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〈危機幻想の本質を問う-上-〉 馬脚露した巨大軍需産業・三菱重工

日韓首脳の犯罪的なたわむれ

ミサイル防衛(MD)システムの中心となる地対空誘導弾パトリオット(写真は南朝鮮軍配備のパトリオット) [写真=聯合ニュース]

 6月28日の東京の首相官邸。2人がそれぞれの国旗を背に握手をしている。笑顔だ。しかし寂寥感が。ホストの麻生太郎首相(内閣)に対する支持率は10%台へ下落し、ゲストの李明博韓国大統領に対するそれもまた 20%台の前半に張りつき、不支持率はともに60%台の後半。このひどく孤立している2人の笑顔に寂寥を混濁させた握手≠フ光景は正視にたえない。

 彼らはその写真撮影に先立ち、1時間ほど「北朝鮮への対処」に費やして、朝鮮民主主義人民共和国を除く日韓米中ロの5者協議を進めていこうなどと合意した。この話のなかで麻生首相が「国際社会が北朝鮮を核保有国と認めることは断じてない」と強調し、李大統領もそれにうなずいて「北に対し国際社会に出てくるほうが核保有より大事だと悟らせる」と発言、2人は北のほうに向かいいわば肩をそびやかし合ったという。

 それにしても、あらためて問いたい、彼らが呼吸を整えうやうやしく掲げている「国際社会」とは何か。この2人や、彼らにはとても貴重なものらしい「国際社会」が「北は核保有国だ」と、認めようと認めまいとすでに朝鮮が核保有国であることに、なんの変化もない。国家運営の責任者たちの「いない、いない、バァッ」ごっこはすでに犯罪的だとしか言いようがない。

 あまつさえ見落とすことができないのは彼らの、とてもひどい危機幻想とたわむれ続けている姿である。

防衛省の演出

4月5日に行われた朝鮮の人工衛星「光明星2号」の打ち上げ [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 それを象徴的に表現したのが、4月5日の朝鮮による人工衛星の打ち上げのさいにみせた日本列島の右往左往だ。たとえば防衛省は、ほんらい極秘であってしかるべきイージス艦の出港や航路などを、また地対空誘導弾PAC3の配備の経緯などを公開した。テレビを使いこれらの一部始終を放映させたりした。

 私たちはあちらではなくこちらを、まず自分を、しっかりと凝視すべきなのだ。

 つまり防衛省は見物客を集めて、ほどなく垂れ流し金額≠ェ兆円単位にのぼるMD(ミサイル防衛)システムを国民の目に焼きつけなじませようと試みたわけだが、そんな挙動こそが「この危機」の本質を、言い換えると、いかに「この危機」がもぬけのカラなのかを露呈している。

 しかも彼らは、今度は朝鮮の5月25日の核実験にひときわ勇気づけられて敵基地の先制攻撃論や核保有論へ突進する。だが、攻撃するにしてもいったいどこを攻撃するというのか。200発以上と指摘される北朝鮮のミサイルがすべて、日本からの攻撃をジッと1カ所に留まり待っていてくれるというのか。そもそも日本列島が血まみれになることを認識できないのか。さらに、核保有論に至っては完全に妄想でしかない。

 そこでこんな疑問が湧く。なぜそのようなたあいもない幻想もしくは妄想に溺れ続けるのか。いや、より正確に言えば「溺れたがる」のか。この疑問に4月3日の出来事が答えてくれる。

MD「センサー研究」の開始

 その日、麻生首相が本部長をつとめる宇宙開発戦略本部の専門調査会が宇宙基本計画の骨子案を提示した。彼らはここに情報収集衛星(スパイ衛星)の拡充とともに、MDシステムの重要な機能である早期警戒衛星(ミサイル監視衛星)のためのセンサー研究の開始などを盛り込んでいる。4月3日といえば朝鮮による人工衛星発射の2日前だ。ようするに麻生首相たちは、朝鮮の人工衛星の発射を待ちきれず=Aつい馬脚を 露わしてしまったようなのである。

 日本政府はきっとあのときと同じ手口を使おうとしているのだ。あのときとは、98年である。朝鮮が人工衛星(光明星1号)を打ち上げるや日本は欣喜雀躍して情報収集衛星の導入へ走り、09年度までに約7000億円(予算額)を、まさに成果ゼロのまま注ぎ込み続け、たとえば同開発からまもなく三菱グループ企業の経営を好転させてあげている。

 では、早期警戒衛星の開発にはとりあえずどれくらい投入しなければならないのか。少なくとも数千億円。この巨額資金は、当然、両手を広げ待っている三菱などの軍需企業群へ流れる。

 今日のひどく危険な状況の真因を知るためもうひとつ別の動きをみておきたい。

 5月13日。東京大手町の経団連会館の2階ホールで安全保障シンポジウムが開催された。浜田靖一防衛相があいさつに立ち、米国のコーエン元国防長官や西山淳一三菱重工業航空宇宙事業本部顧問、柳井俊二三菱電機取締役(元駐米大使)、ボーイングジャパン社長、レイセオン副社長らが演壇にずらりと並び、彼らは300人ほどの軍需企業やマスコミの関係者たちに向かって「集団的自衛権の行使」「日本列島を離れた地における自衛隊の戦闘参加」「日本の軍事費の増加」「武器輸出三原則の廃棄」などを口々に叫んだのだった。

 この主催者はだれか。NPO法人ネットジャーナリスト協会である。でも同法人はレッテルでしかない。レッテルを剥ぐ。あれもこれも取り仕切っていたのは、危機幻想と軍拡の合唱劇のカゲにひそんでいたのは日本最大の軍需企業、三菱重工業である。(野田 峯雄、ジャーナリスト)

[朝鮮新報 2009.7.6]