09年度教育研究会 東西で950人参加、189編の論文発表 |
多彩な教育実践、研究成果を発表 2009年度総連各級朝鮮学校教員の教育研究集会が1月30日、東日本(東京朝鮮中高級学校)と西日本(大阪朝鮮高級学校)の2カ所で開催され、朝鮮学校教員や教育関係者ら950人(東日本438人、西日本512人)が参加、189編の論文発表と203の討論が行われた。集会は、教員たちの資質を高め、民族教育全体のレベルアップを図ることを目的に行われた。第20回中央教育研究大会(昨年1月)で提示された課題に基づき、東西それぞれ19の分科別に研究成果と教育実践の経験が発表された。
東日本 自主意識と表現力を高める
東日本集会では、午前中に全員参加の下で初級部低学年・高学年、中級部、高級部別に教養分科の討論が行われた。 学生教養分科は、初中級部においては、年齢心理的特長と認識発展の度合いに合わせて民族自主意識と民族的素養を育み、民族愛・祖国愛を育てることをテーマとし、高級部では、自主的な世界観と人生観をもち、祖国と在日朝鮮人運動の歴史を学び、愛族愛国運動を担う使命感と資質を身につけた人材に育成することをテーマに行われた。 初級部低学年教養分科では南武朝鮮初級学校はじめ4校での取り組みが紹介された。 南武初級では、「セクトンモイム」と題した低学年の集いを週1回のペースで行ってきた。同校低学年の目標は、「笑いいっぱい、喜びいっぱい、希望いっぱい」。民族的情緒と友だちを大切にする心、朝鮮学校へ通う喜びを感じることをテーマに、低学年混合グループを作り各種運動を展開、季節ごとの行事やウリマル学習、通学時のマナー講座などを年長の3年生が中心となり行ってきた。 栃木朝鮮初中級学校の低学年では、道徳、学習、朝鮮語、運動の4つのテーマに沿って、学期・週ごとにあいさつ(道徳)、読書(学習)、朗読(朝鮮語)、なわ跳び(運動)などの課題に取り組んできた。 また、美術教育分科では、感じる力、見る力、作る力を育て、自主性と創造性を生かした表現活動を通して、子どもたちの心を健全に育てるための方法について話し合われた。 北海道朝鮮初中高級学校の朴朱福先生は、「初1図工の授業を通して『感じる力』を育て、想像力と展開力を伸ばす実践について」発表した。 「秋」をテーマに行われた授業では、空箱の中に落ち葉や木の実、その他を使って自分だけの「秋」を表現。子どもたちは完成した作品を持って、それぞれが作品について発表した。ある子は、「ビーズは秋の植物に元気をくれる太陽。もうすぐ冬になるので雪の結晶をふたにつけて、小さなどんぐりに羽をつけ天使のようにした」と話し、また別の子は、「紅葉が風に吹かれて積み上げられた様子を表現した」と発表した。 授業を通して創作活動に自信をつけた子どもたちは、自分の思いを言葉に置き換えて表すことも上手になり、著しい成長が見受けられたという。 中高級部日本語教育分科では、長野朝鮮初中級学校の朴勝枝先生が、「20年にわたり作文を指導してきた経験」について発表した。朴先生は、「中学時代に学力の土台をしっかり築くことが、その後の知識習得の幅を広げることにつながる」と話し、「作文は自分の思いを自分の言葉で表現する学習で、学力の集大成である」と強調した。同校では、中級部の生徒たちを対象に「小中学生作文コンクール」「少年の主張」「人権作文コンテスト」などに応募し、作文集「大樹」を発刊している。20年間の作文指導を通して、14人が「少年の主張」地区大会に出場、そのうち2人が「少年の主張長野県大会」で最優秀賞、7人が優秀賞、2人が優良賞に選ばれた。
西日本 4つの機能いっそう伸ばせる
西日本集会ではまず、生徒の教養問題について4人が討論した。 生徒の教養問題は昨年の第20回中央教育研究会で挙げられたテーマで、討論者たちは経験談を踏まえながら、民族の自主性を教えるうえで「個」ではなく「集団(ウリ)」を認識させることが重要だと述べた。 教養問題についての研究は、全体集会のあともさらに、初級部、中高級部分科に分かれ進められた。 西日本では、幼稚園、初級部1年、国語(初、中高)、算数(初)、日本語(初、中高)、社会(初、中)、理科(初、中)、数学(中高)、英語(中高)、音楽、美術、体育、教養(初、中高)、情報の教育、教養19分科が設けられた。 民族学校教育の「入口」である初級部1年生に対する教育は、他の学年の教育よりも重要であると指摘されている。また、学校ごとにあると言われる指導水準の差を埋めることが求められている。これを均一化し、発展させることが初級部1年教育分科の狙いだ。 ベテラン担当教員たちは、「1年から2年、2年から3年へと続く民族教育の延長線上で、初級部1年生への教育を考えた場合、その重要性はより浮き彫りになる。1年生の教育だけを特別視するのとは違う」と話した。まだ比較的若い教員たちは、「教育水準の差を埋めるのは自分たちにかかっていると思う。多くを吸収し生徒たちに還元したい」と述べた。 この分科では、「国語授業での『視覚と聴覚』を発動して4つの機能(聞く、話す、読む、書く)を高めた経験」「国語教科書の課別内容に沿って単語数を増やし生徒たちの言語機能力を育てる方法」「楽しみながら『作文を順序よく書ける力』を育てるための方法研究」「絵本読み聞かせを学習発展にいかすための5つの方法で展開した研究実践」の他、東西共通の2編を含む6編の論文が発表された。 国語授業について研究した2つの論文では、人は視覚と聴覚から80%の情報を得るということから、歌と発音カードを併せることで朝鮮語の子音、母音に対する理解を深め、生徒自ら動詞を口語体に置き換える方法を発見するなどの成果を挙げたことや、教材に則して無理なく単語数を伸ばすことが可能であり、これから朝鮮語で思考する土台を構築することができると指摘された。 また、注目を集めたのは「作文」に対する研究だった。 ここでは、「はじめに」「それから」「おしまいに」というキーワードを用い、「順序よく書くこと」を理解した生徒たちは、書く量が増えても苦手意識を持つことなく作文にチャレンジするようになったという成果が報告された。 参加した担当教員たちは、経験を一般化するためにもまず、体系化することが大事だと述べながら、経験を共有しさらに教育の質を高めていくことを確認し合った。(取材班) [朝鮮新報 2010.2.8] |