国連安保理議長への書簡 朝鮮、非核化意志明らかに |
「対話か制裁か」米に選択迫る 【平壌発=金志永記者】朝鮮の国連駐在常任代表が3日、国連安保理議長に送った書簡は二つの点を再確認している。一つは制裁決議に対する朝鮮の原則的な立場に変化はないということであり、もう一つは対話を通じた問題解決の道が開かれているということだ。
「決議は認めない」
朝鮮は人工衛星「光明星2号」の打ち上げ(4月5日)を問題視した国連安保理議長声明を、国の自主権と平和的宇宙開発権に対する蹂躙と見なし、6者会談への不参加、核抑止力強化などの立場を表明した(4月14日付外務省声明)。また、国連安保理の謝罪を求め、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を含めた追加の自衛的措置についても言明した(4月29日付外務省スポークスマン声明)。 しかし、安保理の謝罪はなく、朝鮮は上記の措置のいくつかを実行に移した。 5月25日、2006年に続く二度目の地下核実験を断行した。国連安保理は核実験を非難する決議1874を採択したが、朝鮮は自衛的措置の正当性を主張し、制裁決議を全面的に否定し、それに拘束されないという立場を明らかにした(6月13日付外務省声明)。 朝鮮の国連代表が安保理議長に送った今回の書簡は、過去明らかにした立場を再び強調するものとなった。制裁決議を断固否定した6月13日付の朝鮮外務省声明は、▼新たに抽出されるプルトニウム全量の武器化、▼軽水炉建設決定にともなうウラン濃縮作業着手などの対応措置に言及した。 同声明によると、当時、使用済の核燃料棒は全量の3分の1以上が再処理されていた。ウラン濃縮は実験が始まる段階だった。しかし、その約3カ月後に発表された今回の書簡によると、使用済燃料棒の再処理は最終段階に入り、ウラン濃縮実験も成功裏に行われ、現在は完了段階に入ったという。 書簡は、朝鮮に対する制裁が現在も発動されているという事実をあらためて確認させるものだ。 この間、安保理のレベルでは朝鮮側の対応措置にブレーキをかける動きはとくになかった。6者会談の再開に焦点を合わせた各国の外交も展開されたが、制裁を加える方法では6者会談への不参加を宣言した朝鮮の態度を変化させることはできなかった。 一致した見解 一方、朝米間では進展に向けた動きがあった。8月4日、金正日総書記が平壌を訪問したクリントン元米大統領と会談した。朝鮮側の報道によると、双方は朝米間の懸案問題を「対話の方法で解決することで見解の一致」を見た。 今回の書簡には、朝米間の懸案問題についても言及されている。「朝鮮半島の非核化は米国の対朝鮮核政策と密接にかかわっている」というくだりだ。 さらに注目されるのは、非核化の意向の表明だ。書簡は、朝鮮は国の自主権を蹂躙することに利用された6者会談という構図に反対したのであって、「朝鮮半島の非核化と世界の非核化それ自体を否定したことはない」という点について指摘している。 今年の4月以降、国連安保理による制裁を非難して朝鮮外務省が発表した一連の声明は、非核化の意志を明言していない。逆に、「敵対勢力によって6者会談とともに朝鮮半島非核化の念願は永遠に消え去った」(4月23日)という見解を示していた。 書簡を通じ表明された非核化の意向は、朝鮮側が「平壌で交わされた見解の一致」を前提とした行動の準備が整っていることを示している。朝鮮半島の非核化は金日成主席の遺訓であると明らかにしている。 一方、米国のオバマ政権は核兵器を使用した唯一の国としての「道義的な責任」(4月5日、大統領のチェコ・プラハでの演説)について言及し、「核のない世界」を目指していこうと呼びかけている。朝鮮側もそれに反対する意見はない。双方が対話で問題を解決するなら、接点を見いだせるだろう。 強硬対応措置 朝鮮は書簡で「対話にも制裁にも対処できるように準備している」としたが、時間がいつまでもあるわけではない。クリントン元米大統領の平壌訪問という出来事はあったが、国連安保理の制裁は今も続いている。朝鮮は以前に表明した自衛的な強硬対応措置の実行を取り消していない。 国連安保理が現在の事態に終止符を打つために謝罪という朝鮮側の要求をのむことが難しいなら、まずは米国が対話に踏み出す以外に道はない。朝鮮の今後の対応は、米国が「対話か制裁か」という期限付きの選択に対していかなる結論を下すかにかかっている。 [朝鮮新報 2009.9.10] |