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〈民族楽器のルーツをたどる ウリナラの楽器 M〉 素材や分類

朝鮮で生まれた「郷部」の楽器

セナプ(朝鮮)

チャルメラ(日本)

スオナ(中国)

ズルナ(アラブ諸国)

 昨年2月にスタートした本連載がいよいよ最終回を迎えることになった。1年半に及ぶ期間、愛読してくださった読者の方々に深く感謝する。

 最終回では、民族楽器の素材や分類をまとめてみよう。

 本シリーズを通して読者のみなさんは、ウリナラの楽器の歴史とシルクロードとの関わりを少し感じていただけたことと思う。

 シルクロードの音楽文化の源は、古代オリエントのメソポタミアにさかのぼる。世界最古の都市文明といわれるシュメールの初期王朝時代(紀元前2900年〜2400年頃)にはかなり高度な音楽文化が存在したようだ。変革がナイル川やインダス川、やや遅れて黄河流域にも起こり、インドと中国の文明は独自に発展、メソポタミアおよびエジプトの文明はその後、中近東や地中海文明の基礎となり、ギリシャ・ヘブライ文化からは初期キリスト教音楽と美術が生まれた(拓植元一著「シルクロードの響き」)。

 古代メソポタミアの楽器は、遺物や壁画などに描かれた演奏風景および楽器をみるとわかるように多種多様だ。シンバルや両面太鼓、弓形ハープ、土笛や葦笛、トランペットなど今に通ずる。

牛頭のある女王のリラ(イラク、紀元前2600〜紀元前2400年)

 楽器の素材の特徴としては、弦鳴楽器の共鳴胴に桑材が使われ、羊腸弦と並んで絹弦が用いられた。また、気鳴楽器には葦管を利用したものが圧倒的に多い。

 次は楽器の分類について説明しよう。

 西洋音楽は古来「弦楽器」「管楽器」「打楽器」と大きく三つに分けられる。近代では鍵盤楽器(キーボード)というカテゴリーを独立させている。

 20世紀のはじめにドイツでは古代インドの四分類法から伝統楽器は発音原理に基づいて「体鳴楽器」(金属・石・木・竹などに衝撃を与えて鳴らす鐘やシンバルマラカスなど)、「膜鳴楽器」(皮膜を張ってそれに衝撃を与えて鳴らす太鼓や鼓など)、「弦鳴楽器」(弦に衝撃を与えて鳴らす弦一般)、「気鳴楽器」(空気の渦によって生じる振動を利用して音をだす管楽器やハーモニカなど)と大きく分類される(※シンセサイザーなどは「電鳴楽器・電子楽器」と呼ぶ)。

 日本の雅楽器の分類は「吹きもの」「弾きもの」「打ちもの」で、これらは奏法による三分類法である。

 さて、朝鮮の分類法は大きく4つに分けられる。

 楽器の材料による分類(金・石・絲・竹・籠・土・革・木の8種類)、次に音楽の系統による分類で雅部(中国の祭礼音楽)、唐部(唐国の楽器のみならず中国中世の楽器や西域地方で発生して中国を経て朝鮮に根づいた楽器。ウォルグム、チャンゴ、ヘグム、セナプなど)、郷部(朝鮮で発生した全ての楽器。ピョンジョン、チョッテ、カヤグム、コムンゴなど)。

ベゼクリク石窟壁画・衆人奏楽図(中国、10〜11世紀)

 この二種類が伝統的な分類法で、次の二種類は先にも出てきた西洋音楽分類法、そして古代インドの四分類法の発音原理に基づく分類法である(全世界的に通用している方法)。

 文化は歴史とともに人々が行きかう中で伝達され、それが地域や風土によって受容、発展していく。楽器もその音色や形、素材や分類をみてわかるように互いに影響しあいながら発展してきた。それは朝鮮の楽器も例外ではない。長い長い歴史の中で育まれ守られてきた民族楽器は、これからも継承、発展していくに違いない。日本に住む私たちにとっては、相通ずる人々が個人個人の自覚の中で守るべき大切な自国の文化である。(康明姫・民族音楽資料室、おわり)

[朝鮮新報 2009.7.31]