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朝米−北南、連動の機会 「民族和解」 進展の引き金に

 朝米二者会談の準備が進むなか、北南関係改善に向けた雰囲気作りも並行して行われている。8月以降、朝鮮は対南関係における積極的な措置を相次いで講じた。これは、朝鮮が事態の進展状況によっては朝鮮半島における対決の構図を転換させる大きな決断を念頭に置いている可能性があることを示唆している。

「流れ変わった」

8月に金剛山で行われた第10回北南赤十字会談で握手する北南の代表

 朝米、北南の関係改善の局面はほぼ同時に訪れた。8月、金正日総書記は南朝鮮の現代グループ会長と会見し、金大中元大統領の死去に際し特使弔問団をソウルに派遣した。この直前には、米国のクリントン元大統領と会見した。

 特使弔問団派遣後、北側の統一部門関係者は、「流れが完全に変わった」と話していた。

 この間、南の保守勢力は北南関係が悪化した責任の所在をうやむやにしながら、北側が米国だけを相手にし南側を相手にしないという「通米封南」戦略を駆使していると恣意的に主張した。南側に対する北側の和解アプローチを「米国と対話するための名目作り」などと評価する姿勢は、一連の対南措置が金正日総書記の活動と直接関連するものであることを見過ごしている。北側はこんにちの事態進展に戦術的な次元で対応しているのではない。

 北側は李明博政権が発足して以来、6.15共同宣言と10.4宣言を否定し、対北対決の政策基調を維持していることを強く非難してきた。軍部は南側人員による軍事境界線の陸路通行を遮断する措置も講じた。しかし、北側はある時点でこのような非正常な北南関係が時代の流れに逆行しているとの判断を下したと見られる。総書記の特使が李大統領と面会した理由もそこにあると考えられる。

課題は「平和、繁栄」

 朝鮮は非核化問題を解決するうえでの見解を明らかにしている。朝米二者会談を通じて、朝米間の敵対関係が平和的な関係に転換されるべきだという主張だ。

 朝鮮半島はいまだ停戦状態にある。交戦国同士である朝米が核問題を論議するようになれば当然、両国の国防や安保政策に関する議題が扱われる。

 朝米の軍事対決の主な舞台は朝鮮半島だ。北と南の反目と対立は現在の朝米対決の構図をさらに先鋭化させることになる。

 しかし、分断された民族の和解と団結は朝鮮半島の平和を促す。現在、北側が時代の流れをどのように見て、どの道に進もうとするのかは明らかだ。また、それは北側が万端の準備を整え、この機会に米国と非核化問題を本格的に交渉する用意があることを物語っている。

 朝鮮半島の平和は、北と南が共同の繁栄を実現するための前提条件でもある。

 北側はメディアを通じて、経済協力事業を共利・共栄、有無相通ずる原則に基づいて活性化させていくことを南側に呼びかけている。具体的な事業計画に関する言及もある。例えば、北南が互いの資源と技術を共同で開発・利用し、朝鮮半島全体で経済を発展させる方式が論じられている。

 注目すべきは、北側が最近、6.15共同宣言の実践綱領である10.4宣言の履行をあらためて強調していることだ。10.4宣言には経済と社会・文化、人道主義分野での協力と交流を実現する方途が示されている。

大胆な決断要求

 李政権は、6.15、10.4両宣言を否定しているが、北側は、両宣言を採択した当時も、交戦国と直接対話を展開しているこんにちも北南の平和と繁栄を一貫して主張してきた。

 その実現のためならば、従来の政策の枠にとらわれない選択がなされる可能性もある。

 最近、北側のこのような意志を示唆する論調が相次いでいる。労働新聞10月19日付は「対決観念に縛られ機会を見つけられずに躊躇するならば、北と南はいつになっても和解、団結できない」と指摘した。

 これは、朝米関係の進展と北南関係の発展が連動する絶好の機会を逃してはならないという北側の勧告だといえる。

 南側当局が時代のすう勢に合流しようとするなら、新しい視点で現実をとらえる必要がある。

 朝米二者会談は遠からず開催される見通しだ。オバマ大統領は以前、朝鮮の最高指導者との対話の可能性について言及した。北が南に履行を求める10.4宣言にも、現在の停戦状態を平和へと転換させるために「直接関わりのある3者、または4者の首脳が朝鮮半島地域で会って終戦を宣言する問題を進めるために協力する」といった、首脳レベルの決断を要する内容が記されている。

 北側当局の意気込みは、6.15、10.4両宣言を生み出す過程での実績が証明している。北側は情勢発展の主導権を握ることができると判断すれば、躊躇なく行動する。民族の和解と団結のために南側当局が相応の決断を下すことが求められている。(金志永記者)

[朝鮮新報 2009.10.30]