季節は 春のようです 行けども 行けども 果てしない 菜の花畑を 歩いてゆきます
かげろう揺らめく地平線の先には 涙ぐましいほどに 蒼い空が広がります たぶん、ここは アボジの膝の上でいつも聞いていた 故郷の春のようです
−スギヤ!
私を幼い頃の愛称で呼ぶのは 聞き馴れた、オモニの声です いつしか私は 三つ四つの子どもにかえり オモニが呼ぶ方を向きたくて 何度も、何度も、 振り返ろうとするのに 石のように体が硬くなり 身動きとれなくなるのです
黄色に包まれた 菜の花畑で始まるこの夢は いつもここで 覚めてしまいます
1989年12月 (康明淑詩集「紫陽花」、92年)
カン・ミョンスク
詩人。1954年群馬県生まれ。朝鮮大学校文学部(当時)卒業。朝鮮半島北部出身の父と南部出身の母を持つ在日2世。多くの同胞たちに歌い継がれている詞「君を朝鮮の花と咲かそう」「分界線のコスモス」の作者。
(選訳・金栞花)
[朝鮮新報 2009.4.20]