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開城工業地区問題 4度の実務接触も成果なく

6.15の象徴、最大の危機

 北南経済協力事業の象徴である開城工業地区が危機に瀕している。北側の提案によって4月以降、4回にわたって工業地区契約改定のための実務接触が行われたが、何の成果もないまま終わった。10日に発表された中央特区開発総局スポークスマンの談話は、北南接触が「南側当局の不誠実な態度によって決裂の危機にある」と指摘、「開城工業地区の前途は全面的に南側の出方にかかっている」とし、南側に対して協議に誠実に応じるよう求めた。工業地区問題の経緯や一連の実務接触の流れ、同問題に対する北側の立場などを整理した。

特恵措置無効を宣言

開城工業地区内にある製靴工場で働く北側労働者(2007年) [写真=聯合ニュース]

 北側が実務接触を提案した背景には、李明博政権発足後、最悪の状態に追い込まれた北南関係の現状がある。

 北側は昨年から北南関係に対する姿勢をあらためるよう李明博政権に繰り返し忠告してきた。しかし、6.15共同宣言と10.4宣言を否定し、同族対決を追求する李政権の政策に変化はなかったばかりか、いっそう対決姿勢をあらわにした。こうした状況に対処して北側は昨年12月、軍事境界線の陸路通行遮断を含めた「重大措置」の履行を南側に通告。今年に入ってからも、朝鮮人民軍総参謀部スポークスマン声明(1月17日)、祖国平和統一委員会声明(同30日)などを通じ、さらなる対応措置を講じた。

 北側はまず4月21日の第1回接触で、開城工業地区に入居する南側企業に対して付与してきた特恵措置を全面的に再検討すると南側に通告し、同地区に関する契約改定のための実務接触を行うことを提案した。

 その後、中央特区開発指導総局は5月15日、南側に通知文を送り、▼土地賃貸料と使用料、賃金、各種税金などの関連法規と契約の無効を宣言し、▼新たな法規定と基準の改定などの手続きに着手すると明らかにした。そのうえで、同地区に入居している南側企業と関係者に対して通知事項の無条件受け入れを求め、「これを履行する意思がなければ同地区から撤退しても構わない」と警告した。

 第2回接触(6月11日)では、より具体的な契約改定案を提示。報道によると、1段階で造成される100万坪のエリアに対し土地賃貸料5億ドル、労働者1人あたりの月々の賃金300ドル、年間の賃金引上げ率を10〜20%にすることなどを提案したと伝えられている。

 また同時に、南側が実行していない労働者のための宿舎と託児所、通勤道路の建設などを早急に推進することを求めた。一方、工業地区で新たに操業した企業に対する便宜を、現在入居中の企業の水準で追加保障する用意も表明した。

 第3回接触(6月19日)では、北側が示した改定案が外国および南側の経済特区の事例と、開城工業地区の政治・経済・軍事的な特殊性を考慮したものであると説明。開城工業地区によって政治・経済・軍事的に最も大きな恩恵に浴するのは南側当局であると強調した。

 今月2日の第4回接触では、契約改定問題の中で最も優先的で基本的な土地賃貸料の問題から討議することを提案した。

北側の立場は一貫

 一方の南側は協議期間中、終始対決的な姿勢で応じるなど問題解決に誠意を見せなかった。北側の発表によると、南側は工業地区の契約改定と無関係な問題を提起し、実務接触の開催を遅延させたり、協議の時間を引き延ばした。とくに、「北側の体制を中傷して法に抵触する重大な行為を働いた」として北側が逮捕、拘束している人物の処遇問題を騒ぎ、同問題の解決を実務接触の前提条件として提示した。北側はこの人物について、「開城工業地区に現代峨山職員の帽子をかぶって入り込んだ人物」としている。

 北側はこのような行為を、「工業地区事業を破たんさせようとする計画的な挑発行為」と見なし、強く糾弾した。

 工業地区問題に対する北側の立場は一貫している。

 北側が工業地区事業に誠意を示してきたのは、それが6.15共同宣言の象徴だったからだ。北南双方の武力が対峙する戦略的要衝地である軍事境界線付近の開城一帯を工業地区として南側に全面的に提供し、土地代と賃金、税金を低く設定するなどの有利な企業経営条件を保障した。

 しかし、李明博政権の登場を機に状況は一変した。北側が事業の再検討を求めた理由は第1に、北南共同宣言が全面否定された条件の下で、「わが民族同士」の精神にしたがって南側に付与してきた特恵措置を存続させる根拠がなくなったからだ。

 北南対立が極度に先鋭化する中で、北をターゲットにした合同軍事演習が実施され、大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)の全面参加が決定された。このような状況で、北側がやむをえず特恵措置を全面的に再検討せざるをえなくなった。

 第2に、開城工業地区の現在の運営実態を勘案した措置だ。工業地区では数多くの南側企業が操業しており、大きな利益を上げている一方で、北側には土地代と労働者の賃金、税金などが満足なレベルで支払われていない。北側はこれを、「経済協力の普遍的な原理に照らし合わせてみても不公平で不当」だと不満を示している。また、工業地区内では宿舎、託児所など最小限の労働条件と厚生施設も保障されておらず、北側労働者は不便を感じている。

 再検討の要求は、北南関係をめぐる情勢の変化と工業地区の実態という二つの側面を考慮した結果、出てきたものだといえる。

 ここで強調しておくべきは、北側はさまざまな障害にも関わらず、工業地区の事業を継続させる姿勢を堅持しているという点だ。

 統一ニュースなどによると、6月、北側は工業地区で新たに操業した企業に対して約1300人の新規労働力を供給した。開城工業地区管理委員会の関係者は、今年に入って北側からは毎月労働力が供給されていると明らかにしている。人員の補充は内部の事情によって多少の起伏はあるが、可能なレベルで最大限、努力していることが見て取れるという。(李相英記者)

[朝鮮新報 2009.7.22]