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酒−金素月−

酒は水なり
水が酒に変わろうか
酒と水は従兄なり、されど
水飲めば 目を覚まし
酒飲めば 身も精神も燃やし尽くす

酒は団扇なり 酒は鞴なり
鞴は風車なり 風車は
風とお化けの交わり子なり

酒飲めば酔わせる
情け深き酒

良い出来事には鞴となり
嫌な出来事にも
硬結びにされし心を解す
潔い酒
わが血管を流るる時
酒は 我なり

事うまく運べば 風を扇ぎ
うまく行かずとも 風を扇ぐ
君よ、ならば共に
一杯飲もうじゃないか、事がただ
うまく行くようにだけ飲めば構わぬ、
心配ご無用

酒は水なり 銭は水なり
酒は銭なり 酒も水もまた 銭なり
水も使えば減りなくなるもの
酒を飲むは 
銭を飲む事、
水を飲む事なり

(「1920年代詩選2」金素月編 文芸出版社1992年)

キム・ソウォル(1902年〜34年)

 民族の悲しみと郷土的情緒にあふれた作品を数多く残した抒情詩人。平安北道亀城郡に生まれる。本名は金廷G。 南山学校、五山学校を経て培材高等普通学校を卒業後に日本に渡るが、関東大震災に遭い帰郷。「靈臺」の同人となり詩作を続けるが、亡国の鬱憤、貧困の中悲嘆に暮れ、33歳の若さで命を絶つ。他界後に「つつじの花」「素月詩集」などの題名で多くの詩集が刊行された。

(選訳・金栞花)

[朝鮮新報 2009.11.30]