夕暮れ時にチェ君が 私を訪ね
腕利きの若き仕上げ工が 私を訪ね
「先生、どうしましょう?
悩みがあるんですけれど…」 悩みと言っておきながら、笑ってばかり
話しはせずに、頭を掻いてばかり
そしてやっと蚊の鳴くような声で
「先生、僕はオクスニのことを…」 そこまで言えば、もうわかった。
オクスニは同じ作業班の模範機臺工※
「しかし君、
この老いぼれに愛の告白をして何になる
愛は若い娘に告白するものだろう
怖気づくことはない、
君の仕事ぶりのように…」 数日後、若い娘さんが 私を訪ね
「先生、どうすればいいのでしょう?
チェさんが私のことを…」
「ほほう、そりゃ全くけしからん男だ
他人様の彼女に惚れ込むとはな?
しかも君のような素敵なお嬢さんに…」
「?…?…?…」
娘さんはじっと、私を見つめる
私を見つめるうちに 私の顔の
含み笑いに気づくと、益々顔を赤らめて
「いったい、どうすればいいのでしょうか?…」
「さあ、私にどうしてそれがわかるかな
私ゃ知らんよ、私にもわからんよ!」 次の日からしげしげ様子を見てみると
青年の槌の音がより高らかに
娘さんの手際がより速やかに
仕事が終わり 家路に向い
ふたり並んで何やら仲良くひそひそと…
その中身まで 私に教えるはずもなく
何を囁くのか 私が知るよしもなく 読者の皆さん、私を愚か者だと責めなさるな
縁結びなんて出しゃばり過ぎだと
どうしてどうして、
出しゃばりだろうが構うものか
こんなに素晴らしい娘ならば
こんなに素晴らしい青年ならば
こんなに素晴らしい恋ならば… 数千年を永久に歴史の名だたる詩人たち
口々に恋を詠ったように
私とて詠わずにいられようか、私の詩で
この時代の若者たちの恋について…
詠いあげよう、祝福しよう!
勤しみの中に結ばれる我が若者たちの
清らかなる数々の恋たちを 1960年
「白仁俊詩選集」(93年・文学芸術綜合出版社) ペク・インジュン(1920〜99)
詩人。平安北道生まれ。朝鮮の映画主題歌も数多く手掛け、朝鮮文学芸術総同盟委員長など歴任。93年に汎民連北側本部議長に選出。民謡曲「景色も良けれど暮しも良い」、抒情詩「祖国への思い」、詩集に「素朴な人々の声」などがある。
(選訳・金栞花) ※機械の操縦を担当する労働者 [朝鮮新報
2009.10.19] |