8日から米大統領特使が訪朝 新政権発足後 初の公式会談 |
敵対関係終息へ直接対話 バラク・オバマ大統領の特使としてスティーブン・ボズワース特別代表が8日から訪朝する。米国での新政権発足以来、朝米の公式会談が開かれるのは初めてのことだ。 過去にも米国大統領の特使が朝鮮に派遣されたことがある。 2002年10月、ブッシュ政権時代にケリー国務次官補が訪朝。朝鮮外務省高官との会談で、いわゆる「ウラニウム濃縮計画」問題を一方的に取り上げ、90年代の朝米合意の白紙化に利用した。 クリントン政権時代の1999年5月にはウイリアム・ペリー政策調整官が朝鮮を訪問した。特使訪朝の結果をふまえ、米国は朝鮮に対する新たな政策的アプローチを記した「ペリー報告」を作成、翌年には朝米共同コミュニケが発表され、クリントン大統領の訪問計画を準備するためにオルブライト国務長官が訪朝した。 ボズワース特別代表の訪朝計画は、11月のアジア歴訪の際、オバマ大統領本人がソウルでの会見で発表した。 今回の計画は、過去の特使派遣とは準備過程が異なる。朝鮮の人工衛星発射(4月5日)を問題視した国連安保理「制裁」決議で対立が激化した朝米関係は、今年8月のクリントン元大統領の訪朝を契機に対話路線へと方向を変えた。元大統領は、オバマ大統領の「口頭メッセージ」を持って朝鮮を訪問、金正日総書記の接見を受けた。 オバマ大統領の「メッセージ」には、朝米関係改善の「方法」に関する内容が込められていたと伝えられている。元大統領の訪朝を機に、朝鮮側からも関係改善のプロセスに関する何らかの見解が示された可能性がある。 ボズワース特別代表に特使の資格を与えた今回の訪朝計画は、クリントン元大統領を仲介者とした朝米首脳による「間接対話」を前提に準備されたと見ることができる。 ボズワース特別代表の訪朝目的と関連して海外のメデイアは、「6者会談再開」に焦点を合わせている。そして朝鮮側の態度に変化の兆しがないと指摘し、会談の結果について悲観的な観測を述べている。 しかし、メデイアの論調は、米国側の説明を繰り返し伝えるだけで、朝鮮側がなぜオバマ大統領の特使を受け入れようと判断したのか、その「目的」については言及していない。 1950年に始まった朝鮮戦争は、53年に停戦条約が締結されただけで、いまだ終わっていない。米国と交戦関係にある朝鮮は、自国の核兵器が「自衛的な戦争抑止力」であると主張し、核問題を朝鮮半島に平和と安定を実現させる問題として提起してきた。 8月以降、朝鮮は米国に対して現在の交戦状態を終結させる意向を表明している。金正日総書記は、中国の温家宝首相が訪朝(10月)した際、朝米2者会談を通じて両国の敵対関係は必ず平和的関係に転換されなければならず、米国との会談結果を見たうえで、多者会談を行うという立場を明らかにした。 朝鮮外務省は「朝米関係が清算され、信頼が醸成されれば、非核化の実現で大きな前進が可能」であるとの見解を示している。 また、朝鮮国内のメディアは、停戦条約に代わる「新たな平和保障システムの樹立」が緊急の課題であるとの論調を展開している。朝米という交戦国にとって「平和」は避けることができないテーマとの主張だ。 金正日総書記が言及した「朝米会談後の多者会談」には「6者会談」も含まれるとされるが、朝鮮側は、戦争脅威の元凶であり、核問題の「直接的当事者」である米国との対話を先行させる立場を明確にしている。 ボズワース特別代表は2泊3日の日程で訪朝する予定だ。 2者会談の結果は予断を許さないが、両国が関係改善に関する一致点を見いだせなければ、多者会談には移行できない。 逆に会談の結果、「6者」を含めた多者会談の開催を見通すことができたならば、朝米が直接対話で何らかの成果を得たということが言える。(志) [朝鮮新報 2009.12.4] |