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変ぼうする元山 電力事情改善で街に活気

 朝鮮東海岸を代表する港町、元山市(江原道)が生まれ変わった。今年に入って、元山青年発電所の竣工など電力事情の大幅な改善によって市民の生活は大きく変わり、市内の工場も生産を正常化させつつある。夜空を照らす市中心部建物のイルミネーションは、活気あふれる元山の象徴として全国の注目を集めている。変ぼうする元山の姿を紹介する。

港町のイルミネーション 地元の新たな風物詩

長徳島から眺めた元山市街の夜景

 元山市の夜を彩る華やかな不夜城が人びとの関心を集めている。今年1月の元山青年発電所の竣工に続いて進められた同市のイルミネーション設置事業は、江原道民の自力更生の精神を象徴している。

 イルミネーションは金日成主席の銅像が建つ海岸広場を中心に、江原道革命史跡館、松涛園旅館、東明旅館、元山百貨店、元山青年会館、元山駅をはじめ大小120あまりの施設に設置された。対象の特徴に合わせてシャンデリア、花火型街灯、コードライト、高圧ナトリウム灯、ネオン灯、庭園灯などその形はさまざまだ。

 海辺の東明山地区と海岸通り周辺には、日没から深夜まで壮観な光景が広がる。最も圧巻なのは、東明山地区にある15〜30階の高層住宅の明かりだ。

 元山市人民委員会の関係者によると、総書記は今年5月に元山市を視察した際、同市のイルミネーション事業に関して、平壌のそれに劣らないほど見事だと高く評価したという。

 元山市民は日没後、灯台のある長徳島や、島と陸地を結ぶ桟橋、海岸防波堤などに集まり、市街の夜景を楽しんでいる。夜景をながめながら、散歩したり、釣りに興じたり、会食や娯楽会などで盛り上がる。

 周辺には釣りたてのイカやボラなどの魚介類を刺身や鍋にしてふるまう店もあり、市民から好評を博している。

 出張で元山を訪れる人びとも海岸沿いの防波堤に立ち寄って夜景を見物し、新鮮な海産物の刺身を味わってから帰路につく。

 松涛園旅館や東明旅館などに宿泊する外国人観光客の間でも夜景見物と刺身料理は観光コースの定番だという。

 元山市の見事なイルミネーションは国内メディアで広く紹介され、全国津々浦々から人びとが元山を訪れている。元山の経験にならって、地元でイルミネーションを設置しようという動きも広まっている。

 元山市徳成洞に住むリ・ヒャンミさん(34)は「この夜景を見るたびに、元山青年発電所工事の日々を思い出す。あの時の苦労があって今日がある」と話す。

 元山市人民委員会の関係者によると、現在、イルミネーション拡張のための工事が行われている。エリアを松涛園の入り口から松涛園国際少年団キャンプ場まで拡大するという。同区間にある松涛園野外劇場、松涛園海水浴場、元山海洋体育団をはじめとする10あまりの施設にイルミネーションが設置される予定だ。

目標は「全国進出」 元山ガラスビン工場

元山ガラスビン工場での作業風景

 今年2月、金正日総書記が現地指導した元山ガラスビン工場は、地方独自の原料に依拠して各種ガラス瓶と容器、床タイル、モザイクなど20種類あまりの製品を生産している。小さな地方産業工場だが、大規模軽工業工場との品質競争が目標だ。

 同工場では1980年代まで、良質と名高い夢金浦(黄海南道龍淵郡)の砂を元山まで運んで生産を行っていた。

 パク・ウォングン支配人(68)によると、地方産業工場は原料の70〜80%を地方産の原料でまかなうべきだという金日成主席の遺訓を貫徹するために近年、同工場の幹部や技術者たちは元山周辺の東海岸地区を調査して原料の源泉を探し求めたという。

 同時に、生産工程の改良も独自の力で推し進めた。今年、元山青年発電所が建設されたことで、電力の供給も正常になされるようになった。

 同工場は大安親善ガラス工場(平安南道)が建設される前まで、板ガラスを専門に生産してきた。大安親善ガラス工場で全国の需要を満たす板ガラスが生産されるようになってからは、ガラス瓶をはじめとする各種のガラス容器やタイルの生産に重点を移した。

 2月の現地指導の際、総書記は硬質ガラス製品を生産して熙川硬質ガラス容器工場(慈江道)と競ってみたいというパク支配人の決意に対して、一度チャレンジしてみるべきだと背中を押したという。

