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平壌冷麺

窓越しに大同江の碧き水が
悠々と流れる夏の日の午後
ここ玉流館冷麺の円卓で
思いがけない笑い声、
拍手が沸き起こった

汎民族大会を終えて昨日
開城を後にしたロサンゼルスの金老人
今まさに3杯目の大盆冷麺の器に
たっぷりと
酢を振りかけているのだ

隣で 長い髪の綺麗なお嬢さんが
最後まで召し上がるのですかと
冗談半分、心配半分、金老人に聞くと
老人は箸をとりながら穏やかに頷いた

「45年もの間食べられずにいた
平壌冷麺じゃないか
たかが3杯、何のこれしき
異郷で逝った妻の願いが
生涯この冷麺だったのだから
わしが その分まで…」

瞬間、おごそかな静寂につつまれた
老人の声は低く淡々としていたが
円卓を囲んだ海外同胞たちは
おのおの黙々と冷麺と一緒に
その胸の思いをほぐし始めた

あぁ、望郷に駆られた哀しき日々に
あれほどにも恋しんだあの平壌冷麺!
それはそのまま
夢にまで、夢にまで想い描いた
あの故郷、あの祖国だったのだから!…

(6.15共同宣言実践のための民族作家大会記念 リ・ホグン詩集「統一切符お売りします」、2005年、文学芸術出版社)

 リ・ホグン(1938〜)
 詩人。咸鏡南道興南市生まれ。1958年「朝鮮文学」に詩を発表し登壇。祖国統一を主題にした詩を数多く発表。朝鮮作家同盟副委員長、「統一文学」所属詩人。 詩集に「夜明けは窓辺に」「朝鮮はひとつだ」「統一行進曲」「金剛山にサロリラッタ」「統一金剛山」「庭にいちごが実る時」などがある。(選訳・金栞花)

[朝鮮新報 2009.9.14]