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鳩山政権の誕生と朝・日関係の展望

「政略外交」から脱皮すべき

 【平壌発=金志永記者】米国、中国などが積極的な対朝鮮外交を進める中、日本で民主党・鳩山政権が発足した。自民党から民主党への政権交代が、朝鮮との関係改善につながるのかどうか注目されている。

対話の枠組み作り

日本の政権交代によって注目が集まる朝・日対話の再開(写真は2007年3月にベトナム・ハノイで行われた朝・日国交正常化作業部会)

 朝鮮半島情勢は現在、人工衛星の打ち上げを問題視した国連安保理による議長声明の採択によって対立の構図が浮き彫りになった数カ月前とは違った様相を呈している。6者会談の枠組みは崩れたが、朝鮮と対話を行う必要性について国際社会では一定のコンセンサスが生まれた。

 そして、8月に「両国間の関係改善の方法に関する見解」を含んだオバマ米大統領の口頭メッセージを伝えたクリントン元米大統領の朝鮮訪問の意義が徐々に明らかになっている。

 ボズワーズ米国務省朝鮮半島担当特別代表が近く、対話に向けた外交を本格化させると伝えられている。一方、中国は胡錦濤主席の特使として戴秉国国務委員を平壌に派遣した(9月16〜18日)。

 この間日本は、6者会談の再開を主張しながら制裁騒動の先頭に立ってきた。その一方で、前述したような朝鮮問題に関する新たな対話の枠組み作りが始まっていることは否定できない現実だ。鳩山政権は、発足直後から対応を迫られることになった。

 朝鮮は、日本の言動を注視している。8月末の衆議院総選挙において民主党が勝利した後、金永南・最高人民会議常任委員会委員長や宋日昊・朝・日国交正常化会談担当大使が日本のメディアのインタビューに応じ、平壌宣言の履行に対する立場を明らかにした。

 麻生政権下では、政府間交渉は一度も行われなかった。関係者らによると、朝鮮側は、中断された交渉の再開は技術的な問題ではなく、大局的な見地に立って判断を下し解決すべき問題だと見ている。

 短期的なアプローチではなく、朝・日関係を含めた東北アジアの未来といった大局的な見地から問題をとらえ、大胆な決断を下す可能性がある。

7年間の教訓

 鳩山政権発足直後に岡田克也外相は、日朝関係について「拉致、核、ミサイル問題を包括的に解決」すると語った。自民党政権時代から繰り返されてきたお決まりの表現だが、そこには朝鮮側に対する「要求」があるだけで、日本側の行動や問題解決のための方法は示されていない。

 自民党政権時代は、この方針が朝・日国交正常化を妨げ、朝鮮との関係をさらに悪化させてきた。

 2002年の平壌宣言採択から現在まで、朝鮮側は日本側との交渉を通じてさまざまな教訓を得てきた。この7年間、宣言履行に関してはほとんど進展がなかった。対話は行われたが、日本側は解決できない問題をあえて持ち出し、時間だけを浪費する策に固執した。「実りのない対話」が強硬策を唱える政治家たちの権力基盤を強化し、対朝鮮制裁を正当化する口実に使われた。

 鳩山政権が隣国との関係で進展を望むなら、まずは朝・日関係問題を政略的に利用してきた歴代政権の悪習から脱皮すべきだ。

 歴代政権は互いに向き合って合意を交わしても、その後は約束を反故にし、朝鮮に対する反感だけを煽ってきた。

 このような背信行為は、一度や二度ではない。福田政権末期の08年8月、中国・瀋陽で開催された政府間実務会談で、日本は朝・日関係改善の雰囲気醸成に向けた措置を講じることを約束した。

 ところが、会談直後に誕生した麻生政権は合意事項の履行を先延ばしにした。同年の秋までと期限を定めた合意を事実上破棄し、対決姿勢をあらわにした。

 今回、日本の政権は交代したものの、交渉に関わってきた日本の外交担当者は朝・日対話がなぜ中断したのか、その理由を知っている。

 そうした経緯を無視し、あたかも朝鮮が「拉致再調査」を行わなかったことによって関係が悪化したかのような発言が今後も行われるのなら、自民党が推し進めてきた「政略外交」が再現されるのではないかと懸念される。

「近くて近い国」に

 朝・日関係改善に関する朝鮮の原則的な立場に変化はない。両国が「近くて近い国」になるためのカギは平壌宣言にある。国交正常化会談の関係者は、状況の変化によって右往左往するのは「原則」とは言えないと指摘する。

 鳩山首相は「東アジア共同体」を提唱し、靖国神社を参拝しない意向を表明した。新政権がアジア外交を重視し過去の歴史を直視するなら、朝鮮との関係改善も避けて通れない問題だ。首相の発言が単なるキャッチフレーズに終わらず、政策として確認できるなら、朝鮮側もそれに応じた行動をとるだろう。

 最近、中国のある新聞が、6者会談に日本が参加したのは会談を破たんさせることに目的があったと主張した。

 多国間協議で非核化論議が進展し、朝米関係改善の動きが進めば、日本は過去の清算に関する約束を履行しなければならない状況に直面するため、会談を妨害したと分析している。

 同紙の論調について、中国当局の意向を反映したものだとする見解が外交筋で広がっている。6者会談が行われていた時期であれば、ありえなかった現象だ。

 現状は、各国がそれぞれの利害関係を計算しながら今後の事態進展を見越して態勢を再び整えている局面だといえる。朝鮮半島問題をめぐる新しい対話の構図の中で、今後日本がどのポジションを占め、いかなるテーマを示して自らの存在感を示すのか−結局は日本自身の決断にかかっている。

 大勢に合流すれば前途は開かれ、流れに逆行すれば日本は孤立を免れないだろう。

[朝鮮新報 2009.10.2]