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南朝鮮のPSI全面参加 北南対決先鋭化、緊張高まる

「戦争の危険ライン」超える

 南朝鮮当局は5月26日、大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への全面参加を公式に発表した。南側のPSI全面参加を宣戦布告と見なし「断固たる対応措置を講じる」としてきた北側は同27日、朝鮮人民軍板門店代表部声明と祖国平和統一委員会(祖平統)声明を相次いで発表、朝鮮半島情勢が「戦争の危険ラインを突破した」との認識を示した。PSIへの全面参加が朝鮮戦争停戦協定に対する蹂躙行為にあたると指摘し「戦時に相応する実際的な行動措置」(祖平統声明)をとるというのが両声明の骨子だ。李明博政権のPSI全面参加決定は北南間の対決状態をよりいっそう先鋭化させ、情勢を戦争間際まで追い込んでいる。

核実験口実に

PSI全面参加には、南朝鮮の市民団体からも批判の声が上がっている。(写真は外交通商部庁舎前でのデモ) [写真=統一ニュース]

 PSIとは、核兵器や生物化学兵器などの大量破壊兵器およびその関連物資の拡散防止を目的に2003年、米国の主導で発足した国際協力体制のことをいう。活動の中心は、大量破壊兵器の積載が疑われる船舶および航空機の移動の遮断だ。

 南朝鮮はPSIに対して部分的な関与の立場をとってきた。

 しかし、対北対決と「韓米同盟」強化を掲げる李明博政権になって全面参加を検討する方向へと踏み出した。

 南側のPSI全面参加は北南間の政治、軍事的対立をいっそう激化させている。とくに、朝鮮西海上での軍事的衝突の危険性が高まっている。

 北側はPSIを「米国とその追従勢力が自らの気に障る国を制裁、圧殺するために作り出した侵略の道具」(3月30日、祖平統スポークスマン談話)と、一貫して問題視してきた。

 先鋭な軍事的対峙関係による武力衝突の危険が恒常的に存在している朝鮮半島では、PSIへの全面参加自体が戦争の導火線に火をつける行為になる。

 5月27日の朝鮮人民軍板門店代表部声明は、停戦協定を無視し交戦相手である朝鮮に対して軍事的圧力政策をとっている米国と、それに追従する李明博政権によって、朝鮮半島情勢は「いつ戦争がぼっ発するかわからない極限状況に至っている」と指摘した。同声明は緊張を激化させる敵対勢力の策動の代表例として南朝鮮のPSI全面参加を挙げた。

 朝鮮は人工衛星「光明星2号」の打ち上げ(4月5日)を問題視した国連安全保障理事会の議長声明採択(同月14日)を非難し、6者会談不参加、自衛的核抑止力強化など一連の対応措置について明らかにした。 5月25日には2006年10月以来となる2回目の地下核実験を行った。

 北側の核実験成功の翌日、南朝鮮外交通商部の文太暎スポークスマンは記者会見で、「大量破壊兵器およびミサイルの拡散が世界の平和と安全保障に及ぼす深刻な脅威に対処するためにPSI原則を承認することにした」と、全面参加を公式発表するに至った。

停戦協定否定行為

 北側は対決政策を強行する李明博政権への対抗策として、昨年12月に軍事境界線を通じた陸路通行遮断などの「重大措置」を南側に通告したのに続き、今年1月17日には朝鮮人民軍総参謀部声明を通じて南側との「全面対決態勢」に入ることを宣言した。

 同月30日には祖平統声明を発表し、北南間の政治、軍事的対立状態の解消に関するすべての合意事項の無効化と、1991年に採択された北南合意書および付属合意書に明記された西海軍事境界線関連諸条項の破棄を宣言した。

 このような状況で南朝鮮がPSI全面参加を強行することは、朝鮮半島周辺海域での軍事的緊張をさらに高める意図的な挑発行為だといわざるをえない。

 朝鮮人民軍板門店代表部声明は、南朝鮮のPSI全面参加を「停戦協定に対する乱暴な蹂躙行為であり明白な否定」だと断定した。

 また、北側もこれ以上停戦協定に拘束されないという立場を明確にした。

 とくに、周辺海域での自国船舶に対する取り締り、捜索などの敵対行為に「即時的かつ強力な軍事的攻撃」で対応することを宣言した。

 南朝鮮のPSI全面参加を機に、西海海上軍事境界線の西北、北側領海に点在する米軍管轄下の5つの島をめぐる対決の構図がいっそう鮮明になっている。

 以前、北側は5島の海域の船舶通航に関する規定を明らかにしたことがある。朝鮮人民軍海軍司令部が2000年3月に発表した「西海5島通航秩序」がそれだ。

 これは、米国が一方的に設定した「北方限界線」(NLL)の無効化と新たな西海軍事境界線の設定を宣言した朝鮮人民軍総参謀部重大報道(1999年9月)の後続措置として発表された。

 「西海5島通航秩序」は5島を3つの区域に分け、当該の区域で軍艦艇と民間船舶が北側に敵対的な通航をしない場合に限って通航の自由を有すると明記している。

 今年1月、朝鮮人民軍総参謀部は「朝鮮西海には不法な『北方限界線』ではなく、唯一われわれが設定した海上軍事境界線だけが存在することになるだろう」と指摘した。

 今回発表された板門店代表部声明は、「5島の周辺海域で行動する米軍と南朝鮮海軍艦船および一般船舶の安全な航海を保障できなくなる」と強調した。(李相英記者)

[朝鮮新報 2009.6.3]