裁を受けながらも自主を貫き国家主権を守ることは、この国に血の教訓として深く根付いている。

[朝鮮新報 2009.6.26]