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〈本の紹介〉 韓国併合と現代

説得力持つ「不法・無効論」

 本書は、日本による「韓国併合」(「乙巳五条約」「韓国併合条約」を包括する広義の意味)を歴史と国際法の観点から再検討するために国際的に共同で研究者が種々研究したところの成果である。

 本書の成り立ちについていくつか触れてみたい。発端は、雑誌「世界」(岩波書店)が、1998年から2000年まで、「韓国併合」に関する歴史学・国際法学的な諸論文を順次掲載して、「日韓の対話」を促したことにあった。この「対話」は国際的に注目されることになり、2001年から2007年まで9回にわたって「韓国併合に関する歴史的、国際法的再検討」というタイトルで専門家国際会議が開かれた。会議には南北朝鮮、日本、欧米の研究者たちが参加した。
 

 しかし、当初、国際会議に名を連ねた原田環(県立広島大学教授)、坂元茂樹(神戸大学大学院教授)、海野福寿(明治大学名誉教授)からは本書への論文掲載の承諾は得られなかった。国際会議では「韓国併合」は合法であるとする彼ら3人の主張と、「韓国併合」は違法・不成立とする何人かの主張とは相違した。そのために、本書には違法・不成立論の論文だけが収録される結果となった。しかし、どのような相違があったかについては、本書における解題の中で触れられているので読者は知ることができよう。

 本書は、序文と解題、歴史・国際法・日韓関係の課題の3編(全8章)とあとがきで構成されている、800ページに及ぶ大著である。

 歴史編では李宗鉉(朝鮮社会科学院博士)、鄭南用(同)、李泰鎮(ソウル大学校教授)、金基d(同)、荒井信一(茨城大学名誉教授)、エドワード・J・シュルツ(ハワイ大学教授)、評者など、国際法編では白忠鉉(ソウル大学校名誉教授)、李根寛(ソウル大学校副教授)、笹川紀勝(明治大学教授)、ジョン・M・ヴァンダイク(ハワイ大学教授)など、計26本の論文が掲載されている。

 「韓国併合」の法的効力問題は1990年代以降に外交問題として再浮上したが、日本の学界は、この問題は政治的すぎるという理由で一般に回避する傾向が強かった。このような学界の学風のなかで上記の研究者らは研究レベルでこの問題の解明に挑んだのである。約10年にわたる研究交流によって上梓された本書はその成果であり、その不法・無効論は非常に説得力を持っている。

 本書の主な内容は、@1905年の保護条約は不成立、無効A保護条約に基づいて締結された1910年の韓国併合条約も不成立、無効B韓国併合に関して現代でも引き継ぐ課題の指摘(例えば1965年の「日韓条約」ではこの問題を棚上げにしており、同条約の再交渉が要請される)というものである。

 来年は「韓国併合条約」強制締結から100年を迎える。「韓国併合」をめぐる政治と研究のレベルでの論争は今後ますます「対決」の様相を帯びて交わされていくと思われる。

 来る4月4日(土)、明治大学リバティータワー1021教室にて本書の研究会および出版記念会が開かれる予定である。朝・日間の過去における根本問題といえる旧条約の無効性を表現し確認する場となるだろう。(笹川紀勝、李泰鎮 編著、明石書店、TEL 03・5818・1171、9800円+税)(康成銀 朝鮮大学校教授)

[朝鮮新報 2009.3.2]