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朝鮮での通貨交換措置 社会主義経済管理の秩序強化

「インフレ抑圧の環境整う」

 【平壌発=姜イルク記者】既報のように、朝鮮で新通貨が1992年以来、17年ぶりに発行された。朝鮮民主主義人民共和国中央銀行が発行する新通貨への交換が11月30日から今月6日まで各地の貨幣交換所で行われた。

目的は「生活安定」

朝鮮中央銀行職員のチョ・ソンヒョン氏

 中央銀行職員のチョ・ソンヒョン氏(44)は、今回の貨幣交換措置の背景と目的について、「貨幣の流通を円滑にすることで、『経済強国』の建設を促進し、人民の利益を擁護して、彼らの生活を安定、向上させることにある」と説明する。

 朝鮮経済は1990年代、西側諸国の反朝鮮孤立圧殺策動と、相次いだ自然災害、社会主義市場の崩壊などによって深刻な打撃を受けた。90年代後半には「苦難の行軍」、強行軍と呼ばれる経済停滞期に陥ったことで工場や企業所の生産が激減し、人民生活にも甚大な影響を及ぼした。そんな状況の中、朝鮮は国防力の強化や社会福祉などの社会主義的施策を実施するためにばく大な資金を支出した。その結果、インフレが起き、人民経済の発展において不均衡が生じることになった。

 朝鮮はこのような状況を克服するためにさまざまな措置を講じた。

 近年、工場など生産現場では全般的な設備が刷新され、工場の新設も相次いでいる。「150日戦闘」「100日戦闘」などの全国的キャンペーンが展開され、人民経済の全部門では12年までに年間生産高における最高レベル突破を目標に掲げている。

 同氏は「経済全般が上昇軌道に入った」としながら、「インフレ現象を抑制できる物質的な環境が整った」と指摘した。

 今回の措置の背景にはこのような実情が反映されている。

 その一方で、「貨幣のデザインと種類を改善し、最新の貨幣製造技術を導入する必要性も生じた」と、同氏は指摘する。

 同氏によると、今回発行された新通貨は、最新の貨幣製造技術によって製造された。新通貨の券種は紙幣が9種(5千ウォン、2千ウォン、1千ウォン、500ウォン、200ウォン、100ウォン、50ウォン、10ウォン、5ウォン)で、硬貨は5種(50チョン、10チョン、5チョン、1チョン)。期間内に交換できなかった旧通貨と、不法に外国に持ち出されている通貨は無効になるという。

 通貨の交換比率は100対1。各地に設置された貨幣交換所で世帯ごとの交換を原則とした。

 個人の銀行預金に関しては10対1の比率となる。

「勤労者から支持と歓迎」

17年ぶりに発行された新通貨(写真は上から50ウォン、10ウォン、5ウォン紙幣)

 チョ氏は、通貨交換後の国内の物価などについて、国家が価格調整措置を講じた02年7月の水準になるだろうと予測する。当時、朝鮮はコメの国際市場価格を基準に全般的な財、サービスの価格を設定した。

 一方、今回の措置が朝鮮の自由市場経済化を促すものではないかとの憶測が一部で飛び交っている。同氏は、「われわれは自由市場経済に向かうのではなく社会主義経済管理の原則と秩序をさらに強化していく」と、このような見方を一蹴した。

 また、価格は需要と供給のバランスの推移により変動が有りえるが、今回の措置によって市場での物価の平均水準は02年7月1日より下落するだろうと話す。

 今後、朝鮮の経済活動の大部分が市場ではなく計画的な供給システムによって流通されるようになり、それによって計画経済の秩序がさらに強化されると見越されている。

 企業所の生産活動に必要な物資を計画通りに保障できず、市場の利用を一部許した点については、「社会主義経済管理の原則を固守したうえで、あくまで補助的な空間として市場を利用した」と説明。「経済活動における国の役割や能力が再び強化されるにつれ、市場の役割は次第に弱まるだろう」と話す。

 今回の措置について、チョ氏の周辺では肯定的な反応が伝わっているという。

 「通貨交換は国家と社会のために誠実に働き、報酬を得る勤労者を優待する措置になっている。労働者、農民、事務員など多数の勤労者から今回の措置に対する歓迎と支持を得ている」

 同氏によると、さらに今後、経済管理において一部の乱れた現象を正す措置が講じられるという。

 また、商店や食堂では今後いっさい、外貨でのやりとりが不可能となる。

[朝鮮新報 2009.12.11]