top_rogo.gif (16396 bytes)

春・夏・秋・冬

 「強制連行の一次証言を集められるのは最後かもしれない」。日本のある研究者の言葉。悲しいかな、現実的な発言だ。解放から60年以上が過ぎた今、当時を語れる人は少なくとも70歳を超えており、その数も減っている。「もう時間がない」。そんな焦りに迫られているという

▼北海道宗谷郡猿払村の共同墓地跡地で人骨が発掘された。日本の植民地支配時代、この地で行われた陸軍飛行場建設に強制連行され亡くなった朝鮮半島出身者のものである可能性が高い。3年前にも遺骨が見つかっており、さらなる調査が求められている

▼発掘調査はすべて民間の力で進められてきた。元労働者や地元住民への聞き取りをもとに実施。これまで10数人の遺骨が発掘された。だが、こうした現実を突き付けられても、日本政府や関連企業は沈黙を続けている。まるで「時間切れ」を待っているかのようだ

▼一方、朝鮮人労働者の歴史を伝える京都市右京区の「丹波マンガン記念館」が閉館した。体験者と家族が20年間、懸命に守ってきたが、自治体の協力を得られず資金難などで閉館を余儀なくされた。「知るのが遅かった」とある同胞は嘆いた

▼朝・日の市民団体が共同で開催してきた「在日朝鮮人歴史・人権週間」。今年度(7月3〜26日)のテーマは強制連行問題。あらためて遺骨調査、名簿整理、証言収集などを広く実施し、歴史の真実を記すとともに、人権問題として訴える契機にしようという狙いだ。広がる歴史わい曲の流れに終止符を打ち、在日朝鮮人の尊厳を守るためにも、多少の「焦り」が必要だ。(天)

[朝鮮新報 2009.6.8]