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朝鮮の論調 09年 3月

 3月9〜20日まで米・南軍による合同軍事演習が行われた。約2万6千人におよぶ動員兵力、12日間という期間、最先端技術を駆使した兵器使用―そのいずれも最大規模のものだった。また、朝鮮の人工衛星発射通告を巡って日本や南朝鮮などが相次いで過剰反応を起こした。一方、朝鮮は8日に最高人民会議代議員選挙を行い、全国が祝賀ムード一色に染まった。

−対米 9.19の否定は6者の破たん

 オバマ新政権誕生後に初めて行われた米・南合同軍事演習の規模は、過去最大のものだった。

 李明博政権と「全面対決態勢に突入する」と宣言した朝鮮人民軍総参謀部スポークスマン声明(1月17日)や祖国平和統一委員会の声明(1月30日)を受けての敢行であり、朝鮮半島情勢は一気に緊張状態に置かれた。

 労働新聞や民主朝鮮をはじめとする朝鮮国内各紙はそろって「朝鮮に対する軍事的威嚇であり、朝鮮半島で新たな戦争を勃発させるための危険な火遊び」「徹頭徹尾、朝鮮を先制攻撃しようとするための核戦争演習」だと強く非難する内容の記事を連日のように掲載した。

 9日には朝鮮人民軍最高司令部と総参謀部が相次いで報道と声明を発表し、合同軍事演習に対処して万端の戦闘準備を整えることや人工衛星迎撃には軍事的対応で応じる立場など、強い姿勢を表明した。

 朝鮮外務省スポークスマンは24日、人工衛星発射に関する国連安保理の動きを非難する談話を発表した。

 談話は、人工衛星の打ち上げを「脅威」とみなす一連の動きは「6者会談9.19共同声明の『相互尊重と平等の精神』に反する」と指摘した。

 また、安保理で人工衛星発射を問題視した場合、「9.19共同声明を否定することになり、同声明が破棄されれば6者会談はもはや存在する基礎も意義も失うことになる」と警告した。

−対日 まず過去清算の意志から示せ

 今年は3.1人民蜂起90周年にあたる。労働新聞は1日付に掲載した記事の中で日本が過去に犯した植民地支配の罪過を一つ一つ羅列しながら、「60余年が過ぎた今も日本反動の侵略的本性と野望は少しも変化していない」と指摘。最近は朝鮮再侵略企図を露骨に表すようになっていると厳しく非難した。

 また「反人倫的犯罪には時効がない」ことを明確にし、日本の歴史的罪悪を総決算する立場をあらためて強調した。

 またこれと関連し、5日付労働新聞に掲載された記事では、「朝・日関係改善の根本問題は過去清算に基づく信頼回復」と述べ、朝・日平壌宣言には朝鮮に対する過去清算を公約する旨の内容が盛り込まれていることを指摘し、「日本が両国間の関係を改善しようとするならば、まずは過去清算の意志から明らかにせねばならない」と強調した。

 また「海賊駆除」を目的としたソマリア沖への自衛隊派遣と人工衛星迎撃策動に関連し、日本の軍事大国化を懸念する論調が多く配信された。

 25日付の民主朝鮮は、ソマリア沖への自衛隊派遣を「軍事的な海外進出」と断定する記事を掲載し、「日本の最大関心事は、軍国主義海外侵略の活路を開いていくことにある」と厳しく糾弾した。

 人工衛星発射問題では24日、外務省スポークスマンが「朝鮮に対して最も大きな罪を犯した日本が反朝鮮キャンペーンの先頭に立っている」と指摘した。

−対南 李政権の登場で北南関係悪化

 1日、労働新聞は社説を掲載した。社説は、「自主は絶対に譲歩できない民族問題解決の根本原則」であることをあらためて強調し、李明博政権の売国反逆政治、反朝鮮対決策動を終焉させるのは、民族の自主権実現のための必須的要求であると指摘した。

 労働新聞も10日付に「露骨化する北南関係遮断策動」と題する記事を掲載し、「李明博政権はわれわれと対話する意志も協力する意思もまったくない」と断じた。

 民主朝鮮は衛星発射で騒ぐ南朝鮮当局を非難する記事を6日付に掲載した。

 記事は、「衛星発射は朝鮮の自主的権利であり、誰も妨げることはできない」と指摘したうえで、「少しでも民族の魂があるのならば、同族の衛星発射に対して、支持し、歓迎することが望ましい」と付け加えた。

 また民主朝鮮は17日付に「嘘は誰にも通じない」とする記事を掲載し、「周知の通り、朝鮮半島の情勢は李明博が執権する以前、今のように悪化してはいなかった」と述べた。また、「李明博が同族対決策動にしがみつかなければ北南関係は引き続き発展したであろう」とも強調した。

 25日、祖国戦線が「すべての朝鮮民族に告ぐ」と題する長文を発表し、反李明博政権闘争への総決起を呼びかけた。文は、「いま、朝鮮半島情勢は南朝鮮保守当局の極端な反朝鮮対決策動により、最悪の危機に陥っている」と前置きし、とくに南朝鮮人民にむけて「反李明博政権闘争の気勢を少しでも沈めたら、自主と民主の道から5年という貴重な時間をそっくりそのまま失うことになる」と強調した。

 今回、日本政府とマスコミが狂ったように展開した一連の「テポドン」騒動は、軍事大国化への地ならしにほかならない。

 彼らは口をそろえてありもしない「北朝鮮の脅威」を大合唱し、国民の恐怖心を煽った。政治家が平気で「迎撃」を口にし、「PAC3」を搭載した自衛隊の運搬車両が堂々と高速道路を走り、数隻のイージス艦が自由に海を航行した。

 侵略戦争を彷彿とさせるこの光景を目の当たりにしても、昨今の日本国民は「仕方がない」と思うようになっている。自衛隊の出動があたかも「正当性」を帯びているかのような錯覚に陥っているのだ。

 「北朝鮮の脅威」を刷込まされた日本国民の脳からは過去の侵略戦争に対する記憶が薄れ始めている。自衛隊の「軍事行動」を許容する風潮が世相に芽生えつつある。日本の核保有や先制攻撃論の台頭を受け入れるための下地作りが着々と進行しているのだ。

 日本は毎年、5兆円規模の莫大な防衛予算を計上している。イージス艦に代表される最新鋭軍備の大量保持は論を待たず、百発以上を大気圏外に発射した「ロケット技術」はすぐにでも軍事転用が可能だ。核兵器製造を可能にするプルトニウムもたっぷりある。

 アジア地域における「脅威」とは、まさしく日本なのである。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2009.4.17]