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朝鮮の論調 09年 2月

 米国と南朝鮮の軍事的挑発によって朝鮮半島情勢の緊張が高まる中、朝鮮は人民軍総参謀部スポークスマン声明(1月17日)と祖国平和統一委員会の声明(1月30日)を発表。李明博政権の反北対決政策に対して「全面対決態勢に突入」することと、北南間の政治的・軍事的対決状態の解消と関連した全合意事項の無効化および西海海上軍事境界線に関する諸条項の破棄を宣言した。2月に入っても軍部および北南関係、宇宙開発部門の関係機関を通じて声明、談話などを相次いで発表、人工衛星「光明星2号」が発射準備段階にあることを公表する一方で、「制裁」「軍事的対応」を叫ぶ米国や南朝鮮に対する非難を強めている。各メディアも、これらの発表に基づき自国の立場を補強する論調を展開した。米国務長官のアジア歴訪、米国の朝鮮問題専門家グループ訪朝など注目すべき動きもあったが、今後の情勢は予断を許さない。

−対米 宇宙開発は自主的権利

 労働新聞の7日付論評は「平和的な宇宙利用の権利は世界のすべての国に等しくある」と主張した。さらに、朝鮮が宇宙の平和利用に関する事業を積極的に推進中だと明らかにし、「わが国の平和的宇宙進出とその利用政策を阻む力はどこにもない」と指摘した。

 16日には朝鮮中央通信が、朝鮮が長距離ミサイルの発射準備を行っているという米国など一部の国の論調を「われわれに対する挑発」だと非難。「わが国で何が打ち上がるのかは、いずれわかるだろう」と衛星打ち上げを示唆する踏み込んだ主張を行った。これらの発表は、衛星運搬ロケット「銀河2号」による試験通信衛星「光明星2号」の打ち上げ準備が本格的に進められていると明らかにした宇宙空間技術委員会スポークスマン談話(24日)の前奏曲となった。

 米軍の朝鮮半島周辺における武力増強と軍事的挑発を非難する論評も多く配信された。労働新聞21日付は、米国が「南朝鮮と日本など朝鮮半島の周辺に侵略武力を引き続き増強して、われわれを強く刺激している」と指摘し、「極めて不穏」な動きだと憂慮を示した。とくに、「作戦計画5027」に代わる新たな共同軍事作戦計画を作成していることを問題視し、これを「朝鮮侵略のためのより完成された核戦争シナリオ」だと非難した。「朝鮮半島の情勢は一触即発の超緊張状態に陥っている」(17日発朝鮮中央通信)というのが朝鮮側の現状認識だ。

 朝鮮半島情勢以外にも、イスラエルのガザ地区侵攻に対する米国の支持を批判する論評(労働新聞3日付、民主朝鮮11日付など)が掲載された。

−対日 軍事化、対米協力に警戒感

 7日発朝鮮中央通信の報道は、麻生首相の09年施政方針演説を酷評した。

 同報道は麻生首相が対朝鮮問題に関して「拉致、核、ミサイル問題を包括的に解決し、国交正常化を実現すべく取り組む」と述べたことに対して、「全く新しさがなく、これまでの反朝鮮敵視の立場がそのまま反映されている」「朝・日関係問題解決の根本を捨てた日本当局の旧態依然とした政治的駆け引き」などと非難した。国交正常化の前提条件を「拉致、核、ミサイル問題解決」と見なす思考方式は、「被害者に代価を求めるような鉄面皮でねじ曲がったもの」だとも指摘した。

 日本の日米軍事同盟強化、日米協力外交推進の動きに警鐘を鳴らす論調も多かった。

 労働新聞25日付の論説はこれらの動きについて、「再侵略野望実現の前奏曲」「アジアで戦争を引き起こす危険極まりない行為」と断じた。同論説は、オバマ政権発足後、麻生総理や中曽根外相などが日米同盟強化を繰り返し主張している背景には「民主党政権の出現で米国の対日政策が弱まることへの焦り」があると指摘した。

 また、ソマリア沖の海賊対策問題に関する日本の対応を、「海外派兵の野望実現」という観点から分析する論評(民主朝鮮20日付)もあった。

−対南 北南関係の緊迫度を強調

 李明博政権に対する非難のトーンは高まる一方だ。とくに、1月30日の祖平統声明に対する南側当局の対応を非難し、同声明の重大性と北南関係の緊迫度を強調する内容が目立った。

 祖平統声明に対して李大統領は「南北基本合意書は声明一つで破棄されない」と反応した。国防部も「警戒態勢強化」で北側の「北方限界線の侵犯」に「断固として対応」すると騒ぎ立てた。労働新聞11日付は、これらを「盗人猛々しい恥知らずな妄動」と痛烈に批判した。同紙13日付も、祖平統は「北南関係問題において北側を公式に代弁する機関」であり、今回の声明は「法的性格の文書」だと声明の重みを強調。李明博政権による声明中傷を「北南合意を完全に有名無実にした張本人がこの期に及んで白を切っている」などと非難した。

 玄仁沢氏の統一部長官就任を非難する論評も多かった。「悪名高い反北対決狂信者」「統一部こそ『対決部』」(以上、民主朝鮮13日付)、「北南関係はもはやこれ以上立て直す余地すらない」(労働新聞24日付)と手厳しい。

 また、李政権発足1周年に際して、祖国統一研究院が、「李明博一味の執権1年10大犯罪記録」を発表。各紙も、1年間を振り返り同政権の反北、反統一政策を批判する論評を掲載した。

 一方、李政権の「独裁体制強化策動」に関する論評も配信された。「集会およびデモに関する法律改正案」「言論関連法改正案」をはじめとする「ファッショ悪法」の強行処理(労働新聞1日付)や、「竜山惨事」に関する検察の捜査結果(民主朝鮮14日付)、「韓国青年団体協議会(韓青)」に対する「利敵団体」判決(労働新聞17日付)などが批判の俎上に上った。

 李明博政権発足から1年。朝鮮半島情勢と北南関係の現状を見るとき、李政権の罪は重い。大統領は、現在の60余年の分断の歴史において北南関係が「1年程度断絶しても何ともない」と発言したという。状況の重大性を認識していない「言葉遊び」というそしりを免れないだろう。「1年ではなく執権全期間、北南対話の扉に一度も手をかけないまま歴史のごみ箱に押し込められた金泳三よりもさらに哀れで悲惨な運命を免れない」(労働新聞12日付)という北側の見方は決して大げさではない。

 李明博政権に輪をかけて強硬姿勢なのが日本だ。浜田靖一防衛相など政府高官の口からは、朝鮮側の人工衛星を迎撃するという物騒な話まで飛び出している。主権国家の当然の権利である平和目的の衛星打ち上げに言いがかりをつけるばかりか、あまつさえロケット迎撃の可能性まで強調するとは、狂気の沙汰だ。戦争をしようというのだろうか。(李相英記者)

[朝鮮新報 2009.3.11]