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絶望と希望

 日本の市民団体が主催した証言集会「韓国・朝鮮の遺族とともに」では、南朝鮮から招かれた8人の遺族が証言した。

 解放後、65年が過ぎ、遺族も高齢化した。晩年を穏やかに過ごしたいという素朴な願いも叶わず、日本の植民地支配と強制連行によって肉親を奪われた怒りと苦しみに今もさいなまれている。

 南英珠さん(71)は3歳の時に16歳年上の兄が強制徴用された。「8代宗家の宗孫」で一人息子だった。南洋群島にいると手紙が届いただけで、その後は行方がわからなくなった。

 父は若い嫁(兄の妻)の将来を気遣い、実家に帰した。母は悲しみから酒におぼれ、早くして亡くなった。徴用された者が帰ってきたと聞けば遠方まで確認に出向くなど、息子の行方を追っていた父も、程なく病に倒れた。

 2003年、朝鮮人強制連行真相調査団が収集した被害者名簿が南朝鮮で公開されると、そこで初めて兄の「戦死」を確認。同時に、靖国神社に合祀された事実も知った。再び名誉を傷つけられた。

 06年、日本の厚生労働省に兄の記録を照会したところ、所属部隊、徴用・戦死の日付、供託金額などが判明。「日本政府はわかっていながら伝えなかった」。

 絶望の深みへと突き落とす「知りたくなかった事実」。それでも遺族らは、市民団体の真相究明、遺骨収集の活動が「遺族に希望をもたらした」と感謝した。

 同じような遺族は北にもいる。「首相は朝鮮を無視しても、私たちは決して忘れない」。遺族や市民団体は、日本政府に人道的な対応を望んでいる。(泰)

[朝鮮新報 2010.10.18]