2009金剛山歌劇団公演 「悠久な文化にうっとり」 「沈清伝」 「興夫伝」 「春香伝」 |
17日、東京都立川市のアミューたちかわで初演を迎えた金剛山歌劇団の今年の日本巡回公演「アルム」。 朝鮮語で「美しい」「満ち溢れる」などの意味を持つこのタイトルには、一日も早い祖国統一と朝・日関係改善への願いがこめられている。
器楽演奏「アルム」(作曲/高明秀、功勲芸術家)で幕を開けた公演第1部では、男声独唱と女声コーラス「わが故郷」、独舞「太鼓の舞」、民族管楽器重奏「プルム打令」など朝鮮の歌と踊り、器楽演奏のアンサンブルが披露された。
第2部では、朝鮮の代表的な3つの古典文学作品「沈清伝」「興夫伝」「春香伝」による舞踊組曲が華麗に舞台を飾った。 脚本・按舞を手がけた康秀奈さん(功勲俳優)は、「在日の若者や日本の人たちに、朝鮮民族が古くから親しんできた古典作品を知ってもらいたかった」と創作の動機を語った。
作品のテーマとなっている「孝」「義」「愛」は、国や民族、時代を越えても多くの人々と共感できる。作品はそれぞれ1作品15分前後とコンパクトにまとめているので、「お得感」も味わえるといったところだろうか。
「『春香伝』はこれまで映画、演劇、ミュージカル、バレエなどでも表現されてきた。小説では100ページをゆうに超え、映画やバレエなどでも1時間半から2時間という大作ばかり。17分という小品でまとめられたのはおそらく初めて」(康さん) 金哲副団長は、「これら古典文学の舞踊小品化は、金剛山歌劇団のオリジナルだ。他の芸術団でこれまでやっていない舞踊小品化の新境地を、在日の芸術団体が切り開いたという意義は大変大きい」と話す。
台詞のない舞踊で物語のあらすじと登場人物の感情を伝えるのはたやすいことではない。
観客にストーリーをわかりやすく伝えるため、挿入歌を導入し、舞台脇には歌詞の日本語字幕を映すなど工夫した。現代風に創作された音楽も見所の一つ。 朝鮮後期、民衆の口から口へと伝わってきた口伝説話が、現代音楽と舞踊でみごとに表現されている。 現代的な音楽でドラマチックに描かれた「沈清伝」、コミカルな動きで笑いをそそる「興夫伝」、身分の差を乗り越えて結ばれた男女の美しい愛を表現した「春香伝」。 どれも見ごたえたっぷりだ。(文=金潤順記者、写真=盧琴順記者) 解説 ■「沈清伝」 盲目の父の目を治すため、親思いのシムチョンは竜王の生贄になるべく「リムダン水」に身を投げるが、少女の清らかな姿に竜王は彼女を蘇らせる。 ■「興夫伝」 乱暴で欲深い兄・ノルブと、働き者で心優しい弟・フンブの物語。悪は罰せられ、善は報われるという「勧善懲悪」をテーマにしている。 ■「春香伝」 封建社会の厳しい身分制度のタブーを乗り越えて結ばれた男女の愛を描いている。作品には差別のない社会への望みが込められている。
本公演スケジュール
[朝鮮新報 2009.6.24] |