そこが知りたいQ&A−開城工業地区の存続が騒がれているが |
李政権の対応次第、北は特恵を無効に 最近、北南和解協力の象徴として発展してきた開城工業地区事業の様相に変化が見られる。北は、「わが民族同士」の理念に従って南に付与してきた特恵措置を無効とすると宣言した。一連の流れをQ&Aでまとめた。
Q まず、開城工業地区発足からの流れを説明してほしい。
A 北と南は6.15共同宣言発表直後の2000年8月に同地区の開発に合意。各種法の制定と細部の合意を経て、03年6月に1段階の建設に着手した。04年末には同地区に入居した企業が生産を開始した。 現在、入居している南の企業は100を超える。そして4万人近い北の労働者が働いている。 北は、開城地区が軍事境界線に隣接する要衝の地であるが、「わが民族同士」の理念に従って民族の共同の利益と繁栄のため同地区を提供した。また、土地賃貸料、労働者賃金、各種税金など、さまざまな経済的特恵を南側に付与した。賃金を例にあげると、社会保険料などを含めても労働者1人あたり月平均70〜75ドルで、中国やベトナムなどに比べとても低く設定されている。中国・青島に比べると4分の1程度という評価もある。 このほか、ソウルから近い地理的条件や同じ言語による意思疎通が可能なことなどの魅力があり、進出を希望する南企業は増えていた。 Q なぜ北は特恵を再検討することになったのか。 A 北は軍事要衝地を明け渡し民族共栄のため努力してきた。一方、李明博政権発足以来、南は国防長官が反北姿勢をあらわにする発言を繰り返し、北侵戦争演習を強行するなど軍事的挑発を行った。また、北との協力、交流に否定的な立場を取りながら、これまでの北南間の合意を反故にしてきた。 開城工業地区に関する合意も履行していない。2段階開発はまったくの手つかずの状態で、北側労働力の安定的供給のための寄宿舎建設もしていない。また、通行、通関、通信の「3通」合意による資材供給などの義務を怠っている。さらに、開城工業地区とその周辺で反北ビラをばらまくなど、和解協力の象徴の場を対決の場に変えた。最近は、現代峨山職員を名乗る人物が同地区で北に反対する敵対行為を行った。 ついに北は、「現南側当局は、北南共同宣言と『わが民族同士』の理念を全面否定し、極端な対決政策で北南関係を破局へと追い込むことにより、開城工業地区事業の基礎を完全に崩した」(朝鮮中央特区開発指導総局が南側に送った5月15日付通知文)という認識に至り、「変化した情勢と現実に沿って」(同上)地区を運営する判断を下した。そして低く設定された賃金などの特恵措置を検討することになった。 Q 北は特恵の無効を一方的に発表したというが。 A 当初北は、すべての当局間対話が中断されている状況にもかかわらず、この問題を南当局と協議しようとした。実際に4月21日契約改定問題を協議する接触の場を設けた。開城工業地区は北の主権が行使される地域であるので、北の法規と規定、基準を改正して南側に通知し、一方的に執行することもできたが、互いの意見を交わせる機会を提供したのだ。 しかし南はこの接触さえも対決に導いた。契約改定と何ら関係のない「現代峨山職員問題」の解決を接触の前提に掲げた。4月21日の接触以来20余日間、北が再三提起したにもかかわらず接触に応じなかった。 こうした状況で北は、協議を通じて契約改定問題を論議しようとした従来の立場を変えて、南に一方的に特恵措置の無効と関連法、規定を改定し施行する手続きに着手すると通知した。 通知文は、「同族対決を追求する者にいつまでも好意を施すことはできない」「6.15を否定する者らに、6.15の恩恵を与えられない」と指摘した。 Q 今後の展望は。 A 北南接触でのこのような不誠実な南の対応は、李政権が意図的に開城工業地区を閉鎖へと追い込んでいるのではないか、という疑心を抱かせるものだ。民族共栄の北南協力事業を、北に対する一方的な支援だとしながら反対してきた現政権だけになおさらだ。 工業地区が閉鎖された場合、大きな被害を受けるのは開城に進出した南の企業だ。被害額が1兆3600億ウォン(約1千億円)に達するという分析(南の国会立法調査処報告書)もある。 それだけに、南の企業家らは南当局に猛抗議している。5月19日に行われた開城工業地区討論会の参加者らは、「(南)政府は経済活動に専念できる環境もつくれないのか」「もし閉鎖されて出ろと言われても、全財産を投資したのに出られない」などという声があがった。 今後は、北側が改正した法や規定などを南側に通知することになるだろう。 開城工業地区の運営は、北も望んでいるし、南の企業も望んでいる。同地区の存続は、李政権の対応にかかっているといえる。(姜イルク記者) [朝鮮新報 2009.5.29] |