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〈2010年W杯アジア地区最終予選〉 朝鮮 1−0で勝利、本大会に弾み

 【平壌発=韓昌健記者】FIFA2010年W杯南アフリカ大会アジア地区最終予選の第4戦が11日、各地で行われた。グループBに属する朝鮮はサウジアラビアをホームに迎え、1−0で勝利した。在日同胞選手の安英学、鄭大世選手が出場した。この日の勝利で朝鮮は2勝1分1敗の成績とし、勝ち点を7に伸ばした。

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試合終了後、喜びを分かち合う朝鮮選手たち

 W杯に初参加し、旋風を巻き起こした1966年からすでに40年以上が経過した。

 現在アジア地区最終予選は、進出した10カ国を2組に分け、ホーム&アウェイ方式で行われている。第3戦を終えた時点で朝鮮は1勝1分1敗の勝ち点4。本大会出場に向けて弾みをつけるためには、ホームでの試合が続く第4、5戦を何としてでも勝つ必要があった。

 対するサウジアラビアも同じく勝ち点4。昨年11月に行われた、ホームでの南朝鮮戦を0−2で落としている。サウジアラビアにしてみれば、2月11日(対朝鮮)、3月28日(対イラン)と続くアウェイの初戦だ。ここを落とせば後がない。

 会場の金日成競技場は異様な熱気に包まれていた。試合開始数時間前から続々と観客が押し寄せる。競技場周辺にみるみる人波が広がる。混乱を避けるため、競技場の門は試合開始3時間前に閉じられた。

 バスから降りてくる両チームの表情は対照的だった。

サウジアラビアゴールに迫る鄭大世選手

 朝鮮は適度の緊張感を漂わせながら、内に秘めた闘志を燃やしつつもリラックスした表情。仕上がりの良さを感じさせた。8日に入国したサウジアラビアは全員が手袋とニット帽を被り、全体的にテンションが低い。少し眠たそうにする選手も見られた。

 朝から立ちこめた霧も午後には消えた。午後2時15分、アップのために両チームの選手が入場すると、会場からは割れんばかりの拍手が起きた。ボール回し主体のアップを行う朝鮮とは対照的に、サウジアラビアはストレッチを何度も入念に繰り返していた。

 快晴のもと、気温9度、ほぼ無風のベストコンディションのなか、午後3時にキックオフの笛が鳴った。

 試合は序盤、互いの出方を探りあいながら静かに始まった。朝鮮チームの特徴は安定した守備からのすばやいカウンター攻撃だ。5−3−2の守備的布陣で相手ボールを奪うと、3−5−2、3−4−3へと攻撃的布陣に素早く移行する。

 対するサウジアラビアはライン型の4−4−2。高い個人技が持ち味だ。「両チームが自分たちのスタイル通りに試合に臨んだ」(キム・ジョンフン監督)展開になった。

熱烈な声援を90分間送り続けた平壌市民

 「チーム全体的に体がよく動いていた」(安英学選手)というとおり、朝鮮は出足が鋭く、ルーズボールへの対応に優った。サウジアラビアは体のキレが少し鈍い。トラップやパスの凡ミスが目立った。

 朝鮮の戦術は、先取点を取ったあとに安定した守備力を発揮するというのが必勝パターンになっている。相手の動きが悪いとみるや、徐々に攻勢に出だした。

 前半10分過ぎから両サイドバックが積極的に縦への突破を試み、サウジアラビアを自陣へと押し込んでいく。再三にわたるチ・ユンナム選手(左サイドバック)の突破に前半28分、たまらずサウジアラビアのカタニ選手が後ろから足を引っ掛け、主審からイエローカードを受けた。

 左サイドで得たこのフリーキックからのクロスボールにゴールほぼ正面に位置した鄭大世選手がヘッドで競り勝ち、落としたボールをペナルティーエリア前でホン・ヨンジョ選手が受けた。ワントラップ後、そのままヒールキックで相手ディフェンスの裏へと流す。意表をつかれたサウジアラビアディフェンスの対応が遅れ、右サイドを駆け上がってきたムン・イングク選手がトップスピードのまま右足を振りぬき、飛び出したゴールキーパーの左脇下を抜いた。

 待望の先制点に競技場を埋めた観衆は総立ちになった。前半は終始朝鮮が押し気味に試合を進めた。ロスタイムには鄭大世選手がオーバーヘッドを試み、観衆をわかせた。

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平壌市民に激励される安英学選手

 後半、サウジアラビアが攻勢に出た。朝鮮は予定通り最終ラインを中心に持ち前の守備力を発揮する。サウジアラビアは個々のテクニックに優れてはいるが、朝鮮の組織的な守備の前にはそれがかえって仇となる。

 交代枠3人を使い切って攻めに出たサウジアラビアだったが、個人での突破に頼りがちで、なかなか朝鮮の最終ラインを崩せない。朝鮮ディフェンス陣も中盤では比較的自由に相手にボールを持たせるも最後の局面では仕事をさせない。

 サウジアラビアの攻撃陣が徐々に苛立ち始めた。ますます一人でドリブルを仕掛ける場面が増える。クリアボールが前線に待機している鄭大世選手に集まりだした。縦への一気のカウンター攻撃から再三、好機を迎えた。しかし、最後のフィニッシュの精度が低く、鄭大世選手のシュートはことごとく枠をはずれた。

 後半20分、それまでプランどおりに試合を進めていた朝鮮にアクシデントが起きる。スライディングでボールを奪取した際に、安英学選手が右肩を痛め、負傷交代した。

 いまや安選手はディフェンスとフォワードの繋ぎ役として、また相手が攻撃に移る際の最初の芽を摘む中盤の要として、代えのきかない存在になっている。その安選手の交代に、場内は一瞬静まり返った。

 朝鮮は安選手の代わりにフォワードを投入し、鄭大世選手とツートップを組んでいたホン・ヨンジョ選手を中盤に下げた。「これはチーム内の約束事だ。ヨンジョはもともとミッドフィルダー出身の選手。安選手が負傷交代したあとの対応の早さが一つのポイントだった」と在日本朝鮮人蹴球協会の李康弘理事長は話す。

 朝鮮は流れを切らすことなく、その後も安定した守備を続け、サウジアラビアはミドルシュートを散発するに止まった。終了後の記者会見でサウジアラビアのコーチは、「今日は、なかなかゴールを割る機会が訪れなかった。朝鮮選手はみなスピードがあり、フィジカル的にも優っていた」と脱帽した。

 安英学選手は、「平壌での試合ということもあり、競技場を埋め尽くしてくれた観衆のためにも絶対に勝ちたかった。大声援を受け、チーム全体の動きがよかった。前線からのプレスも試合序盤から功を奏した」と試合を振り返った。

 試合中、何度も「チョン・テ・セ」の大合唱を受けた鄭大世選手は「まあまあかな」と自身の出来について感想をもらしながら、「まだ最終予選が終わったわけではない」と気を引き締めていた。

 「今日の試合に勝つか負けるかでは天と地の差があった。本大会出場を占う分岐点といっていい。アジアの強豪国に勝利したことにより、チームの団結はより強化され、チーム力の向上も上昇軌道に乗った」と李康弘理事長は語る。

 次戦第5戦は3月28日に行われる。朝鮮はホームにアラブ首長国連邦(UAE)を迎える。

[朝鮮新報 2009.2.18]