朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨問題 曹洞宗が遺骨調査、267人分確認 |
「日本人の良心が問われている」 日本の植民地支配時代に強制連行などで日本に渡り犠牲となった朝鮮人267人分の遺骨が日本各地の寺院で新たに確認された。うち1人については南朝鮮に住む遺族が特定された。2005年から調査を続けてきた曹洞宗が22日、都内で開いた記者会見で発表した。関係者は遺骨返還に取り組む姿勢を表明する一方、日本政府に対し遺族探しや返還方法などで早急に対応するよう求めた。
人権問題として調査
曹洞宗は、全国に約1万5千の寺院と800万の檀信徒を擁し(公式サイト)、永平寺(福井県)と總持寺(横浜市)を本山としている。1992年に発表した「懺謝文」では、「権力に組して加害者の側に立って開教にのぞんだ曹洞宗の過ちを深く謝罪する」と過去の戦争協力を反省し、二度と過ちを犯さないことを誓った。 2005年11月からは、「懺謝文」の精神にのっとり、遺骨問題を人権問題、戦争責任の一環としてとらえ、遺骨調査・発掘に積極的に取り組んできた。強制連行があった炭鉱や建設現場周辺の寺院2648カ所に情報提供を呼びかけ、犠牲者の遺骨や身元情報があった130カ所に対し聞き取り調査を実施。1039件の犠牲者情報の提供を受け、65カ所で計267人分の遺骨を確認した。住職らによって大切に保管されていた。 そのうち個別性が保たれた状態で安置されている遺骨は110人分。さらにそのうちの30人は、名前や朝鮮半島南部の本籍地まで判明しており、岐阜県で亡くなった朝鮮人男性1人については、南朝鮮に住む遺族が特定された。 犠牲者情報の中には合葬されている遺骨、すでに返還された遺骨も含まれていた。また、20、30代が最も多く、中には女性や子どももいた。 曹洞宗の関係者は「荷物を届けるような扱いではなく、亡くなられた状況や寺院に預けられた経緯など、少しでも真実を伝え、遺族の尊厳と現場の寺院の意向を保てるかたちで故郷や遺族のもとへ奉還したい」と語った。一方、身元や遺族が判明していない遺骨が多く、返還方法も定まっていない状況を危惧し、全国の自治体と寺院に遺骨の調査依頼を行った日本政府の責任ある対応を求めた。 差別なく返還を 曹洞宗人権擁護推進本部によると、遺骨が寺院に預けられて長い年月が過ぎたこともあり、身元の判明が極めて困難で、遺族を探す手がかりがないケースがほとんどだという。また、遺族がみつかったとしても、政府や関連企業の謝罪と補償、犠牲になった原因や経緯に関する真相解明など、多くの問題が生じている。 さらに、祐天寺(東京・目黒)に安置されている元軍人軍属の朝鮮人の遺骨が日本政府の責任のもとで返還されていることと比較した対応の違いを指摘する声もある。 同本部の伊藤謙允事務局長は「遺骨の返還方針について日本政府から伝えられていない。現場の寺院は不安を抱いている。(軍人軍属であれ「民間徴用」であれ)日本の国策による犠牲者であることに違いはない。差別なく、政府が全面的に責任をもって返還すべきだ」と指摘した。 同本部の遺骨調査員の工藤英勝氏は、「遺骨問題は人道問題。日本人の良心が問われている。何年かかってでも解決したい」と曹洞宗の熱意を語った。 曹洞宗は、旧日本軍浅茅野飛行場建設のために強制連行された朝鮮人犠牲者の遺骨発掘にも携わってきた。5月1日から北海道宗谷郡猿払村浅茅野で行われる第3次発掘事業に、地元の市民団体とともに主催者として参画する予定。06、09年の発掘事業では計10数人分の遺骨がみつかっている。(李泰鎬記者) [朝鮮新報 2010.4.28] |