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〈みんなの健康Q&A〉 更年期障害(下)−対処法

 Q:更年期障害の対処法などについて教えてください。

 A 更年期症状は環境的要因(家庭・職場・社会等)にも大きく影響されます。ですから家庭や職場にストレスが少ない人ほど症状は軽く済む、と言う研究者もいます。環境を整えるために自分でできることや周囲に協力してもらうことがあり、この両方で症状の改善も期待できるのです。自分一人でストレスに向き合うことには限界があります。心身の不調が気になる時には、まずは病院でそれが更年期によるものなのかを調べてもらうことです。婦人科、レディースクリニック、更年期外来、かかり付けの内科でもかまいません。とにかく、自分が通いやすい医療機関で相談してみてください。

 Q:病気かどうかはすぐにわかりますか。

 A 婦人科系の専門病院で診察を行い、血液検査でホルモン量を調べてみれば、病気かどうかは一目瞭然です。また、医者との相性も大切で、患者さんの話を聞いてくれる医師、病院にかかることが大事です。逆に検査だけして、ろくに病名や病状も説明しない医者に我慢して通院することがストレスになる場合もあります。状況にもよりますが、何件か回ってでも気の合う医師を探すのも良いでしょう。

 Q:家族の対応で必要なことはありますか。

 A 家族にとっても、理由や原因もわからずにオモニにイライラされたり、クヨクヨされたりしては困惑してしまいます。「オモニはヒステリーだから…」と誤解させてしまうのは得策ではありません。更年期症状は辛いことを家族にも理解してもらい、協力してもらえるようにするだけでも随分と楽になるものです。 疲労感や倦怠感があって、家事や仕事などが辛い時には思い切って休みましょう。

 「でも、○○をしておかなければ…」と日頃していたことを止めることは難しいかもしれません。「人に頼んでは悪い、人に任せるのが嫌だ」と思われる人も多いでしょうが、それでは負担は減りません。そうなる前に周りの方を信頼し、任せることも大事なのです。家族や周囲に協力してもらい、やりたくない時には休むことも大切なのです。

 Q:更年期はとくにストレスに注意する必要があるということですか。

 A 女性ホルモンのバランスが変化する更年期にストレスが加わると、更年期症状がより強く感じられると言われています。ですから、日頃から自分なりのストレス解消法をみつけて、ストレスをためないように心がけるのが良いでしょう。近年、運動が更年期症状には効果的であるという研究もされています。適度な運動は自律神経のバランスを整え、症状の安定化につながるとともに、生活習慣病の予防にもなります。

 Q:おすすめの運動はどんなものですか。

 A 朝の日射しを浴びながら散歩することは効果があると言われていますので、とくにお勧めします。最近メタボ気味な旦那さん(私も耳がイタイのですが…)と、この際一緒に歩かれてはいかがでしょうか? ストレッチ、ヨガ、ウォーキングなどの軽いものから、スイミング(水中歩行でも良いです)、ダンス、ジムトレーニングなど本格的なものの他、夫婦でゴルフやテニス、登山など、一緒に楽しむものも良いでしょう。まずは自分でやってみたいと思ったものを始めましょう。

 Q:漢方薬で辛さを軽減することも可能ですか。

 A 医学的な治療法としては、比較的初期の症状に対して漢方薬を使って治療することも多いようです。漢方薬のうちで、加味逍遥散は、更年期障害の精神的症状に特に効果的だと言われています。温経湯は、 ほてりや唇の乾きに効果的、五積散は下半身の冷えに効果的で、女神散は強いめまいやのぼせに効果的だと言われています。漢方薬の多くは、空腹時に服用するのが最も効果的ですから、食前に服用するようになっています。また、漢方薬と言っても、煎じて飲むものばかりではなく、煎じて抽出した成分を加工した「エキス剤」と言われるものもあります。また漢方薬は、副作用の心配は少ないと言われていますが、全くないというわけではありません。更年期障害の漢方薬治療を受ける時に、とくに他の薬を服用している場合は、必ず医師のアドバイスを受けるようにしましょう。

 Q:他にはどんな治療法がありますか。

 A より専門的な治療として「ホルモン補充療法(HRT)」というものもあります。前回御説明したように更年期障害の主な原因は、卵巣からのホルモンの分泌が減少し、その結果、自律神経が失調するのですから、それから回復するには、卵胞ホルモン(エストロゲン)を補えば良いわけです。実際に、この治療により更年期障害の多くがかなり速やかに劇的に改善します。更年期障害のいろいろな症状の緩和や改善に、とても効果のある治療法だと言われています。ですが、副作用がないわけではありません。

 エストロゲンは生殖器関係に影響を与えるホルモンであるため、エストロゲンを飲み薬や張り薬で補充するHRTの治療を開始すると、乳房が張ってきたり、性器から出血したりするなどの副作用が現れることがあります。副作用があまりにひどくて治療がつらい場合は、薬の量や種類・使い方などを変更することが必要ですので、我慢しないで医師に相談するようにしましょう。

 Q:更年期障害の治療を受けているのに、なかなか症状が良くならない、心の落ち込みがなおらないという時はどうすれば良いですか。

 A それはうつ病を発病している現れかもしれません。治療を受けているにもかかわらず、なかなか良くならないという思いは、それだけでも気持ちを落ち込ませるものですから、このような思いを抱えながら長い間いることは、大変辛いことです。うつ病の治療には薬物療法や心理療法などがあります。その場合何より大切なことは、自分自身を思いやり、休息を取ることです。前にも述べましたが、更年期という時期は、生活環境が大きくいろいろと変化する年齢に重なってきます。まず、ストレスを一人で抱え込まないようにすることから始めましょう。

 Q:更年期は避けては通れない道なのですね。

 A 「老いる(加齢・エイジング)」ことは生きるものたちの宿命です。ヒトの体には約60兆個の細胞があり、それぞれの細胞がそれぞれの役割を果たしています。老化とは、その細胞が傷つき通常の働きができなくなることなのです。ヒトの細胞は、20歳代前半にピーク(人生80年と言いますが、人生の70〜80%は老化と付き合わなければならないとも言えます)を迎えます。それ以降は、身体のほとんどの部分が衰えていきます。

 例えば、視力の低下も老化現象の一例なのです。その他にも、記憶力が落ちる、皮膚のシワ・たるみが増える、筋力が落ちる、性欲がなくなるなど、いろいろあります。これからは、加齢を否定するのではなく、それを受け止め、理解し、その対策を練ることが重要なのです。これからの医療の主流は予防医学・アンチエイジングの時代と言えるのかも知れません。(駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/)

[朝鮮新報 2009.6.22]