 熙川硬質ガラス容器工場で生産される製品は多方面から高い評価を受けている。この分野では国内シェアの多くを占める。

 総書記は元山ガラスビン工場の製品を同工場の商標を付けて平壌でも販売してはどうかと述べ、地方産の原料に基づいた製品の質を絶えず高めるべきだと強調したという。

 総書記の現地指導に奮起した同工場では、現在行われている「150日戦闘」期間に新たな生産ラインを建設している。これは数十種あまりのガラスビン製品を年間数十万個生産できる能力を持つものだ。

 パク支配人は、「一目見てわれわれの工場製だということがわかるように、品質を絶えず改善していきたい」と抱負を語った。

自力で発電所建設 「制裁も気にしない」

元山青年1号発電所の全景

 今年1月に竣工した元山青年発電所によって、元山市民の生活は大きく改善された。

 近年、江原道の経済発展と人民生活向上でカギとなる電力問題を、国に負担をかけず地方独自の力で解決するために、元山青年発電所の建設は急ピッチで進められてきた。

 同発電所は山頂に貯水池を作り、山の谷間に水管を通すことで水を階段式に落とし電気を発生させる。階段式としては、これまでに建設された国内の水力発電所の中で一番の落差を誇る。

 今年1月、同発電所を訪れた金正日総書記は建設者の働きを高く評価しながら、江原道の人びとを「自力更生の先駆者」と称えた。

 当時、総書記の現地指導の案内を務めたピョン・ウンギュ支配人(56)は、総書記の今年初の現地指導先が同発電所だったことについて、「経済強国建設の突破口を開くうえで電力問題の解決を重視し、発電所の建設で江原道の人びとが発揮した精神力を全国に一般化するという意図があった」と振り返る。

 発電所の完成によって、元山市の大小の工場、企業所の生産活動が正常化した。住宅の電力問題が大幅に改善され、貯水池ができたことで飲料水の問題も解決のめどが立ったという。

元山市内の住宅の内部

 ダムの貯水池周辺には地域住民の休息施設が建設された。ボートや釣りなどを楽しむ市民も多い。

 十分な電力供給で生活が潤った元山市民たちは現在の朝鮮半島情勢に関しても、「どんな制裁も気にならない」「自力更生の精神で豊かに暮らそう」という楽観的な反応を見せる。

 発電所周辺の住宅に入居した娘に会いにきたというヨン・スオクさん(61)は、「平壌にも負けない住まいだ」と驚きを隠せない様子だった。

 国内の各工場、企業所と同様に、元山青年発電所も現在、「150日戦闘」の真っ最中だ。

 「150日戦闘」期間、同発電所は前年比34%増の電力生産目標を掲げた。金策工業総合大学をはじめとする関連部門の科学者や技術者たちとの緊密な連携の下に、発電機の効率を高めるなどさまざまな問題を解決している。

 元山青年発電所だけで江原道の電力問題がすべて解決したわけではない。道では電力問題の根本的解決に向けて現在、元山青年発電所と同水準の発電能力を持つ「元山軍民発電所」の建設を推し進めている。

国内トップ、決意新たに 元山農業総合大学

大学内に設置された土壌式無公害温室

 元山市中心部から松涛園を挟んで6キロほど離れた山のふもとに位置する元山農業総合大学。今年2月、総書記が現地指導した。

 大学構内には250余種類、数十万株にもなる木々がうっそうとした森を形成している。国の天然記念物である元山コウヤマキ、チョウセンハリモミなどもある。

 同大学は1948年9月に創立された朝鮮初の農業技術大学。農学、生物学、獣医畜産、水利工学、農業経営学、蚕学などの専門コースがある。

 創立から現在にいたるまで、数多くの優秀な人材を輩出するなど国内トップの農業大学としての使命を果たしてきた。農業部門の中枢で活躍する卒業生も少なくない。蚕業分野で優れた功労を立てたケ・ウンサン博士も同大学の卒業生だ。

 金日成主席も「わが国の社会主義農村問題に関するテーゼ」(64年2月25日発表)を出す前に、同大学の教職員らと議論を交わしたといわれている。

 今年2月、大学を訪れた総書記はそれまでの研究成果を高く評価し、早急に全国に導入すべきだと強調した。また、その際、最新式の温室を大学側に設置することを約束し、温室が完成した4月に再び大学を訪れた。

 新しく設置された土壌式無公害温室は、光と温度、湿度調整をはじめ全ての管理をコンピュータで行う温室で、現在は作物育種作業が行われている。

 現地指導を機に、5月には大学の名称も農業大学から農業総合大学に変わった。大学内の各学部も単科大学に改編された。

 リ・ミンチョル学長(51)は同大学が工業分野で大きな役割を担う金策工業総合大学のように、今後も農業分野の発展において重要な役割を果たしていく決意を新たにしていた。

[朝鮮新報 2009.7.31]