戦争煽る安保理の強権発動 停戦の破棄 「戦時対応」を触発 |
【平壌発=金志永記者】交戦状態にある朝米の政治軍事対立の構図がさらに深まっている。朝鮮の人工衛星打ち上げを問題視する議長声明を発表(4月14日)した国連安保理が今度は、不当な自主権侵害に対抗して朝鮮が断行した第2次核実験を非難する制裁決議を採択(6月13日)した。国連による制裁と朝鮮の自衛的措置が連鎖反応を起こす場合、一触即発の危機が起こりかねない事態に陥っている。
追加制裁という悪循環
米国とその追従国が朝鮮の自衛的措置を「挑発」と見なしながら対応措置を取るかぎり、段階的に緊張が激化する悪循環を解消することはできない。 朝鮮は国連安保理の措置を挑発だと見なしている。 5月末の時点から朝鮮は、国連安保理が「これ以上の挑発を行う場合、それに対処したわれわれのさらなる自衛的措置が避けられなくなる」(外務省スポークスマン談話)と警鐘を鳴らした。そして自衛的措置には、核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験が含まれると明らかにした。 朝鮮はすでに公表したとおりの行動を取っていくだろう。今回採択された「決議1874」を非難した外務省声明も▼新たに抽出されるプルトニウムの武器化▼ウラン濃縮作業の着手▼封鎖措置に対する軍事的対応について言明している。 問題が複雑になった原因は、国連安保理が朝鮮の人工衛星発射を2006年10月の「決議1718」に対する違反行為だとしたことにある。朝鮮は米国の核の脅威に対処した自国の核実験を非難した3年前の決議も認めていない。その後再開された6者会談で朝鮮は、「国連による制裁を含むすべての制裁の解除」が非核化問題を討議する条件として提示した。会談では一連の合意がなされ、行動措置も講じられたが、米国とその追従国はこの間、朝鮮の主張を黙殺してきた。 国連安保理による議長声明は結局、非核化が実現しようがしまいが、ひとたび採択された決議は有効であり、したがって朝鮮が人工衛星を打ち上げる権利などは永遠に認められないという大国のごう慢と専横の証拠でもある。これに対する朝鮮の反発と対抗措置を、米国の関心を引くための「瀬戸際戦術」と見なして対応したのは、制裁を推し進めようとする勢力の失策だった。 「追加制裁の矛盾」に陥った米国とその追従国は、容易にそこから脱け出せなくなっている。一方、朝鮮は、国連による制裁を宣戦布告と見なしている。 再確認された「交戦関係」 米国とその追従国は「6者会談の再開」を強調しながら時間を浪費しているが、朝鮮は従来と異なる次元で国際情勢を判断している。 50数年前に国連安保理は、「国連軍司令部」を表に立てて朝鮮戦争に介入した。停戦協定によって戦闘行為は一時中断されたが、最近相次いで発動される制裁措置は、国連安保理による敵対行為であり、それは停戦協定の破棄を意味する。法的見地からも、朝鮮半島は戦争状態に戻りつつあるというのが朝鮮側の観点だ。 こうして見れば、朝鮮が自衛的措置に含まれると明らかにした核実験や弾道ミサイル発射実験も戦時に相応した行動、国防のための措置だということがわかる。米国を対話に引き出すための駆け引きの手段ではない。 朝鮮は、停戦協定の直接的当事者である米国を、国連の名前を盗用した制裁騒動の張本人だと見ている。一方のオバマ政権は、1950年代に始まった戦争を終結できていない当事者間の対立が武力衝突に発展するかもしれないという危機の本質を正確に把握できていないように見える。空虚な外交発言だけを繰り返しているだけである。 朝鮮は、今の世の中では、他国の自主権侵害を自分のことのように心配する国もなく、反対の声をともに上げる国もないことをこの機会にはっきりと確認した。「われわれは国際的な支援があろうがなかろうが、自らが選択した自主の道を最後まで歩む」(労働新聞)と主張する国には、外部の「影響力」など作用しない。 朝鮮の「意志戦」 朝鮮は、こんにちの朝米対決を「意志戦」と位置づけている。労働新聞9日付は「意志戦」を「決死の覚悟で敵と果敢に戦う強硬な攻撃戦であり、100回倒れても100回起き上がって闘う不屈の闘志戦であり、帝国主義と決着をみるまで最後まで闘う頑強な持久戦」と説いている。 2012年までに強盛大国の大門を開くと宣言した朝鮮が、米国との「意志戦」でも決着を見るまでたたかうことをすでに決断しているのであれば、朝米関係で妥協と譲歩はしないだろう。 こんにちの緊張激化にブレーキをかけなければならないのは、その原因を提供した米国とその追従国だ。米国がアメとムチという旧態依然たる二面戦術に固執するかぎり、事態は悪化する一方だろう。 オバマ政権は一時的な危機回避策ではなく、朝米交戦関係の終息という本質問題に外交政策の焦点を合わせるべきだろう。 [朝鮮新報 2009.6.17] |