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〈心に残る言葉 2010年を振り返る〉 100年目の差別 「自分の目で見て確かめて」

 大阪朝鮮高級学校ラグビー部の「全国大会」3位といううれしい話題で幕を開けた2010年は、「高校無償化」適用を求める運動、各地での同胞青年祝典や学校創立記念事業、国際スポーツ競技などで、朝鮮学校卒業生らが活躍し民族教育の素晴らしさを広く知らしめた1年だった。本紙記者たちが1年間の取材を通じて心に残った同胞の言葉を紹介しながら、2010年を振り返る。

朝鮮学校への「高校無償化」適用を求め街頭で署名を集める神奈川朝鮮中高級学校の生徒たち

 「継続する植民地主義」

 「韓国併合」100年を迎えた今年、さまざまな機会にこの言葉を聞いた。

 日本が朝鮮人の国、土地、財産を奪い、名前や言葉、文化を抹殺しようとした植民地主義は、日本敗戦後も継続してきた。植民地時代の朝鮮人抹殺、その後の同化・差別政策など、「コリアンジェノサイドは終わっていない」(前田朗・東京造形大学教授)。

 朝鮮人に対する差別は根が深い。それが表面化したのが「高校無償化」問題だった。

 「朝鮮学校では反日教育が行われている」「暴力団と付き合いのある学校」などとデマやひぼう中傷が公然と飛び交うなか、朝高生たちは一貫してメッセージを発し続けてきた。

 「いつでもウリハッキョに来て」「自分の目で見て確かめて」

 当事者の素直な気持ちだ。

 「朝鮮学校に来たことがなく、知りもしない人たち」が朝鮮学校について論じる滑稽さは失笑の的となった。

 「知らないのなら来ればいい」「首相も大臣もウェルカムだよ」

 日本の政治家たちがさまざまな口実で結論を先送りし、姑息な方法で差別を続けるのとは、あまりに対称的な朝高生の堂々とした対応だった。

市民団体主催の集会で発言する朝高生たち(9月、東京)

 「私たちも同じ高校生」「一条校と変わらないカリキュラムで学んでいる」「朝鮮人として生きたいから朝鮮学校に通う」「両親や同胞たちの思いが詰まったウリハッキョが大好き」

 朝高生たちは集会やデモに参加し日本市民の前で、テレビカメラの前で、時には思いを詩に込めて、自分たちの主張を正々堂々と表現した。そして、「自らの力で権利を勝ち取ろう」「後輩たちのために立ち上がろう」と、猛暑や雨風のなかでも、勇気を振り絞って声を張り上げ、チラシを配り、朝鮮学校や民族教育について知らせた。この間、朝高生が集め日本政府に提出した署名の数は約12万人分にのぼった。

 こうした朝高生の姿は、それ自体が民族教育の素晴らしさを示すものだった。

 「こんな立派な生徒たちを育てる民族教育を絶対守らなければならない」

 民族教育の歴史や権利問題に詳しい学者、法律家、活動家たちはこう指摘した。

 「われわれの主張が正当だからこそ、多くの日本市民が支持してくれている。朝鮮学校が注目されている現状は、朝鮮学校の地位を大きく変えるきっかけにもなる」(金舜植弁護士)

 同胞と日本市民の連帯した運動は広がった。朝鮮学校への「無償化」適用を求める日本政府、文部科学省、与党などへの要請活動は140余回(日本市民らの要請が80回)行われた。同胞や日本市民らが各地で主催した約50回の集会に、延べ1万5千人以上が参加した。東京、大阪、京都などでは大規模なデモ行進も行われた。各地の朝鮮学校で行われた公開授業には、例年を大幅に上回る数の人々が参加した。朝・日連帯の署名運動では、目標を大幅に超える58万8千85人分が集まった。

 こうした運動の経験は、民族教育の権利と在日朝鮮人の地位の保障に向けたより広大な運動の源になる。

 「韓国併合」100年をテーマに各地で開催された「在日朝鮮人歴史・人権月間」の福岡集会(9月18日)で、実行委員会の清水澄子共同代表は「国境を越えた民衆の連帯した力で植民地主義から脱却し、日朝と東アジアの新しい時代を切り開いていかなければならない」と訴えた。(泰)

[朝鮮新報 2010.12.20]