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〈本の紹介〉 非国民がやってきた!

息苦しい時代生き抜く道筋示唆

 敗戦から60年以上が経った今、かつての「非国民」という言葉、時代がよみがえりつつある。

 現に日本では、戦争と差別と貧困の強制が時代を覆い、人々の絆を断ち切り、人間の尊厳や連帯を困難にし、封じ込める政治が続いている。

 たとえば、郵便受けにチラシを入れただけで2カ月以上も拘禁された2004年の立川ビラ事件、町を歩いているだけで警察に呼び止められ、質問攻めに合う人も増えている。

 あらゆる情報が手に入り、何でも言えるはずだった時代に、市民の生活は抑圧され、自由な言論活動もできなくなりつつある。

 もはや日本国民は、「非国民」とならざるをえない状況にあるという、著者の歴史認識が本書の底流にある。

 こうした時代状況を読み解き、打開の手がかりを探るためには、同時代の「非国民」や、近代日本の「非国民」がいかに生き、いかに闘ったのかを知ることがとても大事であると、著者は力説する。井上伝蔵や石川啄木、金子文子・朴烈など「非国民」への道をたどらざるをえなかった、息苦しい時代を生き抜いた人々の思想と生活の一端が浮かび上がる。

 つぎに、「公民権運動の母」と呼ばれたローザ・パークスやキング牧師、阿波根昌鴻たちを例にあげ、国家や民族に埋没することなく、自分らしさを維持し、「自分が自分であること」を貫く「市民的不服従」の問題を考える。

 また過去、朝鮮人や中国人を差別することで、「日本人らしさ」がつくられていったことにもふれている。

 「非国民」とは何かをしっかりと考えるための糸口を探り、その時代を生き抜くための一つの道筋を示唆している。(前田朗著、耕文社、1200円+税、TEL 06・6933・5001)(姜裕香記者)

[朝鮮新報 2009.5.9]