朝鮮の論調 09年 1月 |
反北対決政策に変化のない李明博政権への「全面対決姿勢」が講じられた。朝・日関係の行方も不透明だ。そんななか、米国でオバマ政権が発足。直接的な言及はまだないが、核問題と朝鮮半島の安全保障問題という朝米間の懸案が強調された。 −対米 核、安全保障問題強調 米国の核問題と朝鮮半島の安全保障問題を扱った論調が目立った。 朝鮮外務省スポークスマンは13日、米国が朝鮮半島の非核化は朝鮮が核放棄すれば実現する問題であるかのような主張を繰り広げていることを問題視し、談話を発表した。 談話は、「米国の対朝鮮敵視政策とそれによる核の脅威によって朝鮮半島の核問題が生じたのであって、核問題によって敵対関係が生じたのではない」と前置きし、「米国の対朝鮮敵視政策と核の脅威の根源的な清算なしには、100年が経ってもわれわれが核兵器を先に手放すことはない」と主張した。 続いて労働新聞15日付は、米国は、朝鮮半島平和保障の当事者としての責任から絶対に逃れられないと強調した。現在、朝鮮半島情勢の緊張が激化していることについて「全面的に米国に責任がある」と指摘。「米国に朝鮮を侵略する意図がなければ朝鮮と平和協定を締結できない理由はない」と強調した。 さらに、朝鮮外務省スポークスマンは17日、「米国の核の脅威が少しでも残っている限り、われわれの核保有の地位はいささかも変わらない」との立場を示した。これは、米政府内で「朝鮮が先に核を放棄してこそ関係正常化が可能」などと核問題と関係正常化問題を対峙させる主張が出ているのと関連して、朝鮮中央通信社記者の質問に答えたもの。 スポークスマンは、米国の主張は「朝鮮半島の核問題の本質に対するわい曲」だとしながら、「関係正常化と核問題は徹頭徹尾、別個の問題」だと強調した。 民主朝鮮2日付論評は米国の核政策の矛盾について指摘。「核の拡散」を促した張本人は米国だとして、その責任を追及した。 労働新聞31日付論説は「核軍縮」を訴える米国の欺まん性を非難。「米国は朝鮮を核攻撃の対象に定めて核の脅威を加え続けている」としながら、「米国の核の脅威が続く限り、戦争抑止力をいっそう強化する」と主張した。 −対日 対朝鮮敵視政策変化なし 日本の軍備増強を非難する論調とともに総連と在日朝鮮人問題に関する長文の論説が2度配信された。 労働新聞5日付は2008年に総連と在日朝鮮人に対して日本当局が行った弾圧を概括し、「日本の対朝鮮敵視政策にいささかの変化もなく、こんにち極限にいたっている」との認識を示した。同紙は、昨年の日本当局の総連弾圧を振り返り、このような事態が続けば「無慈悲な報復を加える」と警告した。 労働新聞24日付は、在日朝鮮人問題が発生した原因と経緯、日本当局が問題解決を妨げてきた事実などを改めて取り上げた。 そのほか、16日発朝鮮中央通信は、石原慎太郎東京都知事の「中国が北朝鮮を合併することが一番楽」「平和的に瓦解できる」(13日)などの発言を取り上げて非難した。 23日発朝鮮中央通信は、石原都知事などが朝鮮の首脳部に「拉致被害者の再調査を求める書簡」を送付したことと関連、「『拉致問題』、核問題をうんぬんして、人気を上げようとするのが日本の反動層であり、このような政治ブローカーが大手を振って歩くのが不正常な国−日本の政界」だと非難した。さらに石原都知事について「突飛な発言を連発するだけの見るも哀れな政治役者」だと断じた。 −対南 「全面対決態勢に入る」 朝鮮人民軍総参謀部は17日、李明博政権の対北対決政策を粉砕するための「全面対決態勢に入る」と宣言するスポークスマン声明を発表した。 声明は「原則的立場」として▼全面対決態勢に突入▼南朝鮮軍の「先制攻撃」「よう懲」に「強力な軍事的対応措置」で対応▼北側が設定した西海海上軍事境界線固守の3点を主張。 声明は冒頭で、李明博大統領の「過去のように北に何かを与えて南北関係が改善したと考えてはいけない」(昨年12月31日)との発言を取り上げ、これを「対決宣言」とみなした。 声明発表以降、国内では声明を「正義の宣言」(労働新聞1月19日付)などと支持する論調が相次いでいる。 民主朝鮮20日付は声明発表後の南側当局の対応を非難し、政策転換はおろか北南対決をさらにあおる言動を展開する李政権は「権力の座から退くべき」だと主張した。 祖国平和統一委員会は30日に発表した声明で、李政権が西海の海上をはじめ軍事境界線一帯に陸、海、空軍武力を大々的に集中させている事実に言及し、「もはや北南関係はこれ以上収拾する方法も、立て直す希望もなくなった」と述べた。北南間の政治的・軍事的対決状態解消と関連したすべての合意事項の無効化と、西海海上軍事境界線条項の破棄を宣言した。 昨年11月、北南将官級軍事会談北側団長は、12月1日から軍事境界線通過を遮断するなどの「重大措置」を講じることを発表している。 ■ 元旦に発表された労働新聞、朝鮮人民軍、青年前衛の3紙共同社説は「こんにちの世界に、わが国のように政治的に安定し、全人民が未来への大きな希望と抱負、信念にあふれている前途洋々たる国はない」という楽観と自信を示した。 年始から外交分野でさまざまな動きがあった。 金正日総書記は1月23日、中国共産党の王家瑞対外連絡部長ら(1月21〜24日に訪朝)と会見した。 6者会談ロシア側首席代表のボロダフキン外務次官一行も1月27〜31日、訪朝し朴宜春外相と会見した。 一方、今月3〜7日に訪朝したボスワース元南朝鮮駐在米国大使、アブラモウィッツ元国務次官補など朝鮮問題専門家7人で構成された代表団は民間ではあるがオバマ政権発足後、初めての米国の訪朝団として注目を集めた。 6者会談参加国の米・中・ロは官民の差はあれども朝鮮と接触をもったが、南朝鮮と日本は断絶状態を維持したままだ。 李明博政権の対北政策に警鐘を鳴らし続けてきた北側はついに「全面対決態勢」に入った。李政権の対北政策転換を再三促し続けた論調も、政権退陣を主張するに至った。 米国とロシアが6者会談合意で割り当てられた重油20万トンの支援をすでに完了するなか、日本は自らの義務履行に着手する兆しすら見せていない。 共同社説は「朝鮮半島の非核化を実現し東北アジアと世界の平和と安全を守るため、自主、平和、親善の理念のもと、朝鮮と友好的に対する国々との関係を発展させる」と強調している。 6者会談米国側首席代表を4年間務めたヒル国務次官補は3日に米国内で行われた講演会で「(米朝関係が)もう二度と過去に後退することはない」と指摘している。(呉陽希記者) [朝鮮新報 2009.2.12] |