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朝鮮の論調 09年 5月

 5月25日、朝鮮は示唆した通り2回目の地下核実験を行い、成功させた。これを受けて国連安保理は新たな「決議採択」をうんぬんしながら上を下への大騒動。加えて南朝鮮は26日に大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への全面参加を正式に決定した。朝鮮人民軍板門店代表部と祖平統は南朝鮮のこの動きを厳しく非難。「(PSIへの全面参加は)宣戦布告に等しい」とする内容の声明を相次いで発表し、朝鮮半島情勢は緊張に包まれた。

−対米 前政権と少しも変わらない

 朝鮮外務省スポークスマンは5月4日、「(オバマ政権は)『変化』と『多国間協力外交』を主張しているが、自国の意にそぐわない国を力で圧殺しようと狂奔した前政権と少しも変わるところがない」と厳しく非難した。

 これは発足から4カ月のオバマ政権に対して下した公式評価といえる。

 また、米国の核武装に対する批判も多くみられた。

 労働新聞27日付は「世界で最初に核兵器を使用し、人類に核の惨禍をもたらしたのも米国であり、国際的に最も多い核兵器とミサイルを保有しているのも米国である」と指摘したうえで、「南朝鮮とその周辺、本土にある米国の核兵器とミサイルは朝鮮を射程圏内に置いている。(中略)核・ミサイルの脅威は米国から朝鮮に及ぼされており、朝鮮半島で増大している核戦争の危険の禍根はまさしく米国である」ことをあらためて強調した。

 朝鮮外務省スポークスマンは29日に談話を発表した。朝鮮の平和的人工衛星発射と自衛的措置の核実験を問題視した国連を非難し、「今回の核実験は国連の行為に対する自衛的措置の一環」「宇宙条約に違反し、主権国家の自主権を侵害した安保理の罪に対する謝罪および全ての決議と決定の撤回を求める」「安保理がさらなる挑発を仕掛けてくる場合、それに対処するさらなる自衛的措置が不可避になる」−という3点の立場を明らかにした。

−対日 いつでも「核武装」可能な状態

 民主朝鮮5日付は安倍元首相に代表される日本の保守勢力が、朝鮮の人工衛星発射と自衛的措置としての核実験を受けて、集団的自衛権行使および敵基地攻撃に言及していることに警鐘を鳴らした。また朝鮮中央通信社は8日、麻生政権主催の「新しい防衛計画大綱を策定」するための歓談会で、先制攻撃を仮想した「敵基地攻撃能力保有」に対する「検討」問題が上程されたことをうけ、「これは露骨な朝鮮再侵戦争論である」と厳しく糾弾した。

 日本国内で燻る「核武装論」に言及した民主朝鮮は13日付で、「日本の反動層は、すでに昔から核武装化を軍事大国化の核心事項として提起し、野心的な核開発政策を強行してきた」と指摘、「朝鮮が核抑止力を保有する以前から核武装化をすすめてきた」ことを明らかにするとともに、「その結果、日本はこんにち、核兵器製造法を完全に把握したことをはじめ、核兵器製作に必要な物質、技術的土台を整えた状態に至っている」と非難した。

 同紙は14日付でも「北朝鮮問題への協力」を要請する「物乞い外交」を披露した麻生首相の欧州行脚を批判した。その中で「麻生の曾祖父が創業主になっている麻生炭鉱は、第2次大戦期、朝鮮人1万2千余人を拉致し、奴隷労働を強要した犯罪の歴史を持っている」と指摘した。

−対南 戦時に相応する行動措置とる

 朝鮮の人工衛星発射を巡る国連安保理の一連の騒動を利用し、南朝鮮当局はPSIへの全面参加構想を匂わせてきた。朝鮮はこの動きに対して再三再四、「軽挙妄動するな」と警告。しかし、地下核実験が行われた翌日の26日、南朝鮮は正式にPSIへの全面参加を発表した。

 満を持したかのようなこの措置に、朝鮮は猛反発。朝鮮人民軍板門店代表部と祖平統が相次いで声明を発表した。

 声明は、「宣戦布告とみなし、敵対行為には即時、強力な軍事的攻撃で対応する」「米国が停戦協定調印の当事者としての責任まで放棄して南朝鮮をPSIに引き入れた状況で、これ以上停戦協定の拘束を受けない」(以上板門店代表部)、「戦時に相応する実質的な行動措置で対応する」(祖平統)などと言明し、南当局への非難を強めた。

 朝日新聞土曜日付夕刊に「be evening土曜スタディー」という企画が掲載されている。あるとき、「時事チェック」という欄に「北朝鮮のミサイル」という設問が載った。

 「ステップ1」という箇所には「北朝鮮は4月、『〈 〉を積んだロケット』だとして、長距離弾道ミサイル〈 〉またはその改良型とみられる機体を発射した。政府は自衛隊法に基づく〈 〉命令を初めて発令、地対空誘導弾〈 〉を配備した。国連〈 〉理事会は発射を非難する〈 〉を採択した」とあった。

 「〈 〉」の中にどんな言葉が入るのか。解答欄には「人工衛星、テポドン2、弾道ミサイル破壊措置、パトリオット3、安全保障、議長声明」とある。

 右は、一例にすぎない。いま、日本のマスコミは「北朝鮮の脅威」を国民の脳裏に刷り込むためにこぞって狂奔し、社会情勢を不安一色に染め上げている。他方では、麻生首相をはじめとする多くの政治家が、ここぞとばかりに「敵基地攻撃能力」や「核武装論」を声高に叫んでいる。

 政府とメディアが結託して軍事衝突の恐怖を煽り、それを利用した憲法9条の改悪、自衛隊の正規軍化、最新兵器の実戦配備、徴兵制の復活…が再び実現すれば、どうなるのか。

 その結末を、日本はすでに知っているはずだが。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2009.6.12]