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人権協会シンポ 同胞弁護士3氏の発言要旨 差別の根源正さねば

 「韓国併合」から100年が経ち、祖国解放から65年が経過したが、在日朝鮮人を取り巻く人権状況に根本的な変化はない−。2日に行われた、在日本朝鮮人人権協会が主催したシンポジウム「併合から100年『今、在日朝鮮人の人権は?』−その現状と課題を考える」では、未解決の在日朝鮮人の人権問題に対して、朝鮮学校卒業生の3人の弁護士(うち2人は朝鮮大学校卒)が報告を行った。3氏は、「民族教育」「ヘイトクライム」「社会保障」の問題からそれぞれ発言。その要旨を紹介する。

金舜植弁護士 民族教育権は人権

 「高校無償化」から朝鮮学校のみが除外された問題は、在日朝鮮人の教育の歴史から考える必要がある、根が深い問題だ。

 祖国解放後、米ソの冷戦、朝鮮半島の対立構造の中で、日本政府は朝鮮学校を治安問題、外国人管理の問題として捉えた。そのため、在日朝鮮人の子どもたちの学ぶ権利は保障されてこなかったばかりか、1948年、49年の2度の学校閉鎖令で、直接的な朝鮮学校弾圧が行われた。

 65年には文部事務次官通達が出され、朝鮮学校に法的根拠を与えないとしたが、在日朝鮮人や日本市民たちの運動により、68年に朝鮮大学校が認可され、75年までに当時あったすべての朝鮮学校が各種学校認可を受け、法的な基盤を整えた。

 各種学校という法的制限の中で1条校と同等の権利は認められない中、継続的な同胞らの運動の結果、80年代以降、各地方自治体から「補助金」を得るようになり、90年代には朝鮮学校の各種スポーツ大会参加資格、JRの通学定期券運賃の割引率格差是正を、また2003年には大学入学資格の弾力化と省令改正を勝ち取るまでになった。

 しかしいまだに国庫補助は一切なく、特定公益増進法人をはじめ解決すべき問題は多い。そんな中で新たに生まれたのが「無償化」問題だ。

 在日朝鮮人は植民地時代に、日本帝国主義によって言葉と文字をはじめ、民族性を根こそぎ奪われ、解放後はあらゆる権利から阻害され、朝鮮学校の存在も認められてこなかった。「無償化」問題は、民族教育を受ける権利が、人権だということを訴えていく必要性をあらためて提起したと言える。人権は国籍や政治上の問題で左右されてはいけない、普遍的な問題だ。

 在日朝鮮人はこれまで、たたかいによって一つひとつ権利を勝ち取ってきたが、朝鮮学校で民族教育を受ける権利を、人権として法的に認めさせることが、いま求められている。

康仙華弁護士 人権差別禁止立法を

 昨年12月4日、京都朝鮮第1初級学校の校門前に「在日特権を許さない市民の会」などを名乗る男性十数人が群がり、拡声器を用いて大音量で学校に向かい、朝鮮や在日朝鮮人、朝鮮学校を罵倒する差別発言を約1時間に渡って浴びせ続けた。

 また1月と3月にも嫌がらせは続いた。

 「在特会」の差別的な言動は、朝鮮学校の存在そのものを否定するものであり、在日朝鮮人社会全体に深い傷を残したと言える。

 6月28日付で、弁護団は「在特会」と主要メンバーに対して民事訴訟を起こした。9月16日に、第1回口頭弁論期日と報告集会が行われたが、当日、法廷内には朝鮮学校関係者が多数集まった。

 口頭弁論では同校の現校長の意見陳述を弁護団の一員が代読し、弁護団の一員で、同校の卒業生でもある具良ト弁護士が意見陳述を行った。その一部を紹介したい。

 「朝鮮学校は民族的マイノリティーである在日コリアン児童にとって、心から安心できる場だ。朝鮮学校への攻撃により、児童、保護者、学校に与える影響は計り知れない。それでもなお朝鮮学校はなんとか存続してきた。今回の事態による深刻な影響を回復することは、司法が果たすべき当然の役割だ。本件による被害に対して、法的保護を与えなければ、取り返しのつかない事態を招いてしまう」

 今回の裁判は、権力に対するたたかいではなく、民間人同士の争いという構図になっているが、本質は差別される側が差別する側に被害の回復を求めるということだ。そのことを裁判では訴えていきたい。また、民族教育権の重要性やその存在意義が認めてもらえる裁判にしたい。

 日本には人種差別を禁止する法律がない。

 今回のような事件が新たに形を変えて起きた場合、法的に対処できない懸念さえある。人種差別禁止立法を念頭において、運動を展開していかなければならない。

金敏寛弁護士 歴史鑑みた救済措置を

 在日同胞の中には、無年金状態に置かれている高齢者、障がい者たちがいる。福岡県では、2007年に在日朝鮮人高齢者無年金国家賠償訴訟を提起した。今年9月8日に下された一審判決では敗訴し、即日控訴した。

 1959年に制定された国民年金法は、被保険者資格を「日本国民」と規定した。

 82年に国籍条項が撤廃され、在日朝鮮人も国民年金に加入できるようになったものの、それまでに被った制度的損害は補てんされなかった。すでに60歳までに受給期間を満たす25年の保険料を納付することが不可能な年齢に達していた在日外国人(当時20歳以上の同胞障がい者など)に対しては経過措置が取られなかった。

 86年に年金制度が改正され、それまでの任意加入から、すべての国民(日本で暮らすすべての人)が対象となり、25年の納付期間を満たすことができない人が生じると、日本政府は救済措置を取った。

 しかし、日本政府は「加入できるのに加入しなかった」人たちを救済しておきながらも、国籍条項が原因で年金制度に「加入したくても加入できなかった」在日外国人(この時点で60歳以上の同胞高齢者など)についてはまたも排除した。

 われわれ在日朝鮮人の権利擁護において、司法の役割は非常に重要である。しかし、福岡地裁は、年金制度は専門的な問題であるため、制度を作る側(国)に広い裁量があるとし、自らの判断を放棄した。

 これまで国連自由権規約委員会(2008年)、また日弁連(96年、2010年)は日本政府に対して、無年金問題に懸念を示し、救済措置を取るよう勧告している。

 社会保障制度は共同体社会の構成員が互いに連帯して支え合う制度である。そこに排除や差別があってはならない。特に植民地支配の最大の被害者である在日1世や高齢者たちの問題である。裁判の中では、在日朝鮮人の歴史的問題を訴えていきたい。

[朝鮮新報 2010.10.12]