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「男をよく選べ」

 大好きだったウェハルモニ(母方の祖母)が亡くなってから15年。最近ではすっかり聞くことのできなくなった済州島訛りが懐かしく思い出される。

 幼い頃は、1世たちの済州島訛りや慶尚道訛りをよく耳にしたものだ。いまは1世たちも多くが亡くなり、あの懐かしい独特の姿を見ることはほとんどない。

 昔のハルモニなどは、すぐに「あ、チョソンサラムだ」とわかったものだった。うちのウェハルモニも真黒い髪を椿油できちんとなでつけ、低い位置で髪を結っていた。貧しかったうえに女の子だったウェハルモニは、学校にも行かせてもらえず、畑仕事やら水汲みやら働きどおしだったという。

 口癖は「いまはいい世の中だねえ」と、「男をよく選べ」だった。学歴はなかったけれど、厳しい世の中をユーモアと知恵で生き抜いてきたウェハルモニ。その言葉には何とも言えない味わいと強烈なインパクトがあった。

 「男前は浮気するから避けろ」。このセリフには、姉妹みんなで爆笑したものだった。22歳で離れた故郷に終生帰ることはなかった。「統一したら行けるよ」と言った私に、「統一は簡単じゃない。私が死んじゃったずっと後には統一するかな…」と寂しそうに呟いた。

 今は冷え込んでいる北南関係だが、6.15以後にはたくさんの1世たちが故郷の地を踏むことができた。その姿を見るとハルモニが思い出されて涙が溢れた。

 15年前、脳卒中で亡くなったハルモニの墓標には「故郷」の2文字を刻んだ。

 ハルモニ、故郷に帰れたかな。(李春伊、会社員)

[朝鮮新報 2009.5.29]