「第37回在日朝鮮学生美術展」鳥取展 来場者900人超 来年も開催を |
躍動感やパワーに圧倒
今回、鳥取県で初めて「在日朝鮮学生美術展」が開催できたのは、いくつかの出逢いがあったからである。 まず、1枚の美術展のポスターとの出会い。 私は、10年前の山陰朝鮮初中級学校閉校式に出席させていただいて以来、合併された岡山朝鮮初中級学校との交流を行っている。 年に何回か、鳥取県の日本人教員と岡山初中を訪れる取り組みをしてきたが、昨年11月にあった公開授業でポスターを目にしたのがそもそもの始まりだった。 何年も同校を訪れる機会があったが、美術展のことは知らなかった。 私自身版画を趣味としているし、小学校で図工を教えていることもあり、朝鮮学校で学ぶ在日の子ども達の美術作品に興味があった。 昨年11月末に東京に出かける機会があり、偶然、川崎市で開催されている美術展(巡回展)のことを思い出し、会場に出かけてみた。 朝鮮学校で学ぶ幼稚班から高級部までの多くの子ども達の作品に出会うことが今までなかった私は、どの作品からも感じられる躍動感や訴える力に圧倒された。 日本に住む朝鮮人の子ども達が日ごろの学習で描いた作品は、民族性も豊かで独創性に富んだものだった。 民族学校での学習については、多少なりと知っていたつもりだったが、そのパワーに圧倒された。 ◇ ◇
会場で南武朝鮮初級学校の成明美先生と出会い、ぜひ鳥取でこの作品を展示したいと申し入れた。 長い歴史を持つこの展覧会は、毎年全国の10カ所程度(朝鮮学校のある大都市)で巡回展を行っている。 「山陰地方での開催は?」と聞いたところ、「過去にはないのでは」ということだった。 日本人からの開催申し入れも今までなかったと聞き、これにもさらに驚かされた。 「もし実現できるなら画期的なこと」 この作品を鳥取の人たちにもぜひ見てもらいたいと思い、美術展実行委員会の朴一南委員長(神戸朝鮮高級学校)の連絡先を聞き、12月末にお会いして、3月開催に向けて地元実行委員会を立ち上げることにした。 私は、鳥取で10年近く在日外国人の子ども達の教育問題にかかわってきたこともあり、美術展開催の呼びかけをしたところ、在日コリアン・教員・市民・新渡日の外国人などが参加してくれた。 約20人で鳥取展実行委員会を結成し、3日間の展示を成功させようと準備に取りかかった。 開催のための後援も鳥取県を始め15の団体から頂き、会場費や県内全ての学校・市町村にポスターやチラシを配布するための費用なども、鳥取県の人権活動補助事業や多くの方の寄付で賄うことができた。 3月13日から15日の開催期間中、朴先生をはじめ美術展実行委の先生方7人にも来県していただき、民族教育や美術展の取り組み、子ども達の様子など、来場者のみなさんにお話いただいたことも、朝鮮学校のない鳥取の地での開催を有意義なものとしてくれた。
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3日間の延べ来場者数は900人を超え、多くの感想文は表現のすばらしさや感性の豊かさを賞賛していた。 また、20代の女性は、作品のすばらしさだけでなく在日朝鮮人の現状に触れて関心が深まったとの意見を書いていた。 来場者に次回開催を望む声も多く、巡回展の1つに組み入れていただければとの意見もあって、今年度は米子市を開催地として準備が進められていくことにもなっている。 多くの朝鮮学校の先生達との出会いや地元の在日コリアン、市民の支援と協力があったことで、日本人からの呼びかけによる美術展が成功裏に終了したことを喜びたい。 (三谷昇、鳥取展実行委員会代表) [朝鮮新報 2009.4.10] |