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そこが知りたいQ&A−北南関係の危機が続いているが

李明博政権の反北対決政策が根本原因、白紙化した合意、政治・軍事的対立激化

 北南関係が危機的状況にある中、日本や南の一部メディアは、関係悪化の経緯についてほとんど伝えず、「情勢を意図的に緊張させる北の瀬戸際戦術」を声高に強調するなど世論をミスリードしている。北側の強硬姿勢が李明博政権の挑発行為への対応策だという事実は意図的に隠ぺいされている。北南関係悪化の原因や李明博政権の対北政策の問題点をQ&Aを通じてあらためて検証した。

 Q 北南関係が危機にいたるまでの経緯を説明してほしい。

 A 昨年2月に発足した李明博政権は金大中、盧武鉉政権時代を「失われた10年」と呼び、北南首脳が合意した6.15共同宣言と10.4宣言の履行を拒否した。金大中、盧武鉉両政権が行った協力・交流事業を北に対する「ポジュギ(퍼주기)」(「ひたすら一方的にあげること」の意)と批判し、金剛山観光や開城工業地区など一連の事業の進展にブレーキをかけた。
 

李明博政権発足1年に際して記者会見を開き、同政権の対北政策の失敗を糾弾する南朝鮮市民団体の代表(2月25日) [写真=聯合ニュース]

 北南当局間の関係が断絶し内外の批判に直面すると、李明博政権は対北政策である「非核・開放・3000」に「相生と共栄」というスローガンを被せたが、北の「先・核放棄」と「体制転換」を追求する目標は変えなかった。

 その後、李明博大統領は「自由民主主義体制下での統一が目標」だと公言。軍部も「北の急変事態」と「先制攻撃」論を主張、北に対する敵意をあらわにし、臨戦態勢を強化した。

 昨年来、北側は李政権に対して、6.15、10.4両宣言の尊重と履行を促してきた。しかし、李政権は北側のたび重なる警告を無視し、合意の履行を拒否する政策を選択した。北側は朝鮮半島の軍事的対立の構図を直視し、不意の衝突に万全を期す自衛措置をとらざるをえなくなった。

 1月17日、朝鮮人民軍総参謀部スポークスマンは声明を発表、李政権が民族の和解と協力を否定し対決を選択したと断定し、「やむをえず全面対決態勢に入ることになる」と宣言した。軍部が前面に出て対南政策に関する立場を表明するのは、6.15共同宣言以後なかったことだ。祖国平和統一委員会も1月30日の声明を通じて、北南間の政治・軍事的な対決状態を解消するために交わされた全ての合意が無効になったと指摘した。

 Q 李政権の対北政策の問題点は。

 A 北側は、李政権が首脳合意にある「わが民族同士」の理念を否定し、外国依存の政策路線を正当化したことを非難している。李大統領は「北」対「米・南」の構図に基づいて政策を進めているが、「わが民族同士」の否定と外国依存の政策は平和、安保問題において外交的な主導権を自ら放棄する結果を招いた。

 「米・南」結託と北南対立が情勢を好転させることはない。近年、朝鮮半島情勢が緊張緩和の方向に向かうきっかけは、例外なく「民族団結」の流れによってもたらされた。北南首脳会談と6.15共同宣言が採択された2000年、朝米両国が発表した共同コミュニケはその代表例だ。北側は07年にも、任期残りわずかとなった盧武鉉大統領の平壌訪問を受け入れ、10.4宣言を発表した。

 Q 南の保守政権は米国との合同軍事演習であるキー・リゾルブとフォール・イーグル(3月9〜20日)を強行するなど、朝鮮半島の軍事的緊張を高めているが。

 A 南の軍部は「北の急変事態」について公言し、武力衝突の口実ときっかけ作りに躍起となっている。軍関係者による好戦的な妄言はエスカレートする一方だ。昨年3月、金泰栄合同参謀本部議長による北の核施設「先制打撃」発言を皮切りに、李相憙国防長官の「北は最大の主敵」発言(7月)など枚挙にいとまがない。国防長官は今年初めにも、1999年と2002年に軍事衝突が起こっている西海上の「北方限界線(NLL)」防衛を担当する艦隊を訪れ、戦争準備をあおった。

