〈第26回「4月の春親善芸術祭典」〉 4月の平壌は芸術の大舞台 |
「私たちはひとつになれた」 【平壌発=文・呉陽希、写真・文光善記者】4月は朝鮮でもっとも華やかな季節だ。平壌の街並みには梅やレンギョウが咲き誇る花景色が広がる。そんな平壌に20余カ国50余団体から600人以上のアーティストが集った。10日から18日まで、市内9つの劇場で第26回「4月の春親善芸術祭典」が開催され、平壌は芸術の大舞台となった。
世界トップレベル
今年で26回目の開催となる同祭典は、1982年より毎年行われていたが、昨年から国内のプロ・アマチュアによる芸術祭典である「全国芸術祭典」と隔年で開催されるようになった。
祭典組織委員会副委員長のハン・チョル文化省次官は「近年でもっとも芸術的水準の高い祭典」だったと振り返る。ハン次官によると、25回目以降、隔年開催となってから各国から参加申請が相次ぎ、「厳正な審査によって参加者を選定した」。実際、上海交響楽団やロシア国立合唱団、イタリアの人気女性ボーカルトリオ「アパシオナンテ」、グラミー賞受賞歴のある米国のクリスチャンバンド「キャスティング・クラウンズ」など、各国トップレベルの実力を誇る団体が平壌各所で競演を繰り広げた。
とくにロシアの国民的歌手として不動の地位と人気を誇るラリサ・ドリナさんの参加は今祭典に花を添えた。ラリサ・ドリナさんは米国やドイツ、フランス、イスラエルなど世界各国での公演経験があり、大統領から名誉勲章を授与されるなどロシアのさまざまな国家称号を持つ。日本でこそ知る人は少ないが、姿を見せる先々で彼女を取り囲む外国人の姿が彼女の国際的知名度を物語っていた。 海外同胞の公演も大盛況だった。16日、青年中央劇場では日本、中国、米国、ウズベキスタン(国際高麗人統一連合会)の海外同胞芸術団による合同公演が行われた。演目はすべて朝鮮の歌や踊り、楽器演奏で構成されたが、国内芸術団のそれとは違う表現法や演出など特徴あふれるプログラムは観客らに新たな感動を呼び起こしていた。 美しい都市 「平壌はとても美しくて素晴らしい都市」 ラリサ・ドリナさんをはじめ多くのゲストが平壌の印象についてこう口をそろえた。
牡丹峰劇場で公演した上海交響楽団の陳燮陽指揮者は、「朝鮮は立派な芸術環境が整えられているうえに、人民たちの目もたいへん肥えている。文化水準が非常に高い」と語った。 外国のアーティストらはそれぞれの公演の際、「美しい平壌の夜」「アリラン」「会えてうれしい」など朝鮮の歌や曲も披露した。 13日に平壌大劇場で初公演を行ったラリサ・ドリナさんは、プログラムの最後に「美しい平壌の夜」を歌ったが歌詞を忘れるハプニングが起こった。しかし、客席からは彼女を激励するかのようにどこからともなく歌声が沸きあがりやがて劇場全体の大合唱となった。 「朝鮮の人びとが私をとても勇気付けてくれた。私たちはひとつになれた。もう一度平壌を訪れることができるなら、どんなに幸せなことかわからない」(ラリサ・ドリナさん) 芸術に国境はないという。「自主」「平和」「親善」を理念に掲げた同祭典はまさに芸術を通じて互いの理解と親善を深めともに平和を祈る絶好の場となっている。
新しい「友人」
大きなイベントでは行事の成功に向けて地道に働く人びと、いわゆる「裏方」の存在が不可欠だ。活躍が目立ったのが世界各国から訪れたゲストについた通訳たちだ。その大半が金日成総合大学や平壌外国語大学などの学生だという。短い時間でゲストの性格や好みなどを把握し、多忙な日程の中で神経の高ぶったアーティストらの機嫌を損なわず、押し寄せる取材に対応した。通訳たちの判断力とコミュニケーション能力は非常に高い。 「キャスティング・クラウンズ」の通訳をしていたキム・スンヒョクさん(21)は、「ゲストたちにとっては私たちがいちばん身近に接する朝鮮人だ。心からのもてなしの気持ちで行動をともにした。ハードだったがとてもやりがいを感じた」と話す。 ゲストにとっても通訳たちは朝鮮の新たな「友人」となった。「キャスティング・クラウンズ」のバイオリン奏者、メロディー・ディベボさんは、「若い友人に会うためにまた平壌に来なければ」と話しながらキムさんと固い握手を交わした。 [朝鮮新報 2009.4.22] |