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タンポポの根っこ −都鐘煥−

日照りが続くほどタンポポは
根っこを深く降ろして行く
時季が来れば陽射しが溢れ
雨水もたっぷりと降り注ぎ
花咲き実を結ぶまで
いとも順調に過ぎてゆく
そんな命も多いけれど
生きるということは誰であれ
それほど容易いものではなく
ある年は遅くまで
寒さが居座り続けたり
日照り続きに丈夫な花はおろか
その身を守ることすら難しい時もある
目ざとい者たちは野を離れ
残った者たちも命の半径を半分に狭め
剥れ落ちる己の肉片や葉々を
成す術もなく見つめるしかない時もある
一見かなり貧弱で憔悴し
疲れ果てて見えても
そんなときほどタンポポは
根っこを深く降ろして行く
人々は己の花の形や色が
いかに映るかを気にする時
脇根を全部抱きかかえ、
主根をまっすぐ
まっすぐに下へと降ろして行く
花咲かせるのが厳しい時ほど
二倍、三倍、深く深く降りて行く
行くほどに語らず
行くほどに真剣に
低い場所を目指して

都鐘煥詩集「柔らかな直線」

(98年・創作と批評社)

 ト・ジョンファン(1954〜)

 忠清北道清州生まれ。教職の傍ら同人誌「分断時代」で詩作を始めた。89年全国教職員労働組合活動によって解雇、投獄。98年に復職したが体調を崩し、現在は療養中。(選訳・金栞花)

[朝鮮新報 2009.7.21]