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〈在日バスケ協会のページ〉 コーチングフィロソフィー

 先日、久しぶりに高校ラグビーの試合を観戦した。雨天の試合であったが、迫力満点だった。

 試合後、高校ラガーマンたちが次の日の初級部運動会のために、8基のテントをグラウンドに張り出していた。疲れていないはずはない。しかし、彼らは一言の文句も言わず、瞬く間に作業を終了させてしまった。

 上記の出来事について、皆さんはたぶん、こう思うだろう。礼儀正しい高校生だと。

 もちろん、彼らは高い技術も所有し、ある意味「人間」としての姿勢が出来上がりつつあるのだと思う。きっと、日ごろの指導方針が言葉ではなく、行動としてしっかりと身についているのだろう。

 さて、今回は試合中に垣間見ることのできる、コーチのフィロソフィーについて考えてみたい。

◇      ◇

 フィロソフィー=哲学。すなわち、コーチングに対する各々の持論、指導理念、指導哲学のことを言う。

 「強いチームを作りたい、礼儀正しい子どもたちを育成したい。できれば、両方兼ね備えた子どもたちを」というのは、全指導者の共通の理想であることは確かだ。

 また、「日常生活をきちんとしない人間はうまくならない!」というのは、多くの監督が発している言葉であるが、なぜなのか?

 私はこう考えた。

 いくら高い技術を持っていたとしても、それを発揮する勇気、力、判断力などがない選手は、トッププレーヤーとは言わない。サッカーブラジル代表のロナウジーニョのスーパープレーを見ていると、自身の指導において、なにが必要なのかを考えさせられる。

 私自身の昨今のコーチングフィロソフィーは、創造的教育にある。元々、教育学的な用語ではあるが、スポーツ面でも当てはまるところが多々ある。

 創造性教育とは、基礎実力+5つの能力(思考、表現、判断、想像、問題解決)であると考えている。

 5W1Hという言葉があるが、だれが(Who)、何を(What)、いつ(When)、どこで(Where)、どうして(Why)、どのように(How)を常日頃の練習で、指導者と選手との信頼関係のもとで話し合い、理解させ、積極的にトライアル&エラーさせることによって、上記能力の基礎が構築される。

 しかし、「基礎実力」という観点で考えると、ピリオダイゼーション(トレーニングを時期、期間に応じて変えていくこと)に基づき、常に選手の状況に応じて練習メニューを修正し、改良する必要もある。

 一朝一夕にできることではない。しかし、6年間、3年間というスパンで取り組んでみたり、はたまた、競技として初中高という一貫したスパンのなかで取り組んでみても良いと思う。

 この連携がうまくいけば、必然的にスーパープレーヤーを育成できるはずであると考えている。また、子どもの年齢と日常生活模様、チーム状況などを分析してみると、修正点とともに、どのような強化策が必要なのかが明確になるはずである。

◇      ◇

 以下、ジャパンエナジー・高木彰総監督のコメントを引用する。

 「指導者の皆さんのフィロソフィーを構築してください。それは、独自の理念で良いのです。どんな大人になってほしいか。そんなことから考えていけば簡単に見つかるはずです。…チームには、ルールやマナーがあります。決められたことをきちんと守る。チームのために献身的になれる。バスケットボール(スポーツ)を通してそんな簡単なことで良いから身につけてほしい。子どもたちにとってコーチというのは、良くも悪くも将来に大きな影響を与えるというように考えてください。…日ごろコートの上で皆さんが言葉をかけている一言一言を、子どもたちはきっといつまでも憶えていて、大人になってからふと何かに気づくこともあるかもしれませんね。一生忘れない一言が。だから、勝つことよりもっと大切なことがあるような気がします」

 学生時代のスポーツを職業として継続していく人間は、一握り、いや一つまみしかいないということ。しかし、スポーツを通じて学んだことを教訓に、人生をしっかりと送っていける子どもを育ててこそ、真の指導者ではないだろうか?

【康哲敏・在日朝鮮学生初級部籠球連盟(コリアミニバスケットボール連盟)委員長】

[朝鮮新報 2009.4.22]