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李政権の言論、文化交流遮断 「反北対決姿勢の表れ」

 6.15共同宣言実践南側委員会傘下の言論本部(以下、6.15南側言論本部)が計画していた北側との記事交流事業が南側当局によって不許可となった。昨年の李明博政権発足後、当局間関係の断絶にも関わらず着実に続いてきた北南間の民間交流だが、南側当局の反北対決政策によって中止に追い込まれる例が増えている。言論分野の交流を遮断した李政権に対して、北南双方から批判の声が上がっている。

「理屈に合わない」

近年、活発に行われてきた北と南の言論分野の交流(写真は、06年11月に金剛山で開かれた北南言論人討論会)

 6.15南側言論本部と6.15共同宣言実践北側委員会の言論分科委員会は昨年10月、平壌で開かれた北南言論人代表者会議で6.15言論本部のインターネット機関紙「統一言論」と北側のインターネットメディア「わが民族同士」との記事交流に合意した。内容は、双方が運営するメディアや電子メールを通じた記事、論評、写真、動画の交換などだ。

 6.15南側言論本部は同交流事業を「社会文化協力事業」の一環として統一部に申請、事業に対する承認を求めたが、先月30日、不許可の通知を受けた。

 統一部は4日の記者会見で、不許可の理由について、「国家の安全保障と公共の安寧秩序、公共の福利を阻害する憂慮があるため」「事業が純粋な記事交流ではなく、北側の一方的な政治主張を伝える窓口の役割を果たすおそれがあるため」などとしている。

 しかし、すでに連合ニュースや統一ニュース、「民族21」などのメディアは数年前から北側との記事交流を推進している。今回の不許可措置は他団体の交流事業との整合性の面から見ても異例で、「李明博政権の硬直した冷戦的対北政策と6.15共同宣言に対する非理性的な拒否感が反映された決定」だという批判が噴出している。

 現行の北南交流事業の枠組みでは、6.15南側言論本部が「社会文化協力事業者」として承認されても、北側から送られてくる全ての記事は統一部と関係機関の審議を経たうえで承認、条件付承認あるいは不許可が判定される。

 また、同本部は他のメディアが行っている交流事業と同様に、電子メールを利用した交流という一般的な方式を採用する旨を当局に申告済みだった。統一部が「国家安保」を理由に申請を却下することは「論理的に合わない」(6.15南側言論本部)といえる。今回の措置は「予断に満ちた過剰反応」(統一ニュース)という声も上がっている。

 統一部の決定を受けて6.15南側言論本部は4日、声明を発表。「南北相互間の誤った報道を防ぎ、事実に立脚した客観、公正な報道の実現に向けた記事交流を『対南メッセージの伝達窓口』と見るのは理屈に合わない」と非難し、「問題点があるなら、両者の協議を通じて解決すべきだ」と主張した。

 同本部のチョン・イルヨン共同常任代表は、「南北メディア間の交流は『共生と共栄』を対北政策の基調とする政府であれば、むしろ積極的に推し進めるべき事案だ」と指摘、「なぜ不許可にするのか納得がいかない」と非難した。コ・スンウ政策委員長も当局に対して不許可の具体的理由を提示するよう求めた。

 他のメディアも、北南の和解と協力に寄与する言論の役割を否定する李政権の姿勢を問題視している。

 京郷新聞6日付の社説は李政権の対応を「対決的対北観の表れ」だと指摘、「南北対話と交流、協力を強調する政府の言葉を誰が信じることができるのか」と批判した。

 ハンギョレ新聞6日付の社説も、「民間交流を偏狭な物差しで測ることは南北関係に何のプラスにもならない」とし、当局に対して不許可措置の撤回を求めた。また、今回の強硬措置には「統一部より高い次元の力が作用した」との見方を示した。

 6.15南側言論本部は韓国記者協会、インターネット記者協会、全国言論労組などが加盟し、06年6月に結成。北側の6.15言論分科委員会との交流も盛んだ。 また、北南関係や統一問題についての声明や論評を精力的に発表している。

文学作品の検閲も

 北側も祖国平和統一委員会(祖平統)の書記局報道(13日)を通じて、南側の対応を非難した。

 報道は、南側の交流事業遮断は「南朝鮮の人びとの統一意識を抹殺し、同族に対する敵対意識を鼓吹しようとする不純な企図から出発したもの」だと断言した。さらには、「李明博政権が持ち出す『憂慮』とは民族の和解と団結、自主統一を願う北側の声が南側に伝わることで、『安保』とは同族対決と反統一の法・制度とファッショ統治システムを強化するということだ」と手厳しい。

 言論分野以外でも交流遮断の動きは現れている。

 京郷新聞9日付の報道によると、統一部が北側の作家の小説を発刊する予定の出版社を相手に、作品の一部の内容を削除するよう求めていたことが明らかになった。出版社側は「事実上の事前検閲にあたる」と反発、当該作品の出版を放棄することを決めた。

 問題視された作品は小説「蓋馬高原」(黄健作、56年、朝鮮作家同盟出版社)で、「知識を作る知識」出版社が昨年企画した朝鮮近現代文学100選のうち、第1弾で発刊予定(12月)だった50作品の中に含まれていた。原作はすでに研究用として南側に搬入されており、一般市民も閲覧可能。89年には他の出版社から原文そのままの形で出版されたこともある。

 しかし、統一部は先月7日、出版社側に対して「一部の内容を削除すれば出版を許可する」方針を通告。当局が削除を要求した箇所は全190ページ中、40ページにのぼるという。北側を称える内容と朝鮮戦争当時の米軍による民間人虐殺に言及した部分などだ。

 出版社側の弁護士は、「このような物差しを導入すれば、国内で出版できる北側の小説は一冊もなくなる」と、当局の対応に疑問を呈している。

 情勢の緊迫度が増す中、今後の民間交流事業の行方は楽観視できない。南側から3.1人民蜂起90周年、文益煥牧師訪北20周年を記念する共同行事などが提案されていたが、開催は困難な状況だ。(李相英記者)

[朝鮮新報 2009.2.18]