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〈みんなの健康Q&A〉 更年期障害(上)−原因と症状

 Q:以前、「妊娠に伴う抑うつ」を取り上げていただきましたが、今回はもう少しベテランの女性に見られる更年期障害について説明してください。

 A:まず始めに、更年期障害の特徴から説明いたしましょう。

 更年期障害は女性であれば、誰がなっても不思議ではないものです。20〜30代の妊娠適齢期が過ぎますと、卵巣機能もその役割を終えようとします。それまでは規則正しく、毎月左右の卵巣から放出されていた卵子は、次第に排卵の間隔が空いてきたり、2〜3カ月排卵しなくなったりします(生理は多くの場合、排卵後2週間で起こるのです)。

 一般的に、このようなホルモンの変化の時期を女性の「更年期」と言います。更年期の年代は45歳から55歳ぐらいと言われています。

 Q:「更年期障害」といわれる症状は、どのように出始めるものなのでしょう。

 A:生活環境や体型、体質にも影響されますから一概には言えませんが、一般的な更年期障害の症状の出方についてを挙げてみましょう。

 40代になる頃から、まず月経の周期が乱れ始めます。40代半ば頃になると、血管の収縮と拡張を司る自律神経のバランスが乱れ、自律神経系の症状が出始めることが多いようです。具体的には、「ホットフラッシュ」といわれる、突然の顔のほてりやのぼせ、多汗などと下半身の冷え、動悸、めまいや耳鳴りなどが代表的な症状です。

 このような症状は健康な更年期の女性にもみられますが、更年期障害を訴える女性では、その症状が現れる頻度がとても高くなっています。詳しい説明は婦人科の医師に任せることにしますが、閉経を間近に控え、卵巣の機能低下に伴い、卵巣機能をコントロールしている脳(視床下部・脳下垂体)が、衰えた卵巣にエストロゲンを分泌するように過剰に指令(卵子という材料が無くなったにも関わらず、卵巣に卵子を出させようとするのです)を出します。これが更年期障害のメカニズムの始まりです。

 結局、更年期障害とは、ホルモンバランスの乱れが原因の身体的・精神的不調のことであり、自律神経失調症の一つです。

 Q:ホルモンバランス以外でも、女性にとって更年期の時期は人生の一大転機とも言えますね。

 A:子どもの独立・夫の定年・親の介護など、急激に生活のリズムが変わる時期ともちょうど重なることが多く、生活のリズムの変化による精神的ストレスや家庭や職場でのストレスなども加わって、更年期障害が現れることも多々あるようです。また最近では、30歳代位の「更年期にはまだ早い年齢」であるにもかかわらず、症状が現れる「若年性更年期障害」も増えてきています。

 Q:更年期障害の具体的な症状について教えてください。

 A:更年期は誰にでも訪れる期間ですが、その時に更年期障害が生じるかどうかは個人差があります。不調をほとんど感じないで過ごす人もいれば、日常生活に支障が出るような重い症状に悩む人もいます。また、どんな症状を感じるかといった、症状の頻度や種類も人によって異なります。

 比較的初期に現れやすい症状として、「何となく元気が出ない、今まで興味をもっていた趣味などへの関心が薄れる、親しかった友人とあまり会いたくなくなる、出かけたり、人に会ったりするのが何となく億劫、何ごとにも根気が続かない、大事な用事を後回しにする」などの抑うつ気分や、不眠などがあります。

 その次に自律神経症状として、のぼせ・発汗・顔のほてり・動悸なども挙げられます。典型的な症状として、前述したホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)があります。ホットフラッシュとは、ほてりや顔ののぼせといった症状のことで女性の4分の3が経験します。この症状は1年以上にわたって出る人が多く、半数近くの女性では5年以上続きます。「のぼせ」は、頭に血が上ったような状態になることを指します。その症状の出方は人によってさまざまです。「ほてり」症状は、突然前触れなく身体がカーッと熱くなり、身体がほてり、顔が紅潮し汗をかきます。ほてり症状を持つ人は冬にもかかわらず、窓を開けたりして暑がる場合もあるのです。更年期障害の症状は、肉体的なものだけではなく、自律神経系・精神的症状もあり、不眠や、抑うつ症状は、その中でも代表的なものです。更年期障害とうつ病は、同じような身体症状が表れますが、両者の症状に大きな違いはありません。また、更年期障害とあわせてうつ病を発症する女性も少なくありません。

 Q:辛い症状が現れた場合は、治療を受けた方が良いですか。

 A:うつ病は「心の風邪」とも言われるように誰でもかかる可能性のある病気ですが、うつ病にかかっている人の半分近くが治療を受けていないという統計もあるくらいです。

 うつ病は、責任感が強い人がなりやすいとか、自分がうつ病にかかっているという自覚がない人もいるなどとも言われています。ですから、治療を受けない理由として、「自分で何とか解決しよう」と思ったり、「精神科の治療を受けたくない」と思ったり、と言った心理的な理由もあるようです。

 しかし、抑うつ症状が2週間以上続くようでしたら、できるだけ早くかかりつけの医者がいれば相談し、専門の医者を紹介してもらうのが賢明です。たとえかかりつけ医がいなくても、近頃では心療内科やメンタルクリニックがどの駅前にもありますから、まずは受診をしてみて「自分には合わない」と思えば二度目から行かなければよいのです。気軽な気持ちで受診されることをお勧めします。 (駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/)

[朝鮮新報 2009.6.17]