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〈本の紹介〉 「夫・金大中とともに」

平和めざし伴走した記録

 6.15首脳会談の後、金正日総書記は、金大中大統領について、「北南の合意を一つ一つ実践していこうとする意志と誠意を持つ方」と信頼を寄せ、李姫鎬夫人についても「夫の釈放のためにあのように忍耐強くたたかったことに深い印象を持ちました」と称えた。

 本書には、6.15首脳会談に、ファーストレディーとして同行した際のさまざまな体験談とエピソードが細かく紹介されている。その意味で、何にもまさる現代史の第一級の証言となっている。初対面の総書記の印象について「彼は大統領はもちろん、長官や首席ら随行員にもあまねく配慮と礼儀を欠かさず、その場を意のままに導いた。よどみなく自然な感じだった。何より格式にとらわれない余裕が際立っていた」と。

 著者は苦難の植民地時代の朝鮮に、裕福な家庭に生まれ、大学進学、米国留学を経て、社会運動にまい進していた頃若き政治家をめざす金大中と運命的に出会い、結婚。しかし、その日から、人生は長く険しい道のりとなった。

 独裁と4.19革命、軍事クーデターと民衆抗争にゆれる世情不安の中で、民主化の実現をめざす夫は、度重なる逮捕、収監、軟禁、日本での拉致、謀略による死刑宣告、米国亡命と何度も死の淵に追い込まれるがついに大統領に就任。

 40歳のとき結婚した著者は、夫と苦難を分かち合いながら、女性の人権向上、弱者救済に尽力した。その人生は、まさに夫が本書のサブタイトルに名づけたように「苦難と栄光の回り舞台」であった。(李姫鎬著、米津篤八訳、朝日新聞社、2800円+税、TEL 03・5511・8832)(粉)

[朝鮮新報 2009.11.24]