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朝鮮の論調 09年 6月

 6月13日、国連安保理は朝鮮に対する「制裁決議」を採択した。朝鮮が自衛的措置の一環として行った2回目の地下核実験を「非難」する内容だ。朝鮮外務省は同日、声明を発表。「制裁」には報復で、「対決」には全面対決で立ち向かうと厳しく糾弾した。一方、17日にオバマ大統領は訪米した李明博大統領と会談し「米韓共同ビジョン」の中で「核の傘」の提供を明らかにした。これに対しても朝鮮は猛反発している。

−対米 「核問題」をめぐる二重基準

 オバマ大統領の舌は二枚ある。「プラハ演説」や米ロ首脳会談の内容がどうであれ、米国がこれからも数千発単位の戦略核兵器を手放さない事実に変わりはないからだ。朝鮮もこの点を厳しく非難している。

 2日付労働新聞は「不当な二重基準の発露」と題する記事を掲載し、「米国は、気に入らない国の合法的な平和的核活動には言いがかりをつけ、(イスラエルをはじめとする)追従勢力の核問題には口を閉ざしている」と批判し、「核のない世界」は偽善に満ちた虚言にすぎないと指摘した。

 また、民主朝鮮も9日付で「核実験は正当な自衛的措置」と強調。「国力が弱ければ国と民族の自主権および尊厳を守れないということは、過去の歴史が教えてくれた血の教訓」とし、戦争間際に陥っている現状は、朝鮮の自衛的核抑止力強化が正しかったことを実証していると主張した。

 国連安保理の「制裁決議」に対しては、外務省声明の中で「今回の制裁決議は、米国が自らの反朝鮮圧殺策動に国連安保理を引き入れたもの」であり、その結果「朝鮮半島にはかつてなかった先鋭な対決の局面が作り出された」と非難した。

 また、「核保有は願ったものではなく、米国の敵視政策と核の脅威による不可避な道であった」ことを強調し、「今に至って核放棄は絶対にありえなくなった」「新たに抽出されるプルトニウムの全量を兵器化し、ウラン濃縮作業に着手する」ことを表明した。

 朝鮮戦争勃発日(25日)と関連し、国内メディアはいっせいに米国を糾弾した。各紙とも、こんにちの朝米対決は朝鮮戦争の延長線上にあることを強調し、いまだ両国が技術的には交戦状態にあるという事実に言及しながら、侵略戦争を引き起こした主犯の米国とは、最後の最後までたたかうという意志を鮮明にした。

−対日 「制裁」には強力な対応措置

 朝鮮が行った2回目の核実験をうけて、日本は国連安保理の開催を「緊急要請」し、独自に「追加制裁」を決定した。

 労働新聞は9日付でこの動きを批判。「『制裁』を科せば強盛大国建設に障害が生じるだろうと打算しているのならば、それは幼稚な考え」と日本の対応を一蹴、「対朝鮮『制裁』には強力な対応措置がとられるだろう」と警告した。

 また23日に配信された論評でも、日本の「単独制裁」を「対米追従の醜態」と批判し、「圧力」の強化は、「国内外の対朝鮮敵対感と戦争雰囲気を鼓吹し、国際的に何らかの影響力を行使しようとする」ものだと指摘した。

 衆議院で19日に可決された「海賊対処法案」にも批判が噴出している。朝鮮中央通信社は26日に論評を配信し「海外膨張を合法化しようとする危険な動き」だと非難。続けて「自衛隊の海外進出を合法化しようとするのは、再侵略を企てている日本にとって戦略的目標および必須不可欠なものになっている」と指摘した。

 27日には、朝鮮人民軍空軍司令部が日本の空中偵察行為を厳しく糾弾する報道を発表している。

−対南 「『核の傘』提供」は同族圧殺

 最近、李明博大統領は「同盟国」の首脳と相次いで会談を行った。

 麻生首相との会談の際には「未来志向的で成熟した同盟関係の構築」「『北』のミサイル、核問題などで緊密な共助」などと発言した。

 労働新聞は2日付で「現代版『乙巳五賊』による妄言」と厳しく非難した(「乙巳五賊」とは、1905年、日帝が朝鮮の外交権をはく奪するために強制的に「乙巳条約」を締結させる際、これに賛成・黙認するなど手助けした5人の売国奴をさす)。

 また、民主朝鮮18日付は、オバマ大統領との会談で打ち出した「米韓共同ビジョン」に触れ、「(核の傘提供問題は)外国勢力に同族圧殺を物乞いした売国奴の醜態」などと批判した。

 6.15共同宣言発表9周年に際し、共同宣言実践北、南、海外委員会による共同アピールが発表された。

 アピール文では6.15共同宣言と10.4宣言の履行をあらためて呼びかけ、対決と戦争は民族的惨禍をもたらすだけであること、外国勢力によってもたらされた朝鮮半島の核問題を根源的に解決することなどについて言及した。

 また、19日には祖国平和統一委員会(祖平統)が書記局報道を発表。

 増幅する南側当局の軍事的挑発を非難し、「単なる世論操作段階を脱して実働段階に進入している」と糾弾した。

 映画放談をひとつ。

 「トランスフォーマー・リベンジ」が大ヒット上映中だそうだ。

 この手の映画を観ながらいつも思うことがある。最後に地球を危機から救うのは、決まって米国だ。

 ハリウッドの著名俳優が米軍兵士に扮し、「最新鋭軍備」を駆使して敵をやっつける。そんな「勇姿」が世界中の映画館に向けて配給される。

 やがて何億という観客たちの脳裏に「米軍はかっこいい」「米国は強い」という感応が無意識に刷り込まれていく。

 撮影の際に米軍が協力を惜しまない理由がよくわかる。軍需産業も「共犯」であろう。スクリーンを通して、世界中の「顧客」に堂々と商品(武器)を宣伝できる。

 軍産複合体が産んだ巧妙な仕掛けだ。たかがどんぱち映画、されど国策レベルの奸計が潜んでいるように思えてならない。

 日本はどうか。

 今でこそ自衛隊が登場する「戦争もの」はフィルム内の出来事にすぎないが、今後はどうであろう。ソマリア沖での海賊「退治」、朝鮮の人工衛星「迎撃」を口実にしたPAC3配備やイージス艦の航行は、すでに現実として起こっている。

 日本にも軍需産業は存在する。保守勢力がハリウッドに倣うなら、邦画界総出で「ゴジラ」を復活させるかもしれない。「アジア最強軍備を誇る自衛隊」のまたとない標的として。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2009.7.10]