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そこが知りたいQ&A−米大統領特使12月訪朝、会談の議題は?

敵対関係清算の方法論確認

 オバマ政権発足後、初の朝米会談開催が決まった。オバマ大統領の特使として、ボズワース朝鮮問題担当特別代表が12月8日から平壌を訪問する。朝米の直接対話では、朝鮮半島非核化実現の核心問題である両国の敵対関係清算、信頼醸成が主要議題として扱われるものと見られる。

 Q オバマ大統領が平壌に特使を派遣することになった経緯は。

9月6日、滞在先のソウル市内のホテルで記者団の質問に答えるボズワース朝鮮問題担当特別代表 [写真=聯合ニュース]

 A 朝米の路線が対立から対話へと大きく転換されつつあることが表面化したのは今年の8月だ。金正日総書記が訪朝したクリントン元大統領と会見した。当時、米国は元大統領の訪朝が「拘束された二人の女性記者釈放」を目的にしたものであり、朝米関係や核問題に関する議論はなかったと説明した。

 一方、朝鮮側は両国関係に関する極めて重要な対話が行われたことを示唆した。朝鮮中央通信は、「朝米間の懸案問題が虚心坦懐に議論され、対話の方法で解決していくことで見解が一致した」と報道した。元大統領は、オバマ大統領の「口頭メッセージ」を総書記に伝えたという。

 昨年までは核問題に関する6者会談が開かれていた。今年に入り、朝鮮の人工衛星打ち上げを問題視した国連安保理制裁が発動され、6者の枠組みが崩れた。多国間協議再開の展望が開かれない状況のなかで、米国は自ら役割を果たさなければならくなったわけだ。クリントン元大統領が平壌を訪れた目的に関しては、さまざまなカモフラージュが施されたが、元大統領を介した朝米首脳による「間接会談」こそが、事態打開のターニング・ポイントになった。今回のボズワース訪朝が「対話による問題解決」という8月の「見解一致」に基づいて準備された計画であることは間違いない。

 Q 米国との直接対話に関する朝鮮の立場は。

 A 6者会談が行われていたときから朝鮮側の主張は一貫している。朝米は朝鮮半島の軍事的対立に起因する核問題の当事者である。朝鮮の立場からすれば、非核化の核心問題を解決する責任は、あくまでも敵視政策を続ける米国が担っている。

 クリントン元大統領が訪朝した8月以降、朝鮮側は非核化実現のためには「朝米間の敵対関係が清算され、朝鮮が核兵器を持たざるをえなくなった原因を取り除くプロセスを先行させなければならない」との立場を再三表明している。両国間に信頼が醸成されれば、非核化の議論を再び軌道に乗せることができる。10月に中国の温家宝首相が訪朝した際には、金正日総書記が「朝米2者会談を通じて両国間の敵対関係は、必ず平和的関係に転換されなければならない」と明言した。

 Q 6者会談はどうなるのか。米国は6者会談を再開させるために朝鮮と対話すると言っている。

 A 朝鮮は、まず朝米会談を行い、その結果によって多国間会談に参加するとの立場を表明した。多国間会談には6者会談も含まれるという。米国は、朝鮮側の「公約」を前提に直接対話を行うという構図だ。

 ここでポイントは、朝鮮側が朝米会談の開催それ自体ではなく、直接対話の結果を重視するとしている点だ。朝米間で核心問題解決の道筋をつけないかぎり、6者が会談を行っても「机上の空論」にしかならないと朝鮮側は判断している。実際、過去6年間にわたる6者会談のう余曲折は朝鮮の主張を裏付けている。

 6者会談再開について言明している米国としても、朝鮮との直接対話をただのセレモニーに終わらせることはできない。問題を先送りしても進展がないことが確実ならば、相手に行動を促す何らかの回答を示さなければならない。オバマ大統領は、ボズワース代表の訪朝を発表した会見で「われわれは(対話の中断と再開を繰り返した)過去のパターンを終わらせなければならない」と強調した。注目される発言だ。

 Q 金正日総書記が指摘した朝米の平和的関係構築はどうのようにして実現することができるのか。

 A 朝鮮は軍事的に対立する米国を単なる敵対国ではなく「交戦国」と認識している。1950年に勃発した朝鮮戦争は53年に停戦協定が結ばれ、現在に至っている。いうならば「戦闘を一時中断した状態」だ。武力衝突再発の危険性が常にあるかぎり、朝鮮が「戦争抑止力」としての核兵器を放棄することはできない。

 核問題解決の第一歩は、このような構図を解消することから始まる。朝米が取り組むべきテーマは敵対関係の清算であるが、それは何よりも安全保障に関する問題だ。国交樹立や経済支援は関係改善のプロセスではあるが、それ自体が戦争防止のシステムではない。朝鮮半島に停戦協定に替わる新たな平和保障システムを構築することを朝鮮は主張してきた。

 Q 朝米会談は、米国側の特使派遣を機に一回だけ行われるのか。それとも継続協議が行われるのか。

 A 米国としては、6者会談再開のプレッシャーを感じざるをえない。協議の長期化は好ましくないだろう。一方、朝鮮側は2者会談から多者会談へ移行するための条件を事前に提示した。ボズワース訪朝を機に問題解決の方法論を確認できるかどうかは、結局のところ双方の政治的決断にかかっている。

 総書記とクリントン元大統領の「8月対話」が象徴するように、この数カ月の動きはトップダウン方式によるものだと見ることができる。次官級レベルの官僚が議論を積み重ねる6者会談的手法とは、明らかに異なる。

 オバマ大統領もボズワース代表を自らの特使として派遣することを決めた。会談の結果は予断を許さないが、朝米双方が直接対話に対して従来になく強い意志を示していることだけは確かだ。(金志永記者)

[朝鮮新報 2009.11.25]