 国防長官は北側の人工衛星発射準備についても「ミサイル発射準備」だと断定し、「即時対応」と「迎撃」の必要性を主張した。

 軍当局者による強硬発言が相次ぐ中で強行されたキー・リゾルブ、フォール・イーグルが「年次的な訓練」だとする李政権の説明はき弁にすぎない。

 Q 李政権は「対話の再開」と「合意の尊重」についてアピールしているが、北南関係は一向に好転する兆しが見えない。

 A 政策的な裏づけのない「対話再開」の呼びかけは北南関係の現状を打開するうえで何の効果もない。聞こえのいい呼びかけとは裏腹に、反北対決政策は何ら変更されていない。交流・協力事業の再開は妨げられ、民間の統一運動に対する弾圧が続いている。

 反北対決政策によって当局間の対話が断絶し、内外の非難に直面した李明博大統領は「対話の再開」と「合意の尊重」に言及せざるをえなくなった。昨年7月11日の国会演説で初めて6.15、10.4両宣言に言及し、「過去の南北間の合意を履行する方法を北側と真摯に協議する用意」があると述べた。しかし二つの首脳合意をそれ以前の合意と同格で扱い、その意義を矮小化しようとする意図は明白だった。

 北側が求めた「6.15、10.4宣言の尊重」とは、宣言の真髄である「わが民族同士」の理念を実践することだ。民族共助より外国勢力追従を優先し、関係悪化の責任を北側に転嫁する李政権の態度は「対話再開」「合意尊重」の掛け声と矛盾している。

 Q 自らの権力基盤を維持する手段として、反北と進歩運動弾圧の姿勢を強めているという指摘もあるが。

 A 李政権が北南関係改善を求める世論を無視し、北南間に不信と対決を醸成する目的のひとつとして、政権の支持基盤である保守勢力の結集という側面があると指摘されている。金大中、盧武鉉両政権を「左派政権」と呼び全面否定したのは、保守勢力の支持に立脚せざるをえない現政権の限界を示している。大統領をはじめとする政権の要人が北側を刺激する言動を繰り返し、「脱北者団体」などによる反北宣伝ビラ散布を黙認しているのも、保守勢力の意向に沿ったものだ。

 内政、外交で失策続きにもかかわらず、政権支持率が「一定水準」を保っているのは、反北対決路線をあからさまに推し進めた結果、「政治的な対立構図が先鋭化し、保守傾向が強い特定の階層が結集したから」との分析もある。

 また、民間統一運動団体に対する弾圧も強まっている。とりわけ、6.15共同宣言を支持し、その実践を主張する団体に「国家保安法」に基づく「利敵団体」のレッテルを貼り、関係者を逮捕した事態は、冷戦時代の統治スタイルを踏襲する現政権の反統一的な性格を如実に表している。

 Q 昨年来、南朝鮮では、北が南を相手にせず、米国との関係改善を優先的に追求しているという「通米封南」に対する懸念が高まっている。

 A 「通米封南」の状況は、朝鮮半島をめぐる国際政治の力学を理解できず、旧態依然とした保守論理に執着した李明博政権が自ら招いたものだ。

 大統領が自身の統治哲学として掲げた「実用主義」が対米関係においても「利益」をもたらしたとは言いがたい。その傾向はオバマ政権発足を機に強まりつつある。米国との「同盟強化」を主張する李政権だが、対北強硬的な言動を繰り返すばかりで、平和実現のための政策を積極的に展開してこなかった。

 敵対関係の解消は相互作用のプロセスだが、李明博政権は対話の相手である北側に対して「一方的な変化」を要求してきた。非核化プロセスの進展など東北アジアの国際関係が急変する中、過去の政策を否定することで変化を拒み、「10年前と同じ姿」に固執する政権が窮地に立たされるだろうことは、想像に難くない。(李相英記者)

[朝鮮新報 2009.4.1]