top_rogo.gif (16396 bytes)

朝鮮の論調 09年 7月

 第15回非同盟諸国首脳会議(7月15〜16日)に参加した最高人民会議常任委員会の金永南委員長は演説で「朝鮮半島非核化のための6者会談は永遠の終わりを告げた」と強調。非核化のための6者プロセスがもはや過去のものであることを言明した。一方、朝鮮外務省代弁人は27日に「事態を解決できる対話方式は他にある」との談話を発表。その後、クリントン元米大統領が8月4日に訪朝し、金正日総書記と会見をした。

−対米 「6者会談、永遠の終わり」

 口を開けば「6者会談再開」を合唱するばかりの米・南・日。朝鮮半島非核化における無為無策ぶりを自ら露呈し続けている。

 そんな中、朝鮮中央通信は18日、非同盟諸国首脳会議における金永南委員長の演説内容を配信した。

 金委員長は、「自主権尊重と主権平等の原則のない対話はありえない。米国とそれに追従する諸国がこの原則を捨て去ったことで、朝鮮半島非核化のための6者会談は永遠の終わりを告げた」と断言した。

 朝鮮はこれまでも外務省声明(4月14日)などを通じて「6者は不要」との立場を繰り返し表明してきたが、今回の演説は、対外的に国家元首の役目も務める最高人民会議常任委員会委員長が国際社会を前に行ったものであり、「6者会談の再開」を喧伝して回る勢力に対して朝鮮の立場をあらためて示した「最後通牒」とも言えるものだった。

 一方、外務省代弁人はタイで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(7月23日)の場で一部の国が「6者会談再開」の見解を示したことを受けて27日、談話を発表した。

 談話は、9.19共同声明で合意された「相互尊重と平等の精神」は、朝鮮の合法的な衛星発射をめぐる一連の敵対行為によって破綻したとし、「6者会談は、朝鮮の平和的な科学技術開発までも防ぎ、正常な経済発展自体を抑制する場に転落した」と強調した。

 談話は、非同盟諸国首脳会議で行われた金永南委員長の演説を後押しする一方、「事態を解決できる対話方式は他にある」との内容で最後の一文が締めくくられており、クリントン元米大統領訪朝との関連性を示唆するものであった可能性が指摘されている。

−対日 「軍事大国化は破滅の道」

 最近になって、日本当局が朝鮮に対する独自の追加制裁措置を一段と強めている。

 在日同胞や日本の市民団体の朝鮮に向けた郵便物や貨物などの輸送が不当に不許可となる事態が相次いで報告されている。

 朝鮮国内メディアはこの問題を「朝鮮に対する軍事力行使の法的環境を整えるための厳重なる政治的挑発行為」(労働新聞1日付)、「日本反動層は経済封鎖と圧迫を強化すれば己の目的を達成できると打算しているようだが、それは妄想にすぎない」(民主朝鮮4日付)などと連日のように取り上げ、非難した。

 さらに労働新聞は16日付で「軍事大国化と再侵策動は破滅の道だ」と題する記事を掲載した。

 記事は、これまでの日本の軍事大国化策動を考慮した場合、現況は非常に憂慮すべき状態にあると前置きしたうえで、「日帝が成しえなかった『大東亜共栄圏』実現にむけ、これから育つ新世代を導くための軍国主義思想注入策動が本格化している」と糾弾し、日本の右傾化が若年層に及ぼす危険性について指摘した。

 他にも、朝鮮人強制連行被害者、遺族協会が25日に「『麻生炭鉱』強制労働調査報告書」を発表。植民地時代に麻生首相の出身財閥がいかにして朝鮮人を奴隷扱いしたのかに関する詳細な歴史的事実が綴られ、全編にわたってその罪過を厳しく糾弾した。

−対南 「統一白書」はき弁、虚言

 李明博政権は「2009統一白書」(7月17日、統一部発行)で昨年の北南関係を振り返り、「朝鮮半島の平和と安定、南北関係を進展させるために努力してきた」などと自画自賛してみせた。

 この内容に朝鮮の国内メディアは猛反発。祖平統は書記局報道を発表し、「反北対決政策を合理化し、北南関係の実態をわい曲するき弁」と一蹴、「真実と民心に背く厚顔無恥な反統一逆賊の鉄面皮性がどのレベルにまで到達したのかを如実に物語っている」と猛烈に非難した。

 労働新聞も28日付の記事で同様の批判を展開。「民族の前に犯した反統一罪悪に対して謝るどころか、白々しくも『努力』だの『調停』だのと虚言を弄して世論を汚す破廉恥の極致」と吐き捨てた。

 4日には、海外同胞団体による共同アピールが発表された。アピールは、「祖国統一3大原則は不変の真理であり、6.15共同宣言と10.4宣言にもそのまま反映されている」としながら「祖国統一の里程標は全同胞の胸の中にある」と強調した。

 現米国務長官の夫で元米大統領のビル・クリントン氏が訪朝した。

 記者会見で訪朝に関する事前連絡の有無を問われた中曽根外相は「コメントを差し控える」(8月4日)と述べるに止まり、日本のメディアも「米国の先走りを警戒する」などと、総じて「置いてけぼり」を憂う論調に終始した。

 日本はこれを潮に、そろそろ自分の置かれた立場に気付いた方がいい。

 国家という政治形態は、常に国益を追求する。米国が日本を「同盟国」とみなすのは、国益に適う利用価値を認めるからであって、日本を助けるためではない。日本そっちのけで朝鮮と事を運ぶ米国の姿勢がすべてを物語っている。

 また外交とは、国益を追求した結果生じる他国との利害バランスを調整するために行うもの。朝鮮は朝鮮の国益を追求し、米国は米国の国益を追求する。クリントン元米大統領の訪朝は、それが互いの国益に適うという朝米双方の高度な政治決断が成しえた結果だ。日本の思惑などどうでもよく、ましてや口を挟む余地など端から存在しない。

 日本の政治家や外務省の官僚たちは、クリントン元米大統領の訪朝をテレビで眺めながら何を想ったのか。「最も強固な同盟国」という虚ろな響きに、指をくわえて身悶えした様が透けて見えるようだ。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2009.8.7]