top_rogo.gif (16396 bytes)

歌辞 農家月令歌

「十月令」より抜粋(陽暦11月7〜12月6日頃まで)

十月は初冬
立冬小雪の節気なり
葉は枯れ落ちて 
冬鳥の鳴声空高く
さあ、子どもたちよ 
農作業はもう終わった
残してある仕事を見据え 
家事を早めに片づけなさい
大根 白菜 採ってきて
キムチの漬け込み始めよう
前の小川できれいに洗い
ほどよい加減に塩漬けし
唐辛子 ニンニク 生姜 ネギ
塩辛キムチに 切干野菜の醤油漬け
大甕の隣に小さな甕、
更に小さな壺もあり
日向に納屋をこしらえて
藁に包んで深く埋め
種とり用の大根に 
完熟栗や団栗たち
一升たりとも凍らせまい
オンドル煙筒煤を払い
囲いの壁に土を塗り
窓の紙も貼りなおし
ネズミの穴も塞がねば
キビの茎で垣根を作り
家畜小屋に蓆を敷き
豆がらを束ね薪に使おう
わが家の婦人たちよ、
冬服はもうあつらえたか
酒を仕込み 餅こしらえねば
降神祭司の日が近い
蜜をかけて餅を捏ね
粉を挽いてうどんを打て
牛も豚もつぶしたならば
食べるものは盛りだくさん

結婚式には互いに助け
葬儀と病は互いに世話し
水難火災救援し
貧しい人に貸してやり
我より豊かな人は誰かと
欲を出して妬まずに
孤独で寂しい人にこそ
心をかけておあげなさい
それぞれ定められた天福を
無理には替えられぬ故に
皆、よく考え
私の言葉を忘れるなかれ
その通りに行うならば
よけいな考えも起こらぬだろう
酒色道楽に溺れる者
はじめからそうではなかろうに
たまたま踏み外した過ちから
一度落ち 二度落ちて
心が堕落し 抜け出せなくなるが故に
皆、用心して
過ちには 足を 踏み入れぬように

 この作品の作者と創作年代についてはいくつかの見解があるが、朝鮮後期の文人・丁若繧フ二男丁學游(1786〜1855)、もしくはその兄學淵が書いたという説がある。作品は朝鮮農家の1年12カ月の仕事と、季節ごとに知るべき歳時風俗、礼儀や教訓などを歌ったもの。「月令」とはその月にすべきことを記した行事表という意味。(選訳・金栞花)

[朝鮮新報 2009.12.7]