朝鮮の食文化を世界へ 料理研究家・金徳子さんが「発信する会」を発足 |
伝統と創造性織り交ぜて
料理研究家の金徳子さんが、約20年の間に、150回にわたって主宰してきた「朝鮮料理・文化教室」の修了式と「朝鮮の食文化を世界に発信する会」の発足を祝うパーティーが7月25日、東京・渋谷のホテルで行われた。 金さんは、渋谷区内で「弧狸庵家庭料理ナルゲ」を営みながら、テレビ出演もこなし、料理教室の講師を務めてきた。5年前には、「料理本のアカデミー賞」といわれる「グルマン世界料理本大賞」の「04年世界のベスト創作料理部門、佳作」を受賞。また、06年には朝鮮新報社発行の月刊「イオ」の連載をまとめ、「KOREAN COOK 朝鮮料理の魅力」を出版するなど活躍中。 この日、料理教室に通っていた受講生たち約100人がホテルに集い、金さんを囲んで楽しいひとときを過ごした。金さんは発足式で、朝鮮の食文化を世界に発信していく意義について語り、大きな拍手を受けた。金さんは山口県出身の在日2世。上京後、結婚。「両班料理の伝統を守り続けた」として定評のあった姑の故・申小南さんに仕え、その伝統的な料理法を仕込まれ、味を受け継いだ。 「嫁いで来て姑からおいしいものを全部吸い取った」と金さん。その料理のベースには、そうした姑から日々受け継いだ朝鮮の伝統の味とともに、日本で出会った豊かな食材を生かした独創的な料理も数多い。金さんはこの体験にもとづいて、「文化の伝播は一方的ではなく双方向的なもの」だとして、今後は、もっと視野を広げ、多くの人々と力を合わせて、さまざまなイベントや企画を練りながら、朝鮮の食文化を発信していきたいと述べた。 会場にはNPO「日本の伝統文化を世界に発信する会」の寺谷ひろみ・青山学院大名誉教授も駆けつけた。長年ロシア・東欧研究に従事して、約150カ国を訪ねた同氏は、「キムチをはじめとする朝鮮の豊かな食文化は、世界に発信する価値がある。ロシアのモスクワ、サンクトペテルブルグ、また、ウズベキスタンやハンガリーの各都市を回ったが、どこの市場にもキムチやとうがらしが売られ、活況を呈していた。お土産のキムチが飛行機の棚の上で破裂したこともあった。この豊かなコリアの食文化をただ趣味で味わったり、習ったりするだけではもったいない。ぜひ、世界中に発信していってもらいたい」とエールを送っていた。 また、金さんの料理教室を数年間受講したという日本料理研究家の久保田美亜子さんは、自分の店のメニューに、さっそく教わったチャプチェやおかゆ、九節板を出して好評だったことなどを笑顔で語り、朝鮮料理に魅了されるのは、野菜が豊富で、何よりおいしいからだと語った。 また、5年間、料理教室に通った小板信二さんは、「金先生が料理を通じて、心から朝鮮の文化を伝えようとされたことに頭が下がる。その人柄に触れて、人を温かくもてなそうとする朝鮮民族の心に触れた気がする。長年教室に通い、おかげで伴侶も見つけた。この教室では、周りはみんな女性だったので、親切にしていただいて感謝している」と感想を述べた。 パーティーでは、ソプラノ歌手の鄭香淑さん、カヤグム奏者の韓英政さんらが出演するミニコンサートが開かれ、花を添えた。 なお、20年の間に、教室を巣立ったのは日本人と在日同胞合わせて167人。(朴日粉記者) [朝鮮新報 2009.7.31] |